発見! ラブリーピース!
「実はね、私も両親が死んじゃったの。私が生まれて間もない、まだ名前もついていないころに、交通事故で。それでね、私の両親の友だちだったアロハちゃんのお家で養子にしてもらったんだ」
「そうだったんですか、オハナさんにもそんな過去が……」
「うん、でも私、幸せだよ。両親とお話ししてみたい気持ちはずっとあるけど、アロハちゃんとそのご両親のもとで暮らせて、大人になった今はこうして仲良く二人暮らしをして、いい人生だなあって、よく思うんだ。だから、というか、両親を亡くした面ではちょっとだけ気持ちがわかるというか、ごめんなさい、大切な人を失ったばかりで、鮮明に記憶がない私とは大違いだけど……」
「いえいえ、そんな」
両親の記憶がない。それは、私とは違う感覚でつらく、切ないのだと思う。お話ししてみたいっていう気持ちも、自身が両親を失った今では胸がざわりぐさりと痛いほどに共感できる。
「それでね、夢ちゃん」
アロハさんが割って入ってきた。
「私たち、この1週間でラブリーピースのアニメを途中まで見たんだけど、お姉ちゃんの笑ちゃんとか、お姉さんの親友の幸来ちゃんとか、たくさんの人がいるよね。もしかしたらお姉さんたちは、この世界で生きているかもしれない」
「はい、それは私も希望的観測としてはあります」
「それでね、私たちもなんだけど、警察官の川桁さんも、パトロール中とか、日ごろ街を歩いているときに通行人をよく見てもらったり、友だちにお姉さんのイラスト……あ、写真を見せたりして、もしそんな感じの人が見つかったら情報を提供してもらえるようになったから、夢ちゃんも、私たちといっしょに探そう」
ああ、もう、ほんとうに良かった。何人かの通行人がいた中で、アロハさんとオハナさんに声をかけて、ほんとうに良かった。
ニュースを見ていると、この世界は信じられないほど怖いことがたくさんあって、無闇に誰かに声をかけたら殺されちゃうこともあるって知って、そんな怖い世界の中で、こんなにも温かい人たちに出逢えた。川桁さんにもなんてお礼を言ったら良いだろう。
「え、夢ちゃん、夢ちゃん!?」
「はい、どうぞ」
アロハさんが慌てふためく中、オハナさんがティッシュペーパーを手渡してくれた。自然に涙がぽろぽろあふれていたんだ。
「ほんとうに、ほんとうにありがとうございます。私、なんてお礼を言えば良いのか……」
「ふふふふふ」
「なに言ってんの? 私たちはもう家族なんだから、みんなで幸せになっていけばそれでいいんだよ」
「はっ、はい……」
そんな、あまりにも残酷な現実のあとに、あまりにも幸せな日々が始まった。
もちろん、傷はそう簡単には癒えない。大切な人を失って、生まれ育った世界まで失ったショックが、そう簡単に解消されるはずがない。
そんな中、深夜、お部屋のベッドに座って私たちの世界でも流行していた動画サイトをスマホで閲覧していたときに飛び込んできたワードがあった。
『ラブリーピース! 新曲『きらめきたくても頑張れなくて』公開!』
心臓が止まるかと思った。まさか、まさか、ほんとうにラブリーピース? それともモノマネ? 名前が被ったユニット?
唾を飲み、手を震わせながら動画のアイコンをタップ。
「お姉ちゃん、幸来さん! ……あ、ああ!」
間違いない、お姉ちゃんと幸来さんだ!
奇跡だ! 奇跡だ! お姉ちゃんと幸来さんが生きてるなんて!
私の声に驚いて、アロハさんとオハナさんが来た。
「どうしたの!?」
アロハさんが言った。
「お姉ちゃんと、幸来さんが、見つかりました」
「え、うそ、やったじゃん!」
「良かったね!」
「どこにいるとかわかる?」
「茅ヶ崎っていうところです」
「すぐそこじゃん! すごい!」
さっそく私は動画サイトにメッセージを送り、お姉ちゃん、幸来さんとの再会を果たした。
翌日の昼、片瀬江ノ島駅で落ち合う約束をして出かける前、アロハさんとオハナさんが「いっしょに行こうか」と言ってくれたけれど、私がどんな醜態を晒すか予想できず、恥ずかしいので「いえ、一人で行って、伝えなきゃいけないことをちゃんと伝えてきます」と伝えた。
アロハさんとオハナさんは顔を見合わせて微笑み「うん、わかった、気をつけて行って来てね」と私を見送ってくれた。ううう、見透かされてる……。




