ガールズ音楽ユニット『ラブリーピース!』完成!
紗織は見抜いていた。押しに弱く流されやすいところもある夢の潜在能力を。
それは、物事の本質を正確に読み取り、求められていることを実現しようと努力する能力、そして努力の末に実現させる、遂行能力の高さだ。
演奏の基礎を固めつつ音楽を心から楽しんで、自分なりの演奏を身に付ければ、ドラムを迎え各パートが揃ったバンドとしての『ラブリーピース!』は完成する。ラブリーピースはダンスをする曲も作るから、良ければそれも追い追いやってもらえたらと紗織は思っている。もちろんイヤイヤやるでなく、楽しめることを前提に。
「よし、じゃあちょっと叩いてみようか」
紗織、笑、幸来、思留紅、聡一。五人もの視線が夢に集まり緊張が走る。
「え、え、どう叩けばいいんですかっ」
「てきとうにバンバン叩いてみて!」
「そうだよ夢! てきとうにバンバンだよ!」
「そ、それじゃあ……」
必要以上に緊張して、ドラムスティックを握る夢の手は汗ばみアルコール中毒者のようにビクビク震えている。
だがドラムスティックを振り上げたとき、夢の目付きは変わった。顔をキュッと引き締め、眼はドラムを真っ直ぐ見詰めている。
水中の魚を狩る水鳥のごとく振り下ろされたスティックは瞬時に空へ跳ね上がり、スネアドラム、タム、ハイハットシンバルと軽快かつそれぞれを音をしっかり主張して叩いていった。
手を止め、両手にスティックぶら下げながら、夢は反応を窺っている。
「す、すごい! すごいよ夢!」
「ほんとね、音に重厚感があって、初めて叩いたとは思えないわ!」
「ブラボー! さすが夢ちゃん! 私の眼に狂いはなかった!」
「すごいです夢さん! 才能あります!」
「見事だね」
「え、あ、ありがとうございます!」
何かしらの指摘を覚悟していたが、全員に称賛され恐縮する夢。
「でもどうして、あんなにいい感じに叩けたの?」
笑が訊ねた。
「うんと、リコーダーを吹くときに、タンギングってあるでしょう?」
「え、あぁ、あるね、カンニング」
夢とは対照的に笑には「こいつわかってないな」と、冷ややかな視線が刺さる。
「タンギングよ、タンギング。リコーダーって、ふーって吹くと腑抜けた音が出るけど、トゥーって舌で弾くように吹くとメリハリのある音が出るじゃない」
幸来が説明した。
「あ、ああ、あれね! うん、そうだね! そうだそうだ!」
「なるほど、タンギングと同じ感性でドラムを叩く。すごい、楽器の基本を心得ている……」
思留紅は音楽初心者の夢に心底感心している。
「すごいね、確かに、リコーダーもドラムも弾くように、けれどしっかり地に足を着けるタイミングがあることを、夢ちゃんは理解しているんだね」
聡一も、夢の能力を高く買っている。
「あ、はい、ピアノもそんな感じで弾くといい音が出るよなあとか思い浮かべてやってみました」
頼もしい夢が加入し、ガールズ音楽ユニット『ラブリーピース!』は完成した。後日、この場にいないメンバーの花純にも承諾を得て初めて本当の完成となるが、彼女が夢を拒むことはないだろう。




