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ハートフル少女ラブリーピース! ~届け、私たちのミュージック!~  作者: おじぃ
8月

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43/93

片瀬江ノ島駅で

「あれ? この世界ってもしかして、昔話の世界なの?」


「そう、ね、これ、竜宮城りゅうぐうじょうよね」


 江ノ島から本土に渡って笑たちの前に現れたのは、昔話に出てくる竜宮城らしき建物。ラブリーピースの世界でもその物語は存在し、世代を超えて語り継がれている。


「な~んだ、私たち、アニメの世界から昔話の世界に来ちゃったんだね」


 文明が進んでるとかそんなことは、笑の頭にはなかった。


「でもそうしたら、思留紅ちゃんたちはどのキャラクターなのかしら」


 幸来は、もしかしたらここはずっと昔に海の中で、現在は陸地になり竜宮城が露出したものと考えもしたが、とりあえず笑に話の流れを合わせている。


「まさか思留紅ちゃん、カメをいじめてた子ども?」


「そんな、思留紅ちゃんが」


 まさか、そんな、やさしい思留紅ちゃんが動物虐待なんて、と、あわあわする笑。


「何を仰るんですかラブリーピースさん! 私はいじめが大っ嫌いです! ちなみにこの建物は竜宮城をイメージして造った片瀬江ノ島の駅舎です!」


「なんだぁ、これが駅かぁ、すごい凝ってるね」


 まるで本物の竜宮城や由緒ある神社のようにがっしり堂々とした造りに感心する笑と幸来。模造品でもここまで本格的に造るとは、やはりこの世界の文明は恐るべし。


「どうして竜宮城を模したのかしら」


「そういえば、私も知りません」


 茅ヶ崎のことなら概ね答えられる思留紅だが、ここは藤沢。藤沢についてもそれなりの知識はあるが、茅ヶ崎ほど詳しくはない。


「観光の促進だったっけ? この駅舎は最近建て替えられた新しいやつだよね」


 紗織が聡一に言った。


「そうだね、以前はこれとは少しデザインの違う竜宮城の駅舎があったけど、築90年が経過して、老朽化のため建て替えたんだ」


 出番が少なく、ここぞとばかりに語る聡一。


「おお、さすが思留紅パパ!」


「いやいや、それほどでも」


 おだてる笑と、照れ笑いする聡一。普段はあまり喋らない聡一だが、構ってもらえると嬉しいようだ。


「夢ちゃんはまだ来てないのかしら?」


 幸来がきっぷ売り場や改札口の向こうを見回す。片瀬江ノ島は終着駅で、折り返し発車を待つ電車の顔が見える。現在14時40分、駅には数十人が引っ切り無しに出入りしている。夢は見当たらないが、とりあえず笑と聡一の会話を断ち切れた。


「見当たらないね。夢、早く会いたい! ちゃんと元気にしてるかな? げっそりしてないかな? お姉ちゃん心配で涙が出ちゃう」


 冗談めかす笑だが、内心強い期待と会えないかもの不安で内心混沌。もちろん心配は本心。


 1本の電車が発車して数分後に次の電車が到着し、乗客がぞろぞろ降りてきた。3分ほどして人の流れは途絶えたが、夢は見当たらない。現在14時55分、待ち合わせ時間5分前。


「来ないなぁ、電車に乗り遅れちゃったかな」


 姉の笑とは相反してしっかりしている夢。待ち合わせ時間に遅れるなんてことは余程のことがなければない。


 もしかして、誘拐ゆうかいされちゃった? 事故に遭った? そんな不安が笑を襲う。


 幸来も思留紅も夢の性格をよく知っていて、不安を抱き始めた。


「大丈夫だって、もうすぐ来る」


 不安を察した沙織が主に笑を励ます。


「来なかったら?」


 珍しく、笑が弱音を吐いた。


「何分でも、何時間でも待とう。聡ちゃんは先に帰ってもいいよ」


「え? あぁ、まあ、状況次第でね」


 突然のフリに挙動不審になった聡一だが、あまり長く待つようなら思留紅と幸来は家に帰したほうが良いかもと判断。言葉通り状況次第だ。


 14時57分。まだ来ない。不安は募る一方で、笑は胸がつかえてきた。ああもう! 胸が張り裂けそう! 我慢が限界に達した、そのときだった。


「お姉ちゃんと、幸来さん」


 その瞬間は、背後から突然訪れた。


「夢!」


「夢ちゃん!」

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