湘南ひらつか七夕まつり3
「わっほーい! 人がゴミのようだ! ゴミのような人間もいっぱいだ!」
なんだてめぇコラ。
そう言いたげな公衆の視線が笑に突き刺さる、平塚駅北口。
駅舎の階段を下り、大きなバスロータリーを右手に歩くラブリーピースとその仲間たち。
駅ビルや雑居ビルの壁際ではビールやフランクフルト、かき氷などをテーブル上で販売中。「いらっしゃいいらっしゃい!」と威勢の良い声がそこかしこから聞こえてくる。だがそこに立ち寄るのも至難の業。人混みが半端なくて思うように進めない。
『湘南ひらつか七夕まつり』は東北の大都市、仙台と並ぶ二大七夕祭り。県内外から人がわんさか押し寄せる。芋洗い状態だ。
「こら、そういうことは思ってても言わないの。ラブリーピースのファンだっているかもしれないし」
「どうせ私たちを応援してくれた御子様方はラブリーピースなんかとっくに忘れてタピオカちゅぱちゅぱしてますよ」
「私は、私はまだ、ラブリーピース大好きですよ! 汚泥まみれのドロッドロで、ぐでっぐでなハートの持ち主だと知ったいまでも!」
これでもフォローしているつもりの思留紅。
「私も好きだよ! ラブリーピース!」
ストレートに気持ちをぶつける花純。
くっそきったねー現実世界で、花純はどうして花のように純情でいられるのか。乙女ゲームの主人公のように母性を持ち併せた朗らかな女神でいられるのか。三人はそれを不思議に思っている。
笑が思った通り、道中に点在するタピオカの専門店の前では元ラブリーピースの視聴者ではと思われる少女その他の行列が形成されている。彼女たちはタピオカを楽しみに、わくわくしている様子。大方ラブリーピースのことは忘れているだろう。