新たなる仲間
『こんなので聞こえるかな?』
現在の状況を説明しよう。
恵瑠の頭からなんか出てきてる。以上。
「聞こえると思うよ。いつもは頭の中で響く感じだけど、今は耳から入ってくる感じがする。」
『そう?ならいいか。』
「でも、体が半透明だね。幽霊みたい。」
どうやら、そのなんかは影の恵瑠で影の精神だけ外に出てきたみたいだ。影恵瑠の体は半透明で腰から下は透明度が上がり、足先は見えていないという、恵瑠が言ったように幽霊のような感じである。
しかし、声が幽霊(笑)から発している感じ。
これなら恵瑠以外の者も影恵瑠の声が聞き取れるだろう。
知り合い以外は皆話す前に逃げだすだろうが。
「そうだ。カゲちゃんの呼び名決めないと。」
『呼び名決める前にできてるし、あと何カゲちゃんって。』
「あ~、どうしよっか~。」
『むしですかい。』
「じゃあ適当に「アール」で。」
『本当に適当だね。まぁいいけど。』
「いいんだ・・・じゃそれで。」
と、あっさり呼び名が決まってしまった。
「それにしてもまさか直接外に出てくるなんてね。翼なんて言うかな?」
『それにしても翼って奴?あの人は過去から来たんだっけ?どうやって来たの?」
「時の森ってとこで時の神様の時渡りに巻き込まれたみたいだよ。」
『あの人妖なんでしょう?妖にもいろいろあるけどあれは何の妖なの?見るからに人間だけど。』
「それは聞いたことないなぁ。あ、自分の先祖は人と共存していたから見た目が人なんだとは聞いた。」
『ふぅ~ん。』
「それ以外は、これからわかると思うし、翼が知られたくないなら無理に捜索しないつもりだよ。」
『そっか。』
玄関の方から扉が開く音がした。
「お、噂をすればだね。」
翼が恵瑠たちの元へ来る。
「ただ・・・・・・。」
翼は瞬きをしながらアールを見つめる。
「ほら、この前の・・・。」
「ああ、見ればわかる。」
『幽霊ではないよ。』
「そうか。てか喋れるんだな。」
『うん。アールです。よろしくです。』
「あ、よろしく。」
「うわぁ・・・、すっご~いあっさりだねぇ。」
これは決して、打ち解けるのが早いわけではない。会話が適当すぎるのだ.。
「ところで、これはどういう感じだ?」
『恵瑠の中から精神だけ出てきた感じ。これなら私が見えるし声も聞こえるでしょう?』
「おぉ、なんか、すごく、がんばったな・・・。」
翼は感心しているのか、それとも、戸惑っていたのか。普通は不可能なのだ、こんなこと。
なんで、こんなことができるのかと言うと、まぁ、気合いだと思って欲しい。
え?適当?ソンナコトナイヨ。
「ということで、これからはアールはもう私たちの友達だよ。仲良くしてね。」
「あ、もちろんだ。」
これ以降、恵瑠と翼は幽霊との生活が始まった。
『幽霊じゃないからね?』