不知火マサノリ
まだまだ序章です
「マサノリ〜、早く降りて来なさい!夏休みだからって昼過ぎまで寝てないで、早く朝ごはん食べて片付かないでしょ」
私の寝室からリビングまではあまり離れていない。
部屋は一応二階まであるのだか、私はあまり実家の田舎には帰ってこない。昔使っていた寝室は今や物置である。
今、私不知火マサノリがいる部屋はかつては祖父が生きていた時の部屋を掃除して使っている。
リビングとは廊下を挟んで反対側である。よって母の声は凄く良く聞こえるので寝てはならない。
「了解、母さん。今行くよ。」
私は廊下に向かい短答えた。今身につけている灰色のスエットを脱ぎ、無地の黒い半袖Tシャツにジーンズというラフな格好でリビングに向かった。ドアを開けると母さんが三人分の食事を配膳してくれていた。
「あれ?ミカはいないのか。」
私の問いかけに母さんは呆れた顔をしてこっちを見ている。ミカとは私の三つ下の妹である。
「マサノリ、昨日ミカが言ってたでしょ。明日の練習は大会が近いから、いつもの1時間前から練習するって、あと今お昼ねミカなら7時には出ていったわよ。」
「そういえば、言われてた気がする。」
世間の兄妹仲がどれ程良いかは知らないが、私とミカは仲がいい。長い休みとなると東京の私の家に遊びに来たり、私が帰って来た時は近くのショップで買い物に付き合ったりなどしている。
「鬼の研究もいいけど、もっとミカに構ってあげてね。あの子かなりのお兄ちゃんッ子だから。最近なんかお兄ちゃんのお嫁さんになるとか言いださないか心配よ。」
母の苦笑まじりの抗議に矛盾点を指摘する。
「仮にミカが「私のお嫁さんになる」とか言わせない事を考えると、私が構わない方がいいと思うけど?」
私の指摘に母は笑った。
「そうなんだけど、やっぱりミカはお兄ちゃんといる時が一番幸せそうだしね?母の心としてはミカの幸せを最優先にしたいじゃない?」
昔から母はミカに少し甘い。私もかなりミカを可愛がり過ぎた感はあるのだか、母のそれは私以上だ。別段私に母が冷たいなんて事はない。
「今調べている巻物と新しくこの間の散策で見つけた洞窟を調べ終わったら、ミカの好きな事に付き合ってあげるって伝えておいて母さん」
「分かったわ、伝えておくわ。やっぱりあなたもミカに甘いわね〜」
母さんは少し悪戯な笑みを浮かべていた。
朝食を終えて部屋に戻り出かける準備をしているとドアをノックする音が聞こえる。
「マサノリ出かけるの?」
「うん、母さん。一昨日見つけた新しい洞窟に壁画類が書かれていないかを調べに行くつもりだよ。」
家を出て裏山の西に向かい進んで行く。
そこには川幅八メーター程の流れが急な川がある。今回の目的地はこの川を一キロ弱上流に向かい、掛かっている吊り橋を渡り、山道を外れてしばらく歩くと木々が生い茂りその洞窟の入り口を隠している。
「後は橋を渡ればもう少しで着くな。よし、未だ知らない鬼族の情報を手に入れるぞ!」
自身に発破をかけ橋を渡る、筈だった。
「ナッ!足場がッ⁉︎」
橋の中腹辺りに来た瞬間である、板が三枚一気に割れ私は足場を失い川へと転落した。
水の冷たさと全身を何かにぶつけられる痛み、肺の空気がなくなって息が出来ずにもがく感覚をしばらく味わい私は意識を手放した。
ありがとうございます
早くヒロイン出します(切実
m(_ _)m