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03.凶悪な組み合わせ

 そんな姿が周囲からは暇そうにしている、と見えたのだろうか。村人の一人が話しかけてきた。


「外から来たのかしら?」


 何故だろう。酷く若々しい女性なのだが、可愛いおばあちゃんとお話をしている気分になってくる独特のイントネーション。そんな口調で話しかけて来た彼女に、首を傾げながらもジャックは向き直った。

 敵意や殺意などは全く窺えないので、何か普通の用事があって声を掛けて来たのだと思う。リカルデも肩に力が入っているようには見えなかった。


「どうしました、ご婦人」

「あらやだ、ご婦人だなんて。うふふ、分かる子には分かるのかしら。ところで、折角人魚村に来たのだから、人魚の逸話でも聞いて行かない?」

「この村に伝わる話、という事ですか?」

「ええ、ええ。そうよぉ」

「興味があります。是非、お聞かせ願えませんか?」


 女性と話していたリカルデと目が合う。特にやる事も無いので、「話くらいなら聞いてもいいぞ」、と頷く。

 丁度良いタイミングで女が話し始める。良く言えば美しく、悪く言えば在り来たりな話を。


「ここがねえ、人魚村って呼ばれているのは――かつて、人間と人魚が共存していた村だからさ。ここは見ての通り、海から遠くてねえ。人に興味がある人魚が、陸に上がって来て泊まっていくような場所だったの。迷い込んだ人魚を保護して、その後に海へ送って行っていたのよ」

「良いですね、私もそういう逸話は好きです」

「あらあら、そうよね。女性はみんなこういう話、好きよね。そうやって人魚と関わって来たおかげで、若者が多い村になったのよ」


 ――よくある話だった。

 この村に居る住人が、ほとんど若々しい事を除けば。最後の一言で変な信憑性が生まれたのは事実だ。まさか、このお伽噺のような物語が実在した物語だとでも言うのだろうか。


 考察している顔が面白かったのだろうか。うふふ、とどことなく田舎に住んでいるおばあちゃんを思わせる穏やかな笑みを浮かべた彼女は手をひらり、と振った。


「それじゃあ、仲良くね」


 去って行く女の背を見送り、リカルデに視線を戻す。彼女もまたやや考え込んでいるようだった。


「ああいうの、好きじゃないのか?」

「いや、あまりにも型に嵌まり過ぎていると思ってな。だけど、何故だろうか。最後の一言は考える事があった。ところで、お前はあれか? 歳を取らないのか、ジャック」

「え? いや、さあ……。まだ10年しか経っていないが、身体が成長している感じは無いな。そういえば」

「ああ、そうか。考えてみれば私達よりずっと歳下なんだな」


 話しながら歩いていると、見覚えのある背中を発見した。それはリカルデも同じだろう。躊躇いなくその背に声を掛ける。


「ブルーノ!」

「お?」


 のっしのっしと歩いていたブルーノが足を止めて振り返る。さして大きい声を出した訳でもないのだが、しっかりと声は耳に届いていたようだ。追い付くまで立って待っている。


「ブルーノ、貴方は何をしているんだったかな?」

「うん? ああ俺は、人魚伝説について調べてたんだっけな。まあ、クロっぽくもあり、シロっぽくもある。あと、その前にアイテムショップに寄ろうと思って」

「た、楽しんでるな。ブルーノ」

「おう、そうだな!」


 何というか神経が図太い。

 そういえば、と不意にブルーノが思い出したように呟いた。


「イアンの奴が何か面白そうな事やってたな。俺は店を覗きたいからパスするが、どっちか奴が何かやらかさないか見てきてくれねぇか」

「そうなのか。まあ、俺はパスだな。今回ばかりは心労を回復したい」

「では、私は様子を見てくるとしようかな」

「悪いな。リカルデ」


 どうやらリカルデはイアンの様子を見に行くつもりのようだ。


「それで、ブルーノ。イアン殿はどこに?」

「おう、裏の森に行ったぞ。たぶん、チェスターも居たはずだ。あいつ、何でもすぐに暴力で解決しようとするからちゃんと止めてくれよ」


 ――凶悪な組み合わせだな、大丈夫か……?

 一瞬、一緒に行くべきか迷ったが止めておいた。どうせ、自分が行ったところで何か起きる時は起きるし、何も起きないなら起きないだろう。彼女等の行動に干渉出来るとは思えない。

 リカルデと手を振って別れた。


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