部室にて
学校まで戻ってきて、彼女に真っ先に案内されたのはおそらく彼女が一番出入りが多い場所である文芸部の部室であった。
「そういえば、文芸部って普段どんな活動してるんですか?」
「リレー小説書いたりとか読んだ本の感想とか言いあったりとか。あぁ、後文化祭では部員のオリジナルの小説とか出したりしてるよ」
「先輩、ちゃんと部活動してるんですね」
「君、結構失敬だな!! 兎亀先生に入部していただけると部も安泰なんだけどね」
「バイトがあるので」
俺は適当に勧誘を断わりながら、部室の中を拝見する。
放課後と言っても、もう全員帰ってしまったのか中には誰もいなかった。
教室より少し小さいぐらいの部屋で、本棚には多種多様の本や先ほど説明されたオリジナル小説をまとめた冊子などが綺麗に整理整頓されて片付けられている。
部屋も掃除が行き届いているところを見ると、綺麗好きの部員でもいるのだろう。
しかし、そんな部室の中では異様と言えるものが壁に大量に貼ってあった。
「先輩何ですかこれ」
「メモ代わりに色々張ってあるんだよ」
そこに大量に貼られているのは、大量の文字を書いた紙であった。
内容を読み取るに、部員への連絡などに用いられているみたいだ。
「この大きさといい長さといい、もしかしてこれ全部レシートですか?」
「その通りだとも」
メモを一枚捲り、裏を見るとコンビニで買ったであろう商品の名前が羅列されている。
「まさかこの中にあるとか言いませんよね?」
「アハハ、まっさかー。流石に普通のレシートと領収書じゃ大きさも違うし分かるよ」
それもそうかと思いつつ、一応確認のために一枚ずつ捲っていくがどれも普通のレシートだ。
「しかし、よくこんなにレシートありますね」
「私お財布の中にそういう類のって入れちゃうのよね」
彼女は折り畳み財布を開き、中を見せると確かにレシートが大量に入っている。
俺はすぐに捨ててしまうので……。
「どうしたの? 兎亀先生」
「いえ、先輩。もしかしたら領収書見つかるかもしれませんよ。脱兎のごとく行きましょうか」