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ゴースト作家君とライターさん  作者: カプチーノ
4/6

小動物系店主

 小動物のように身を縮め、完全に怯えた目でこちらを見てくる店主に少し怒鳴りすぎたかと思ったが悪いことをしたつもりはないので謝る気はない。

「彩奈さん、領収書見ませんでしたか?」

「領収書ですか? 英語で言うとレシート。イタリア語ではスコントリーノ。ドイツ語ではボン。フランス語ではレシュの?」

 それは最近の流行なのだろうか、一つの言葉をどれだけ複数の言語で言えるのがお洒落とかそんな感じだろうか。いや、そんな流行あってたまるか。

 少なくとも浦亀彩奈という人間が流行の最先端にいるとは考えにくい。

 何となしに最近の流行りの某動画サイトで有名になった人の話題などを振ってみても、彼女から帰って来た返答はそもそも動画サイト自体知らないというものだった。

 そんな彼女が流行の最先端にいるなどとは、とても考えたくはない。

「あの、それでどうしてそんなものを? 何かレジの方で問題がありましたか?」

「いえ、探しているのは俺ではなく先輩なんですよ」

「あぁ、立ち読みの……」

 滅多に表に出てこない彩奈さんにまで、そんな覚え方をされているのか。

 だが、先輩の評判などはどうでもいいし真実なので訂正はしないで頷いておく。

 とりあえず、先輩からの話を伝えると彩奈さんは首を横に振った。

「いえ、申し訳ありませんがそのような物は拾っていません」

 彼女が杜撰な掃除をするとは思えないし、一週間もの間見逃す可能性などはないだろう。

「ありがとうございます、だけど仕事はしてください」

「は、はーい」

 礼と念入りに釘を刺してから、俺は再びレジへと戻る。

「あ、お帰り」

 先輩は商品を眺めながら待っていた。

「残念ながらこの店にはなさそうです。諦めて怒られてください」

 結論を告げると彼女は分かっていたように、残念そうに笑った。

「まぁ、仕方ないよ。うん、ありがとね」

 背を向けそのまま店を出ていく。

 その背中からは責任だとか失敗だとか、そういう背負っている重さが感じられる。

 あれでも彼女は文芸部の部長だ。責任がある立場なのだ。

 よせばいいのに、自分でもそう思いながらも彼女を呼び止める。

「まだ探すんですか?」

「うん、一応最後まで足掻いてみようかなって」

「俺も手伝いますよ」

 自分の悪いところが出てしまい、心の中でため息をつく。

 呼び止めてしまった以上、何でもありませんとは言いにくい。

 それに知っている中だし、彼女には多少の恩を売っておいても損はないだろう。

「彩奈さーん、すみません。今日はもう上がらせてもらいますねー!」

 二階に届くように大声で呼びかけるが、返事はない。

 いや、正確には返事はあるかもしれないが小さすぎて聞こえないかもしれない。

「私が言うのも何だが、こんな簡単に抜け出していいのかい?」

「俺は招き猫ではないので、居ても居なくても同じですよ」

 鞄にエプロンを詰め込み、立ち上がる。

「さて、行きましょうか」


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