表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴースト作家君とライターさん  作者: カプチーノ
3/6

ちょっとした事件

「領収書?」

 なんでそんなものが必要なのか分からず、俺はオウム返しで聞き返してしまった。

「そう、領収書。英語で言うとレシート。イタリア語ではスコントリーノ。ドイツ語ではボンだったかな」

「そんなことは聞いない。それで何でそんなもん探してんのさ」

「いやー、うちの学校って部費で買ったものを生徒会に領収書として提出しなくちゃいけないんだよね」

 俺は部活動には所属していないので、初耳であった。

 私立の進学校であるが、そんな決まりがあったとは。

「それで生徒会への提出の期限が今日までなのよ」

「出さなけければ何か不都合があるんですか?」

「部費の削減とかなんらかの処置があるかもしれない。後、私がすっごい怒られる。」

 生徒会長の顔は何となく覚えている。

 かなり大人びた雰囲気の男性だったはずだ。

「で、なんの御用ですか?」

 俺は先ほどと同じ質問を繰り返す。

 だが、意味合いは少しばかり違う。

 この質問は『どうしてこの店に来たのか』という意味合いでの質問だ。

 失せ物を探す定石は単純だ。

 ビデオやDVDを逆再生するように、自分が辿った道や行動を巻き戻せばいい。

 きっと彼女も同じようにしたはずだろう。

 ならば、なぜこの店に来たのかが俺には見当もつかなかった。

「いやー、いつ落としたのか分かんなくてさ。一週間前はあったと思うんだけどね」

 確かに彼女はこの店に来たのはちょうど一週間前だ。

 しかし、その時既に領収書を持っていたのならば生徒会に提出しておけばよかったのではないかという疑問が浮かぶ。

 むしろ、既に提出してそれを忘れているだけではないか。

「いやいや、それはないよ。私って面倒ごとっていつも最後に回しちゃうのよね。夏休みとかの宿題も最終日に泣きそうになりながらやるし」

 今年受験生となる彼女のことを少なからず心配する言葉だった。

 さて問題を戻すと、仮に落としたのが一週間前だとするならば、それだけ探す場所が膨大になる。

 なによりどこで落としたか分からない紙切れ一枚を探し出すことなど、干し草の中から針を探すほどに無謀と言える。

「それで落としてなかったかな?」

 少し待っててください。そう言い残して俺は奥へ、つまり住居スペースへと脚を踏み入れる。

 店を閉めた後に彩奈さんは毎日掃除をしている。

 もし、何か見つけているなら彼女が所持しているはずだ。

 階段を上がり、店に出していない分の本が置いてある倉庫ともいえる部屋を開ける。

「彩奈さん、領収書見ませんでしたか?」

 ノックをし忘れて少々無遠慮だったかと、反省したがその心配は無用だった。

 なぜならば、彼女は仕事をほっぽりだして床へと座り込み読書に耽っていたからだ。

「仕事しろ!!」

「ひゃ、ひゃい!! ごめんなさい……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ