プロローグ
今まで俺は何をし生きてきたのだろうか・・・・・
小さい頃からこれといった特技もなにもなく、勉強も中の中、何をしても中途半端な成績、何の取り柄も無かったが、仲の良い友達はたくさんいた。でも、両親を不慮の事故で失ってから俺の人生は一変した。
親を失ってからは児童施設に入った。でも、大切な家族を失ってからの俺は感情を表に出すことは無くなり、それまで仲の良かった友達も皆周りからいなくなり、施設でも塞ぎ込んでた為他の子達からも自ら距離を取りひたすら一人で過ごしてきた。
高校に入学と同時に施設を出て学生寮に入り心機一転、気持ちを新たに楽しんで生きて行こうとしたのだが、こんな生活を8年間続けていてたため、ルームメイトともうまくいかず、再び俺は孤立した。
そんな矢先、通っていた高校が極度の財政難に陥り俺が通い始めて一年で廃校になることが決まった。
先生たちは在校している生徒たちが新たに通う学校に交渉や手続きをしている中俺はどうすることも出来ずにいた。
先生が俺に話しかけた時には既に俺以外の生徒は新たに通う学校が決まった状態だった。
一緒に探すと言ってくれていたがその話を蹴り、通う場所が俺だけないまま学校は廃校になった。
仲の良かった知り合いもいないし今更施設に戻るのも気が引けていたのでただただ街の中を彷徨っていた。
街の何処にいるかも分からず意味もなく歩いていたらいつの間にか森の中を歩いていた。
朦朧とした意識の中、道なき道を歩き、服は枝に引っかかり破れ、雨に当たりずぶ濡れ、肉体も精神も既に限界に達していた。
そんな中ふと、人口整備されてる道路に出ていたのに気づいた。
坂道をひたすら上っていき突如現れた巨大な門の前で俺は力を使い果たし倒れてしまった・・・・・
意識を失う直前に足音が聞こえてきて助けてもらおうと思い、手を伸ばしたが俺の意識はそこで完全に途絶えてしまった。
だが、足音の主が何かを叫んでいたような気がした。それは助けを呼んでくれたのかはたまた・・・・・
無意識の中で何かが聞こえてきた。
[あなたはやればできる子なんだから諦めてはダメ]
[優季、お前はまだこっちに来てはダメだ]
・・・・・聞き覚えのある声だ。誰だろう・・・思い出せない。
でもなぜだろう、この声を聞いていると気持ちが落ち着いてくる。
[辛い思いをさせてごめんね・・・]
[今まで寂しかったよな、すまなかった]
声の主が俺に向かって謝っていた。真っ黒なシルエットは見えるが顔の輪郭がはっきりとしない。
でも、この二人が心の底から謝っていることは声のトーンではっきりと分かった。
[なぁ・・・あんたらは誰なんだよ]
俺は二人の影に質問をしたが返答は帰ってこなかった。
帰ってきたのは二人からの質問だった。
[あなたはまだ生きていたいかしら?]
優しい女の人の声だ。
[・・・・・生きててもどうせ一人なんだ、生きても死んでも一人ならどっちでも変わらないだろ]
素直にそう思った。両親が死んでからずっと、何をするのにも一人でやってきた。こんなの死んでるのと一緒だと思っていた。
・・・・・こんなのなんてただの[生きる死者]だとずっと思ってた。
[・・・そう]
女の人は寂しそうに一言言って黙り込んだ。そして今度は男の人が質問してきた。
[変わりたいとは思っているか?]
どこか優しさを感じる・・・そんな事を考えていたらなぜか自然と口が動いていた。
[変われるものなら変わってみたいよ・・・]
無意識にそう答えていた。
そして二人が微笑んだような気がした。
[変わりたいのなら簡単よ]
[お前はただ起きればいい]
え?起きるだけ?
それだけで変わることが出来るなんて俄かに信じる事が出来ない。
だが、二人は混乱している俺をよそに言葉を続けた。
[あなたは起きると同時にあなたの人生を変える存在になる人に会うわ]
[そしてそれは一人じゃなくお前が想像しているより沢山の人たちだ。]
[その人達は必ずあなたを救ってくれるわ]
俺の人生を・・・この暗闇から救ってくれるのか?
そんなことを考えているとふいに二人が俺に微笑みかけながら
[さぁ、起きる時間だ]
[さぁ、起きる時間よ]
混乱が収まらない中、そう言われ冷静になり二人を見つめなおした。
すると、二人はこちらに向かって手を振りながら
[いってらっしゃい]
そう言った。
その言葉を聞き終わった時には二人のシルエットは消えていた。
それと同時に俺の意識はゆっくりと消えていき光が広がっていった。
感想待ってます。