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とりあえず、初勝利だな

――参道沿い

「さぁ……来やがれ!」

 俺はサーベルを構え、威嚇するように軽く振って見せる。

 と、一体のゴブリンが力任せに棍棒を振り回し、俺に襲い掛かってきた。


「へっ、遅いぜ!」


 横っ飛びで棍棒を回避。すかさず、勢い余ってよろけたヤツめがけて上段からサーベルを振り下ろす。


「ケギャーッ」


 頭を割られたゴブリンは、絶叫とともに血飛沫をあげ、倒れ伏した。

 我ながら、なかなか鋭い一撃だな。

 これもスキルとやらのおかげか。頭の中でイメージしただけで、勝手に身体が動いてくれるな。こりゃ便利。


「ケケェー!」


 さらに一体が殴りかかってくる。

 が、遅ェ。かわしざまにサーベルを横に一振りし、胴を斬り裂く。

 その直後、“何か”を感じた。これは……魔力か!

 そして、


「うをっ!? ……何だ!?」


 炎の弾丸が襲い掛かってきた。慌てて回避……間に合わねェ!


「熱ィ!」


 喰らっちまった。


「くっ……そっ!」


 慌てて炎を振り払う。どーやら服や髪には引火しなかったみてーだな。ラッキーだ。

 周囲に視線を走らせる。

 と、俺を囲む連中から離れて、十数メートル先に佇む一体のゴブリンが目に入った。

 長い棍棒を持ったヤツか! ヤツはそれを構え、また何か口中で唱えている。

 そっか。さっきのは炎の魔法。っつーコトは、ありゃヤツの仕業か! ゴブリンシャーマンってのだっけか。

 っつーコトは、あの武器(クォータースタッフ)は魔法使いの杖なのかよ。


「チッ……ウゼぇ。まずヤツからだ!」


 遠距離攻撃持ちは、早いうちにツブすに限る。

 いくら魔法が効きにくいったって、何発も喰らえばヤバいしな。

 が、俺の意図を察知したのか、一体のゴブリンが俺の前に立ちふさがりやがる。


「ジャマだ!」

「グギャッ!?」


 逆袈裟一閃。

 そして倒れ臥すヤツには目もくれずに囲みを突破すると、ゴブリンシャーマンとの距離を一気に詰める。

 数匹が俺に追いすがってくる様だが、今は無視。

 ゴブリンシャーマンは焦ってやがる。魔力が乱れ、呪文の完成に手間取っている様だ。

 チャンス! 駆け抜けざまに、サーベルを振るう。

 と、印を結んだまま、ヤツは地面に倒れ伏した。同時に集積された魔力の暴走で、小さな爆発が起きる。

 その直後、背後からの殺気。


「チッ」


 飛来する石を、首を捻ってかわした。

 危ねぇ。一瞬暴発に気を取られた。

 そこへ、さらに追撃が来る。


「ケァアッ!」


 追いすがってきたヤツがトゲ付き棍棒で殴りかかって来たのだ。そしてその背後からもう一体がスリングで投石の準備をしている。

 支援攻撃付きか。

 けど、遅いぜ!

 その時はもう、俺は迎撃体制を整えていた。

 踏み込みつつ、横一閃。

 ゴブリンの手中でトゲ付き棍棒は真っ二つとなった。……その胴体ごと。

 そしてさらに踏み込むと、投石を中断して棍棒を取り出そうとした一体も両断。

 ふん……これで、後三体か。

 シミター持ち二体と、リーダーと思しき斧持ちだ。要警戒だな。

 血糊を払うと、サーベルを構え直した。


「イゲゲ! マデーゲ!」


 と、斧持ちがなにやら号令をかけた。

 それに応じ、ボス格の側近と思しき二体が同時に突進してくる。

 同時に俺も、地を蹴った。

 一体に肉薄。


「カゲッ!?」


 ヤツは接近する俺に慌て、体勢を崩す。

 俺はすかさずそれを斬り捨てると、その余勢を借り、もう一体のゴブリンに向かう。

 ヤツはシミターを振りかざし、上段から打ち込んできた。

 だが、遅ェ。その一撃を受け流すと、胴を斬り裂く。

 血飛沫をあげ、二体のゴブリンが倒れた。

 残るは、身体のデカいリーダーだけだ。

 さて、どう来る?

 サーベルを構え、出方を待つ。


「ギ……デレ、ヴ……ヴェレ……」


 と、ヤツはじりじりと後退った。

 ビビってやがるか?

 なら……


「どうだ? まだやるかい?」


 サーベルを突き付け、ニヤリと笑ってみせた。


「ガァッ!」


 ヤツは斧を振りかざした。

 ……来るか?

 腰を落とし、身構える。

 が……ヤツはその身を身を翻した。

 逃げやがった。フェイントかよ!

 追おうとする。が身構えたせいで出遅れた。

 逃げ足が速いので、追いつくにはちとホネだろーな。

 ふん、まぁいい。ザコだしな。これで、全部だよな?

 視線を外し、周囲を見回す。

 伏兵とかは……気配は感じねぇ。

 最初からコレだけだったか、それとも逃げたのか?

 と、その時、また“イヤ”な感覚があった。そして視界の隅で何かが動く。

 逃げたとばかり思っていたゴブリンが手斧を投げつけてきたのだ。


「! ……チィッ!」


 慌ててソイツを、頭上で斬り払う。

 弾かれた斧は、空中で何度か回転すると、少し離れた地面に突き立った。

 危ねぇ。気付くのが遅れたら直撃だった。


「こンのヤロウ!」


 今度こそ本気で逃げにかかったゴブリンの背中を睨みつける。

 走って間に合うか? いや……そーだな、攻撃魔法を試してみるとすっか。

 掌に魔力を集中する。そして印を結ぶと、光の塊が現れた。


「喰らいやがれ! “光弾”!」


 光の塊が弾けると、無数の光の矢がゴブリンめがけて宙を疾った。

 そして、命中。


「ギィーー!!」


 まばゆい光が弾け、ゴブリンの姿はその中に消えていった。

 そして残されたのは……小さなクレーターだけだ。


「おおう……」


 もっと低威力のでも良かったか。消し炭どころか完全に消滅しちまった。何せ初めてのコトだから、力の加減がワカラン。

 まっ、いいか。これで今の俺の“力”をある程度だが把握できた。

 や〜れやれ……終わったか。

 一つ大きく息を吐く。

 とりあえず、初勝利だな。チュートリアルを除けば。

 おっと、戦績の確認をしねェとな。

 俺のステイタスを呼び出す。

 ゴブリン9体で経験点486か。で、今までのと合わせて593。LV2か。3にあと少しってトコだな。

 とりあえず、レベルアップの処理だ。

 ……そうだな。

 とりあえず、精神力に2足そう。で、スキルは神聖魔法を2にするか。

 まずは死ににくいようにするのが先決だ。

 LV1の時と同じ様に、体の奥から“力”が湧き出してくる。

 しかも、先刻よりも大きな“力”だ。こうなると、LV3が楽しみだぜ。

 ……で、加算処理をしたのが次の数字だ。


――――


 名前 : 仁木壮介 性別 : 男 種族 : 人間 経験レベル : 2 身長 : 166cm 体重 : 54kg

 体力度 : 14 耐久度 : 16 器用度 : 21 敏捷度 : 13 幸運度 : 16

 精神力 : 13 精神耐久度 : 14 知性度 : 15 知恵 : 12 魅力度 : 12

 HP : 29 / 32 MP : 20 / 29 状態 : 健康

 攻撃修正 : +17 回避修正 : +16 速度 : 速 魔法修正 : +15 魔防修正 : +9

 スキル : 剣術2 格闘1 黒魔術1 神聖魔法2 危険感知1

 所持金 : 0 経験点 : 593

 武器 : 聖剣 防具 : なし

 装備 : 服 リュック 所持品 : スマートフォン 魔導石1

 言語 : トゥラーン語2 ゼルゲト語1 ソアン語1 アトラス語1


――――


 ま、こんなもんか。次は知恵か魅力か……

 おっと。

 ここでぐずぐずしてたら、もっと強力な魔物が出るかもしれんな。早く街へ行こう。

 そう思いつつ、何気なくゴブリンの死骸に目をやった。

 ……ん? ナンだ?

 一体のゴブリンの死骸の傍らで、何かがキラリと光った。

 近づいてみる。

 地面にこぼれ落ちた、金色の小さな円盤。

 拾い上げてみると、表裏に記号らしき文字と、セルキア神殿で見た女神らしき女の横顔が描かれていた。


「おっ? コイツは……金貨か!」


 そーいえば、今の俺は日本の金しか持ってねェな。つまりここでは無一文ってぇワケだ。

 死体が持っていても仕方がねぇ。有難くいただいとこう。

 そうして七体のゴブリンが持っていた金目のモノを手に入れる。

 死体の臭いにゃ閉口したがな。

 ついでに、ソレとグロさで精神耐久度が1減った……。ついでにMPも。

 ま、一時的なモンみてぇだがな。明日までに回復してるといーな。

 ちなみに精神耐久度が一気に減ると、一時的に精神的に不安定になったり、下手すりゃ発狂したりとかするらしい。正気度と言った方がいーかもしれねェ。いくら肉体が強くても、精神的にヤられちまっちゃあオシマイだ。気ィつけねーと。

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