表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/212

とっとと出てきやがれ!

 俺は神殿の通路を、出口を探しつつ歩いていた。

 この神殿は、四角錐……っつーか、ピラミッド型の台の上に建てられているよーだ。

 見下ろすと、石畳の道が遠方へと続いているのが見える。そこに降りる階段は……っと、あった。

 一つの面の中央に、幅の広い階段があった。

 その階段を下り……ン? ナンだこの穴。

 階段を下りきったところに窪みがある。何か落ちてきたんかな?

 あ〜そういやゲームじゃこの神殿、何故か途中で破壊されるんだよな。ッつーコトは、そん時に出来た穴かねぇ?

 ……まっ、いーか。

 とりあえずこの石畳の道を歩いていけば、アルタワールとカデスを結ぶ街道に出るだろう。



 と、しばらく行ったところに、二本の柱が立っていた。その間を石畳の道が抜けている。

 ど〜やらコレは鳥居みたいなモノらしーな。

 それをくぐり、さらに先へ。

 ……おっと。すぐそこに川が見えるな。ヤツが言ってたのだな。

 石畳の道を外れて近寄ると、綺麗な透き通った水が流れているのが見えた。

 あの神殿が健在だった頃なら、もしかしたら神殿勤めの巫女なんかが水浴びしてたりするんかな?

 う〜む、破壊されてしまったのが惜しまれる所だ。

 あーそういえば、水を飲まなきゃな。HPとMPがある程度回復するみたいだし。

 河原に下りて、流れに近づく。

 そしてそっと手で水をすくった。

 冷てぇ。それに、ずいぶんきれーな水だ。十分飲めそうだな。

 万一生水に当たっても、治癒魔法でなんとかなるだろーし。

 それを口に含んで見る。

 ……美味い。

 タダの水がこんなに美味いとは。

 ミネラルウォーター買うヤツ少々小馬鹿にしてたケド、やっぱ本当に美味い水は違うんかねぇ?

 おっと、ナンか身体が……

 身体の奥から力が湧いてくるようだ。

 そうだ。ステイタスは……

 MPが全快してるな。

 ふ〜む、この辺りで経験値稼ぎするのも一つの手か?

 などと考えてると、あるモノが目に入った。

 ナンか落ちてんな。小さめの三日月刀(シミター)か? かなりサビちまってっケド……

 それがなけりゃ、サブウェポンにでも丁度いいんだがな〜。

 まっ、そんなイイ武器がそこらに落ちてる訳はねェよな。

 おっと、サーベルの元になったヤツよりもひと回りくらい小さなナタもある。これまたサビてんな。

 って……ここで一体ナニがあったんだ?

 慌てて周囲を見回す。

 と、川のすぐそばにある茂みの所に、何か白いモノが幾つも落ちているのが見えた。

 行ってみるか。

 側によって、ソレをよく見る。


「ナンだこりゃ? って骨かよ!」


 肋骨っぽいのやら、肩甲骨っぽいの腕や脚のものっぽい細長い骨。バラバラの骨が散らばっていた。

 元の動物は……そんなに大きいヤツじゃないな。せいぜい大型犬やら羊やらぐらいか?

 ……この世界にそんなんがいるかはともかくとして。

 骨をよく見ると、他の動物にかじられたっぽい跡がある。それでバラバラになっちまってんな。

 にしても、シミターやナタとの関係は……って、


「……ン?」


 ふと視線を巡らすと、小さな骨の塊が見つかった。それは元の形状を保っている様だ。それには細く長い五本の指が付いて……って。


「うげっ!?」


 に……人間の手か!? つまりコレらは人骨?


 思わず飛び退る。


 オイオイ、まさかココでモンスターに襲われて、殺されちまったとか?

 いや……それにしちゃ小さいか? 子供? いや……指先にもカギ爪っぽいのがついてるしな。

 ふ〜む、ゴブリンか何かか?

 “識別”の結果は……グレムリンか。ゴブリンの亜種だそーな。

 神殿のすぐそばで、いきなりモンスターが出没するのかよ。

 まっ……まぁ、コイツらは死んでるから脅威にはならねぇが……。

 ケド、どのみちココにはコイツらをヤった奴が現れたっつーコトだよな?

 人間ならまだいーケド、もっと強力なモンスターだったらマズいな。

 ……ヤッパ早いトコここから離れた方が良さそーだな。ココでの経験値稼ぎはもっとレベルアップしてからにしよう。

 俺は慌ててそこから立ち去る事にした。



――数分後

 俺は神殿につながる参道を歩いていた。

 もうしばらく行けば、大陸南東部から城塞都市カデスへと向かうガルンダール街道との合流点へと達するはずだろう。

 そしてそこから道なりに南へと向かうと、アルタワールへと到達する。

 どれぐらいかかるんかな? ゲーム上のマップだと、セルキア神殿はアルタワールにかなり近かったはずだ。カデスとの距離の半分以下だっけか。

 ゲームのマップがデフォルメとかされてなきゃだけどな。

 ……おっ、何か見えてきたぞ。

 森が途切れがちになり、視界が開けた。そして今歩いている参道と合流する、別の道が見えた。

 どーやらアレがガルンダール街道らしいな。

 ヨシ、ショートカットだ。

 同じよーに街道をそれて歩いたと思しき足跡もあるしな。

 まっ、異世界人でも考えるコトは一緒か。

 俺は街道をそれて歩き始めた。



――数分後

 足元で何か“イヤ”な感覚があった。

 と、同時に右足に違和感。

 妙に地面が柔らけェ。少し沈み込んだよーな……って、落とし穴かヨ!?


「おっとォ!」


 左足で慌ててジャンプ。無事着地した。

 直後、右足のあった地面は崩れ落ち、ぽっかりと穴が空いた。穴の底に見えるのは、先端を尖らせた、木の杭。

 あ、危ねぇ……。早速危険感知スキルが役に立ったか。

 ケド、まだイヤな感覚は消えねェ。

 つまり、俺が罠にかかるのを待ってたヤツがいるってワケだ。

 まだ何か……うおっ!?

 何かが俺に向かって飛んでくる。


「!」


 慌ててソレを、身をすくめてかわした。

 石か……。結構デカい。

 まともに喰らえば大ケガだな。

 チッ……

 石が飛んできた方には、小さな藪があり、その中に“何か”の気配を感じた。


「とっとと出てきやがれ!」


 俺はソイツらに声を荒げ、サーベルを構える。


「ケケ……イゲゲ」


 と、妙な声が聞こえた。

 十メートル程離れた藪の中から、なにやら妙ちくりんな小人らしきモノの集団が飛び出し、こちらへと向かってくる。

 黄褐色の肌をした、小さな人型のモノ。ぎょろりとした大きな目と鷲鼻。尖った耳。指先のカギ爪。猿みたいな体つき。よくあるゲームで言えば……ゴブリンっぽい? いや、さっきはグレムリンの骨が落ちてたよな。そっちか?


「アイツラは……」


 半眼になり、精神を集中。アカシックレコードで照合だ。

 と、脳内にヤツらのデータが流れ込んでくる。それは……


「……やっぱゴブリンかよ」


 黒妖精の亜種。いわば、闇妖精あるいは邪妖精とでもいうべき連中だ。

 廃坑などにねぐらを作り、生活しているという。その性格は狡猾かつ邪悪。人間や他種族に対する憎悪で支配された連中とのことだ。

 なら、倒しちまっても問題ねぇな。実戦慣れもしておかんとな。

 俺は近くにあった大木まで走ると、それを背に身構える。

 時を同じくして、ゴブリン連中が俺を取り囲んだ。

 総勢九体。

 五体の獲物は棍棒。素材は木の棒やら骨やらまちまちだ。釘みてーなモノ打ち込んだのもありやがる。もう一体も棍棒だが、他の連中のものに比べて細く、長い。杖かもしれねェな。ゲームなんかじゃクォータースタッフっていうヤツか? そういえば、腰から皮ヒモのよーなモノを下げてんのもいるな。スリングだっけ? 石を投げたのはヤツか。二体は短めの三日月刀(シミター)。残る一体は斧か。コイツは、他と比べて身体が一回りデカイ。ヤツがリーダーっぽいな。ゴブリンキングってトコか?

 さて、と……いよいよ本格的な実戦か。

 俺は不安と、奇妙な高揚感を覚えていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ