ナンかいー仕事ない?
――しばし後
「おお、やってるな」
戻ってきたハルジーは帳簿を三冊ほどガウンターに置いた。
前にも見た仕事関連の帳簿もあるナ。
って……前言撤回。かなり薄い。う〜ん、あんまし期待できなさそーだナ。
「ああ。お代はソコに置いてあるよ。二人前ね」
それをおくびにも出さず、カウンターの上の銅貨を示した。
「分かった」
「ナンかいーツマミない?」
「ああ、それなら……自家製のベーコンがあるが、どうだ?」
自家製、か。
今見たら、キッチンも意外と綺麗だし、そンくらいならアリかねェ?
「じゃあ、ソイツを。……エスリーンは?」
「私ももらうわ」
「じゃーおっちゃん、ベーコン二人前な」
「おう。わかったぜ」
ハルジーは一旦厨房へと引っ込み、しばらくして皿に盛ったベーコンを盛って戻ってきた。
「んじゃ、コレお代」
「おう。まいど」
とりあえず、一口。
「どうだ?」
ハルジーの口調は自信たっぷりだ。
ふむ……
「おおっ、結構いけるな」
ちっと塩気がきついけどな。まぁ、コレは好みの問題か? 飲みながらだと、それほど気にならんし。
「これ、美味しいです」
「だろ?」
エスリーンにも褒められ、やけに嬉しげなハルジー。女の子相手だと、やっぱし反応は違うか。……オッサンでも。
「こーいうのよく作るん?」
と、聞いてみる。
「ああ、傭兵時代からな。長期間の任務なんかの時に保存食を作る必要があるからな。先輩の傭兵に習ったのさ。で、今は趣味と実益だな」
「なーるほど〜。時間がある時にでも教えてよ。無論、授業料は払うつもりだ」
「おう。俺でよければな」
おっしゃ。一度やって見たかったんだ。持ってきた本にも作り方は載ってたケド、一度キチンと習った方がいーだろうしナ。
「ところで、だ……」
ハルジーの声色が変わった。
見ると、何やら帳簿を開いている。仕事関連のじゃ無いよーだナ。
「ン? どーしたん?」
「さっき小耳に挟んだ話なんだが……」
「ナンかあったん?」
まさか騎士団がらみ? それともリシュートでのコトか?
「実はな、あの屋敷の件の依頼主だが……何者かに殺されたそうだ。……何か知らんか?」
あー、そのコトか。知ってはいる。が、真相を話すワケにはいかんよな〜。
「えっ、そーなん!?」
とりあえず、驚いたフリだ。
「いや……知らんかと言われてもな。会った事ない上に、名前も知らねェんだぜ。それに俺達はさっきも言ったよーに、この街には今戻ったところだしな」
テキトーに誤魔化す。
「それもそうか……」
「ナンなら、さっき通った南門の門番に聞いてみてくれてもイイぜ?」
「ふむ……」
ハルジーは俺をじっと見……目をそらした。
やっぱ俺を疑ってる? ケド、依頼主との接点は、いくら調べたトコロてナンも出てこねーべ。
「領主も動いてる様でな。さっき衛士が来て情報提供を依頼されたんだ。何か分かったら教えてくれよ。幾らかは謝礼が出るそうだ」
「あー、分かったぜ。……そーいやさっき、南門でアルセス聖堂騎士団の連中が慌てて出てくの見たんだが、アレもナンか関係あるん?」
「いや……判らん。あの連中は自分達の都合で動くからな。正直この事件と関係あるかは判らんな」
ハルジーは帳簿にナニやら書き込みつつ答える。
「そっかー、何かのついでにでも調べてみるぜ。あんまし期待は出来んかもしれんケド」
「ああ、ソレで構わんよ」
「分かったぜ。それはそーと……ナンかいー仕事ない?」
「おう。そう来るだろうなと思ってたぜ。良さげなのを選んでおいた」
へぇ。意外に頼りになるんかな、このオッサン。
「どんなヤツがある?」
「ああ、ちょっと待てよ」
おっさんは帳簿をパラパラとめくった。
っつーか、ホンットーに薄っぺらいのが悲しートコロだ。おっと今、『ネズミ退治』とかいう文字が見えたぞ……。そ〜いうのはカンベンしてくれよ。
そしてとあるページを俺に示した。
「コレだ」
それは……
「珍味を探す!?」
俺はがっくりと肩を落とした。
「どっかの用心棒とかの仕事はねェの?」
「あ〜、あるにはあるんだがな」
「じゃあ、ナンで回してくれんのさ」
「見てくれが重要なんでな。ハッタリが効かんとダメだ」
「おう……」
今までガキだの何だの言われてるしな。まぁ、あのゴロツキどもの方が適任か。隣にエスリーンがいた日にゃ、余計トラブルを起こす原因にもなるか……。
「じゃ、仕方ねーか。……とりあえず、どんな仕事だい?」
ま、いちおー聞いとくか。
「ああ、実はな……俺の傭兵時代の先輩がこの街で店をやってるんだ」
「そーいやさっき言ってたヒト?」
ベーコンやら何やらの作り方をハルジーに教えたっていうヤツか。
「おう、そうだ。……で、店で出す珍味が切れそうなんだと。だから、その材料を取ってきてほしいそうだ」
示された報酬は、それなりの額だ。
「……分かった。ソレってドンなヤツ?」
「ああ、それがだな……」
まず一つはスノリゴスター。通称イヌワニってヤツだ。ソイツのキモが美味らしい。
う〜ん……キモか。
次はオオヤスデ。炭焼きにするらしい。長さ2mに達するバケモノだそーな。
ナンだっけ? 大昔にソンなんがいたよーな……
で、次は巨大イモムシ。
コイツを揚げたり煮付けにしたりするとか。
イモムシ……イモムシねぇ?
そして大サソリ《ジャイアントスコーピオン》。
まーコレに関しちゃ、説明するまでもないが……。この間喰ったアレだ。
そのコトをハルジーに告げると、『何で持って帰らなかったんだ!』とか言いやがったが。今言われてもな〜〜。
それはそーと。
「な、なぁエスリーン……一つ聞きたいんだが」
とりあえず確認だ。
「何?」
「あーいうのって……このヘンじゃ一般的な食材なん? 大サソリはともかくさ」
「いえ……まず食べないわ」
「やっぱそーか」
つまりイカモノ料理っつーコトね。つか、ビミョーに不愉快そーな表情ナンだが……。一緒にされたくないんかねぇ? あんまし違いはなさそーナンだが。
ま、いーや。
「でもさ、ナンでそんな依頼が出てんのさ。今まではソレを調達出来てたんだろ?」
とりあえず、ハルジーのオッサンに聞いてみる。急に獲れなくなったりしたんかねぇ? でもソンなら、俺達ごときに依頼してどーにかなるモンか?
「ああ、実はな……今まで食材採りを依頼してた業者と連絡がとれんくなったらしい」
「へ? ナンかあったん?」
「いや……それは分からん。割と手練れな連中たっだそうだが……」
「ふーむ、なるほどね〜」
とりあえず、この仕事を受けてみっか。もしかしたら、定期的な収入源になるかもしれんしな……。




