エピローグ代わりのモノローグ
カルマーラ事件のあと、数日経った土曜日。
勇と葵から、それぞれ申し訳なさげな報告を受け取った。
いや。別に俺に報告しなくていいんだけど。
気にならないわけでもないが、結果はわかってたし。
先に連絡してきたのは勇だった。
夕方くらいだったろうか。
ーーすまん、葵に告白された。
そう言ってきた勇は、自慢げな様子は全くなく、こちらを気遣うような声音だった。
よかったな、と返すと、おう、と答えて。
他に話すことはないようなので、それでキスぐらいしたの?と尋ねてみた。
狼狽えて、イキナリそんなん出来るか!と言う勇に、葵はファーストキス経験済みらしいぞとか無駄な嫌がらせをしてやろうかと少し思ったが、無駄すぎるのでやめた。
他に特になにもないらしいので、じゃあなと言って通信を切った。
葵から通信が入ったのは、夕飯食い終わった後くらいの時間だったか。
ーー勇に、ちゃんと言ってきました...
何を言ったのかはちゃんと言えないあたり、葵らしい。
わりと早かったな、頑張ったじゃん、と労うと、ごめんと謝られた。
労って謝られたのは初めてだ。
会ってきたの?と訊くと、うん、新幹線乗ってきた、と答え。
言えば送迎してやったのに、と言ってみると、そんなの頼めないよ、と口を尖らせた。
そりゃそうだな。
じゃあ、と、勇の時のようにとっとと通信切ってもよかったはずなのだが。
情けないことに未練がましく、会話の続きを探してしまう。
もし。
ーーもし、勇に飽きたら、もう一回告白してもいい?
言ってしまったら困った顔をされたので、冗談だと言って笑って見せた。
2割くらいは本気だったのだけど。
やっぱりとっとと切ればよかった。
気まずい空気をなんとか押し退けて、葵が〆に入った。
ーー翔。ごめん。それから、ありがとう。
全く。
何のごめんで、何のありがとうなんだか。
いろいろありそうでわからないが、俺は笑顔で頷いて。
今度こそ、じゃあなと通信を切った。
... 一年近く思い続けても、うまくいかないもんなんだな。恋愛って。
いや。
本当は、もっと早く気づいてはいたんだが。
葵と相性がいいのは、先回りして教えたり守ったりするタイプじゃなくて、一緒に考えて、失敗してもあーだこーだ言いながら並んで歩いていくタイプだって。
というか、並んで闘えるタイプ、かもしれない。
だから、自分が闘える手段なんかも考えたりしたのだがーー
あー、やめやめ。
涙はあの日一人で戻ったアパートに置いてきたはず。
あいつら、どうせ次会ったときはギクシャクしてるんだろうから。
俺がいつも通りしててらやらねーと。
... 本当に、会ったときから世話のやける連中だよな。
胸の痛みを感じつつ、二人を思い浮かべると自然と笑みが浮かんだ。
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