表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界間トラブル解決のバイト?始めました  作者: ぶんのしん
尚、始まりの事件からの最終回です
92/97

三日目 卑怯vs卑怯

 あっという間に囲まれた。

 とっさに翔が張ったバリアに阻まれたコウモリは、こちらに向かって牙を剥いている。

 

 どう動こうかーー


 翔と目を合わせかけた、その瞬間。

 嫌な予感がした。

「上へ!」

 翔の胸元つかんで言う。

 転移。

 ぞわりと胃が浮く落下感に顔をしかめながら下を見れば、眷属のコウモリたちを巻き込んで攻撃が飛んでいた。

 

 すぐに再び転移がなされ、あたしと翔は森の入り口で身を潜める。

「ーーあれ、俺のバリアじゃ防げなかった、と?」

「わかんない。けど、嫌な予感がして。」

 言っているうちに羽音とともに木々をすり抜けて近づいてくる1羽のコウモリ。

 無言で切り裂くがーー見れば、戦いの場に選んだそれなりに平地全体に散らばって飛ぶコウモリたち。

 

 たとえ防音障壁を使っても、出ていけばさすがにどれかのコウモリに気づかれる。

「... えー。こっちもたいがいズルいけど、あっちもだいぶズルくない?」

「ーーま、それならズル勝負をしてやろう。」

 翔が小さく息をついて言う。

「へ?」



 

 先程の攻撃はそれなりに効いているのか、カルマーラは敵の探索を眷属に任せて地面にとどまっていた。

 そこへ、背後に何かが出現する。

 転移すればすぐにいずれかのコウモリが発見するであろう魚雷原。

 敵が転移、攻撃のパターンを行うなら、一番確実なのは至近距離。

 神経を研ぎ澄ませて敵の出現を待ち構えていたカルマーラは、素早く背後の何かに向かって攻撃を放ちながら向き直りーー

「なっ?!」


 そこには、何も居なかった。

 

 と、認識するより前に、横からの攻撃が肩口に直撃し、体勢を崩される。

 それを好機に、更に二撃、三撃。

「ーーおのれぇ... !!」

 踏みとどまったカルマーラはぐるりと視線を巡らせる。


 何故か周囲にはーー自分を囲むように、しかし遠近様々な位置に何かが現れていることを、ソナーが感じているからだろう。

 

 そのうちの一つにあたしたちの姿をとらえたとたん、あたしたちは転移する。

 一瞬、カルマーラを囲んでいた何かは立ち消えーーそれぞれ位置を変えてまた出現する。

 その数、六個ほど。

 そしてその中の1つからーー


「くっ... 」

 運良くあたしたちの姿を目視し、カルマーラは攻撃を避けた。


 デコイ作戦。

 防音障壁を複数出現させ、そのうちの1つの中に転移して攻撃する。

 視野の外を超音波のソナーで検知するカルマーラからは、視界に入らない限りどれがあたしたちかとっさにわからないはず。

 それはコウモリたちも同じ。

 近くにいた者は群がってきたが、多少なら翔がエアガンで攻撃。怯ませておくだけでいい。数秒でまた別の場所に転移するのだから。


「なんという卑怯な戦法... 」

「... 何故か実績をあげればあげるほど俺の評判が落ちてる気がするんだが。」

 いやいや、心から感心してるんですよ。


 空中へと逃れるカルマーラだが、先程のように素早く飛び回り続けるほどの体力はないようだ。

 いかに回復力のある吸血鬼といっても、蓄積されたダメージはそれなりらしい。


 数回デコイ作戦を繰り返し、あのあと3発ほど攻撃が当たった後だった。

 

 一際視線に殺意を感じさせたあと、突如カルマーラは咆哮した。

 その声に応じて、無数にいたコウモリがあたしたちからカルマーラを隠すようにその周囲に集まる。

「なんだ... ?」

 見上げて思わず動きを止めたあたしと翔だがーー


「ーーまさか! 逃げるつもりか!?」

 翔が声をあげるのと同時に、やたらでかいコウモリが群の中から飛び出していきーー





「ぐああぁぁあぁあっ!!」




 

 村の方からいきなり飛んできた一筋の攻撃に、撃ち落とされた。



「よっしゃあ!」

 遠くから聞こえる声と、タッタッタッと軽快に近づいてくる足音。



「ーーきっ... きっさっまァ... !」

 地面に手をついて足音の主を睨むコウモリの声は、やはりカルマーラである。

 



 そして。




「いやー、うっかり出番なくなるところやったわ。」




 翔の度重なる卑怯な戦法により優位に戦えたとはいえけっこう疲れていたところに聞くには、あまりにも能天気なその声。




 こいつは...

 さんざん心配かけて...

 さんざん寝ておいて...




「なんだその気の抜ける物言いはぁー!」

 もともとは自分を助けてくれて捕まった、という事実を一瞬忘れて、あたしは笑顔で駆け寄ってきた勇につい飛び蹴りをかましていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ