1日目 満身創痍です
ゲートを通ってあたしと勇が草の中に倒れ込むと、翔が見えないゲートに両手をかざした。
ぜいぜい肩で息をしながら見つめると、数匹のコウモリが暗闇から一瞬現れてはペチペチ見えない壁にぶつかって跳ね返され、そしてそのうち現れなくなった。
「間に合った... 」
言って、翔もへたりこむ。
「はー、死ぬかと思ったわぁ...っつうか... 今もわりと死にそうやけど... 」
「うわ、すごい出血じゃねーか、よく走れたな。」
「お前が走れゆーたんや! 走ったから心拍数上がって血の巡りもよくなってんのや!」
ドクドク腕から流血しなからツッコミ入れる勇に、多少ひきつつ、あたしは勇の腕に触れた。
「ん?」
「治す... 」
「あ、おおきに... 」
まず止血。腕は両方ともヒビが入っていた。骨も繋げるーーが、クラクラする。
「とりあえず、これで...。 あの、ごめんな... 」
「ん? なんで治して謝るん? てーーあ!」
ぐい、とまだ傷だらけの手で胸ぐら捕まれた。
「そうかお前ーー近くに俺らがいるのに、あんなどぎつい無差別攻撃するやつがあるかっ!」
「ごめ... 」
「それ、もう俺がやった。ちなみに本人何やったかわかってないらしいぞ。」
そっと勇の手をあたしから外しながら、翔が言う。
「無意識て! タチ悪いわ。」
「そんな感じのこともさっき済んだ。とにかく一回帰ろうぜ。」
拠点の玄関に転移して靴を脱ぐと、
「あー、俺シャワー浴びてきていい? 砂ぼこりまみれだし汗だくだし。お前らは?」
翔が首筋を拭いながら言う。
「女子か。」
「お先にどうぞ... 」
それぞれ言った勇とあたしに軽く手を上げて、そのまま浴室に直行する。
「俺も着替えるかな...」
「いや、お前が一番洗った方がいいと思うけど... 」
あたしの声がちゃんと聞こえているのかいないのか、リビングに入ると勇はおもむろにTシャツを脱ぎ出した。
仮にも女子の前で脱ぐなよ、と言おうかとも思ったがーー
あたしは無言で勇の背中に触れた。
「わっ! 痴女かっ!」
びくっと飛び上がって勇が言う。
「だったらお前は露出狂だ。ちょっと、座って。」
勇をソファーまで押していって、座らせる。
背中や腹部に打撲痕。
うわぁ、やっぱりあばら折れてる。肩甲骨にもヒビ。
「骨折って、したことないけどかなり痛いんじゃないの... ? なんでお前、そんな普通に歩いてしゃべってられるんだ?」
言いながら、患部に手をかざす。
「痛いは痛いで? まぁ、なんやろなぁ、アドレナリン出まくっとんのかも。」
骨は繋いだ。内臓... は、大丈夫。他に骨折はないかな... ?
あ、またクラクラする。
頭が重くて、こつんと勇の肩に寄りかかった。
「なっ... おい、葵?」
痛々しいから、出来たら腕の傷も治したい。これ、このままシャワー浴びたら痛そうだし。
手のひらをゆるゆると腕の方へ動かす。
「おい、なんか、まずいて、これは... おい。... おーい!」
なんか言ってる勇の声が、遠くに聞こえる。
だめだ、まだ治ってないのに。
でもーーすごく眠くて、瞼がーー