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異世界間トラブル解決のバイト?始めました  作者: ぶんのしん
尚、始まりの事件からの最終回です
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二日目 協力連携プレイへの道

 聖水をとりあえず山ほど買って、あたしたちは村を出発した。


 

 座標がわからなくても、行ったことのある場所と目視できる範囲なら転移できるとのことなので、あたしたちは少し裏技で進む。

 街道から外れ、木陰に身を潜めてから見える範囲で転移。転移。転移。

 

 しかし、無限に出来るわけではない。

 ゲームのようにHP・MPが確認できるわけではないが、どうやらMPみたいなものは存在するらしい。

 というのは、あたしが以前能力を暴走させたあとに治癒能力も使ったら気を失うように寝てしまったから。

 つまり、限界まで能力を使うと、能力が使えなくなるだけでなくしばらく自分で動くことすらできなくなる恐れあり。

 能力を手に入れてからかれこれ一年近くなので、さすがに自分がどのくらい能力を使い続けられるかや、MPらしきものの残りが少ないときの感覚などはわかるようになっている。

 

 なので、半分くらい余力を残して転移を使いショートカット。

 そのあとは徒歩で進み、MP回復したらまた半分くらい使って転移を繰り返す作戦だ。


「ところで、例の吸血鬼の攻略法だけど。」

 徒歩になってすぐ、翔が切り出した。


「... うん。」

 無意識に左手首を触って、あたしは応える。


「お前の攻撃、読まれてるみたいだったって言ってたよな。」

「うん、そんな感じだった... 」

 苦い思いがよみがえる。

 隠れているつもりが、いる場所がばれるとか。 


「けど、勇がガラス越しに突っ込んだときは、不意をつけてたよな。あと、俺の転移も。」

「うん? まぁ、確かに。」

「それと、校舎に入ってからベランダづたいに逃げてた間は、すぐには見つからなかったんだよな?」

「... うん、教室一つ一つ覗いてる感じだった。と、思う。」

 あたしは思い出しながら言う。


「つまり、敵の能力は、予知とかみたいなどうしようもないもんじゃなく、ちゃんと不意を突くことができるものって訳だ。」


「なるほど。ーーでも、じゃあどんなものだと思う?」

「たぶんーー超音波ソナー。」

 翔はわりとあっさりと持論を述べた。

「ソナー?」

「コウモリが持ってるやつ。ほら、洞窟とかに住んでるだろ? コウモリって視覚じゃなくて、超音波出して反響で周囲の物を察知するんだ。」

「ああ、確かに聞いたことある。ーーそっか、吸血鬼だから。」

「そう。コウモリの特性を備えてるんだと思う。」


 だから、隔絶されてない同一空間にいるときは動きを読まれた。

 けど、ガラス越しとか、しっかり遮蔽されていると読まれなった。


「なるほどね... じゃあ奴をガラスの箱とかに閉じ込めれば!」

 あたしはグッと拳を握る。

「ばーか。と、言いたいところだが、実は俺の考えと似てる。」

「マジで? ガラスの箱なんてどうやって用意するの?」

「... お前が言うか、それを。」

 翔は疲れたような声を出した。

 えー。だって。

 

 と。右上空から気配を感じて見上げると、口をカッと開いて落ちてくるヘビ。

 だからでかいって。アナコンダかお前は。気候は熱帯じゃないくせに。

 どうでもいいことを考えながら右手を振ると、衝撃波でヘビは上顎と下顎のところから二枚に切り裂かれる。

 無意識に攻撃を放つととりあえず衝撃波が出るのはただの癖だったりする。

 そのまま落ちてくるヘビの残骸は、翔がバリアではじく。

 返り血を浴びるのが嫌なのだろう。


「ーーで、なんだっけ?」

 ヘビ残骸から目をそらしてなおげんなりしている翔に尋ねる。

「あ? ーーああ、だから、超音波を防げばいいなら、俺が防ぐ。」

「へ? ーーああ!」

 あっさりした物言いにきょとんとして数秒、思い出した。

 

 防音障壁。


 以前翔は、音だけ遮断するバリアを作って見せた。

 確かにアレならば、超音波も防げるのだろう。

 ちなみに、視覚的に遮るものはできないのかそのとき聞いた覚えがある。

 透明人間みたいになれるのは翔の技術では難しく、視覚を遮るイコールお互い見えないとか真っ暗ドームを作っちゃうとか、なんかそんな話だった。


「え... じゃあ、超音波の先読み、防げるの?」

 なんだか拍子抜けだ。

「ま、完全に封じられるわけじゃないけど。そこらへんは工夫するとして、もう一つは転移だ。転移も、予備動作なくある程度自由に動けるから、読まれることはない。」

「... 翔、あいつ対策にすげーいい能力だな。ていうか、よく考えるといろいろズルいよな、その能力。」

「ただ、俺には攻撃手段がない。」

 翔は、表情を固くして言った。

「うん... 」

 その表情の奥の気迫に、あたしは言葉に詰まる。


「... 本当は、俺だって闘える能力も欲しかった。」


 初めて聞いた。

 そういうこと、翔は言ったことなかった。

 なかったけど、うすうす気づいてはいた。

 あたしと勇の、どちらかと言うと力押しとか本能的な戦闘形態に、心配してくれているばかりだったから。ーー心配そうなそぶりは見せなかったけど、無茶するとしっかりお説教があったし。


 何と言ったらいいかわからず、しばらく無言で歩くと。


「... だから。」

 翔は言った。


「うん?」


「だから、お前の攻撃能力を俺に使わせてくれ。俺はお前の足になるから。防音障壁で隙を作って、俺の転移で動いて、お前が攻撃する。連携プレイ、今から練習するぞ。」


「へっ?」


 えっ? 連携?? それってどんな感じですか... ?

 

 


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