エピローグ代わりの大学生カップルの会話
「結局、何だったのかしらね、あの子達... 」
ロケット打ち上げから数日後。
UFO研究会の部室で、ゆきのはドアを見つめて言った。
あの日突然ドアを開けてやって来た彼ら。
一緒にいた期間などほんの数日なのに、あの数日はやたら濃い時間だった。
濃すぎて、短すぎて、夢だったのかとすら思う。あの、異星人との出会いまで含めて。
自分一人の記憶だったら、本当に夢か幻だったと信じてしまいそうだ。だが。
「在籍してなかったんだもんな... 」
自分と同じように、椅子に座ってドアを見つめるのは、一度は喧嘩別れしたはずの彼氏で、あの濃い数日間を一緒に過ごした男だ。
あの日、何も言わずに先に帰った3人にゆきのは憤慨していたが、ともゆきは3人が疲れて早く休みたいのだろうととりなした。
ゆきのも、翌日にはガガガが戻ってきていないか確かめるために部室に訪れるだろう、そのときに一言文句を言ってやろうと思って、その日は帰った。
しかし、翌日も、その翌日も、あの3人は部室に現れなかった。
三日め、しびれを切らしたゆきのは経済学部へ乗り込みーーあの3人のことを知る学生が一人もいないこと、そして、彼らが在籍すらしていないことを突き止める。
「ケータイも修理中だとか言って持ってなかったし、下宿先も実家も何も聞いてないし、もうお手上げだわ。入会届け書かせちゃえばよかった。」
そうすれば、連絡先を書く欄があったのだ。しかし。
「在籍してないニセ学生だったんじゃ、本当の連絡先なんて書かなかったんじゃない?」
あっさりとともゆきに言われる。
「... 突然現れてさ。私とガガガさんを引き合わせてくれてさ。ロケット作るお金まで出してくれてさ。意味わかんない... 」
「ワームホールが実在するなら... 」
ぼやくゆきのに、ともゆきは一見関係ない言葉を口にした。
「え?」
「ワームホールが実在するなら、タイムリープも理論上可能だと言われてる。彼らも、ガガガさんとは別のタイプの、ストレンジャーだったのかも。未来人とか、異世界人とか。」
「えー? 普通の子達に見えたけどなぁ。普通のーー三角関係の。」
「それって普通なの?」
苦笑したともゆきに、ゆきのは恋バナ女子の顔になって向き合った。
「ね、結局葵ちゃんはどっちが好きなんだと思う?」
「ええ? 知らないよ、僕は葵ちゃんとそんなに話してないし。まぁ... 勇君はいい男だったよ。ロケット工学の専門ってわけでもなさそうなのにいろいろ知ってて、機材の使い方も勘が良くて。話しやすかったし。」
「私は翔くんがおすすめだけどなぁ。優しいし、ジェントルマンだし。でも、ちょっと胡散臭いとこあるからなぁ。」
「... また、いつか会えるといいね。」
言われてーーゆきのはまたドアの方を見て、寂しげに頷いた。




