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異世界間トラブル解決のバイト?始めました  作者: ぶんのしん
尚、被疑者は異世界人と見られています
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1日目 捜査会議を始めます

 最初の失踪は、四月九日月曜日。

 一人目は市内女子高に通う十七歳で、その日は彼女が三年生に進級した新学期初日だった。

 始業式のあと、友人数人とランチを食べ、カラオケやゲームセンターなどで遊び、午後六時には帰宅。

 自宅で普段と変わらず過ごし、就寝。

 しかし、翌朝には家から消えていた。

 おそらく、部屋着のまま。

 靴はなくなっていたが、財布やケータイは部屋に置いたままだった。

 二人目はやはり高校生で、十六歳の二年生。

 学校は違うが、その日の流れはほとんど一緒。

 普段通り寝たはずなのに朝になったらいなかったのも同じ。

 三人目は、二日後の四月十一日水曜日で、十八歳専門学校生。

 独り暮らしのため帰宅時間等は不明だが、翌日授業に現れなかったことを心配した友人が連絡するも連絡が取れず、翌日学校に相談。学校から親に確認を取るが、本人との連絡はつかず、さらにその翌日に親がアパートを訪ねたが娘の姿はなかった。

 というわけで発覚は前後するが、四人目は四月十三日金曜日、市内在住大学生二十歳。

 地元の友人数人と女子会のあと、深夜帰宅... した、形跡はあるが、すぐまた出ていったかと思われ、そのまま帰宅せず。

 この捜索願いが出たあたりで、じーさんたちはゲートとの関連を疑い始めたらしい。

 そして五人目が、一昨日四月十四日土曜日。

 十八歳大学生、アルバイトのあと友人と夕食をとり帰宅するが、やはり朝にはいなかった。

 共通点は、普段通りの1日のあと、深夜にいなくなったと思われるところ。

「てゆーかさぁ、この資料はどういうものなんだろうな? Y県警って書いてあるけど...」

「せやから、警察に出された捜索願いの資料やろ?」

 俺の呟きに勇が応じる。

「じーさんたちは警察とつながってるのかな? 大人になると信じてくれないとか、公にはこの世界に干渉できないとか言ってなかった?」

「公には繋がってへんけど裏で繋がってるとか、あとは不正アクセスとかやろか。」

「翔はどう思う?」

 振った俺に目も向けずに、

「知らね。解決すんのに関係ないし。」

「つめたっ。... まだ怒ってんの?」

「怒ってはいないよ。けど... ちょっとほっといてくれないかな... 」

 はぁぁ、とため息をつく。

「だってさー... 」

 いつもみたいにバシッと苦情を言われるならともかく、静かに不機嫌になられると気まずい。

「ほっとけ言うてんねんからしばらくほっといたれや。」

「そんなにまずかったかなぁ?」

「女子トイレやからなぁ... 」

「うるさい! それを忘れたいんだよ!」

 結局、翔は勇に怒鳴った。

 さっき俺が女だって話からルームシェアで納得したあと、翔が気づいちゃったのだ。翔が俺を迎えにきたとき瞬間移動してきたトイレが、女子トイレだってことに。

 気づいてショックを受けて、それからしばらく不機嫌な翔である。

「そんなに気にするとは思ってなくて... ごめんな。」

 少し身を乗り出して、俺は再度謝った。

「... 葵にデリカシーを求めるのは難しいってさっきだいぶわかったから、ほんとにもういいって。これから気をつけてくれれば。」

「うわー、毒舌出たー。いや、けど、はい、気を付けます... 」

「しかし、なんちゅーか、やっぱりこれも共通点なんかなぁ?」

 怒鳴られたときはとばっちりやわーとかなんとかぶつぶつ言ってた勇が、資料を眺めながら話を本題に戻した。

 資料には写真がついていた。

 その写真、五枚とも、

「綺麗な人だよなー... 」

 某アイドルグループ所属とか言われても納得な感じ。

「美女の血か... もう血だけ抜かれてもうてるとかやないといいけど... 」

「縁起でもないこと言うなよ。とりあえず最善を尽くそう。まずは、全員の失踪前の足取りを詳しく調べて他の共通点を探さなくちゃな。」

 気を取り直すように、翔は資料を見直す。

「わかってるのは自宅と学校だよな。バイト先とか一緒にいた友達とかはそこで聞くしかないか。」

 言って、俺は外を見る。

 何だかんだでもう夕方だ。

「今からだと... 行くなら自宅かな。家族に聞くなら、四人目の地元友人のことと、五人目のアルバイト先か。これは葵の仕事だな。」

「えっ、なんで?」

 さらりと振られてびっくりする。

「突然自宅に知らない男が失踪した娘のことわざわざ聞きに来るって、なんか誤解を招きそうだろ。せっかく同世代女子がいるんだから、大学の友達が心配して聞きに来ましたって体で行けよ。」

「そらそうやなー。納得やわー。」

「え、だ、大学生の女の人役、全く自信がないんですけど... 」

「確かに今のままだと俺も不安だけど... 大丈夫、特訓してやるから。」

 翔は急ににっこりと胡散臭い笑顔になって、俺の肩に手を置いた。

「とりあえず、わ・た・し、って言ってみようか。」

 ... 後ろで勇がぶぶっと吹き出してた。

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