日付が変わって六日目 あたし誘拐事件
あたしは、むくりと布団から起き上がった。
隣の部屋の音に耳を澄ます。
物音はしない。二人とも寝ているようだ。
誰にも気づかれないように
頭に直接声が響く。
誰にも気づかれてはいけない。
そっとドアを開けると、二人分の寝ている人間の影が見える。
起こさないように、そっと歩く。
靴を履き、外に出て、ドアを閉める音にも気をつけて。
周囲に人がいないか確認して、あたしはエントランスからも出た。
右へ
声に導かれ、あたしはそれを探す。
左へ
細い路地へ入って、数歩。
マンホールの前で、あたしは足を止めた。
がこっ
鈍い音がして、そして足元のマンホールが高く舞い上がる。
その穴に向かって進みだしそうになる足を、あたしは必死で止めた。
姿を、現せっ...
数秒耐えたとき、マンホールから現れたのはーー
お前らかよっ!
あたしは胸中で毒づく。
それはコウモリの群れだった。
上を見れば、マンホールの蓋を持ち上げて飛んでいるのもコウモリだった。
あいつら、すげーパワーだな。改めてこえーわ。
しかし、このコウモリ捕まえたところで失踪者はどこだとか意志疎通できるんだろうか。いや、無理だろ。コウモリだし。
翔も同じ考えのようだ。
「犯人」が現れたら空間転移であたしと犯人の間に割って入る算段だったのだから。
このタイミングで来ないと言うことは、このまま連れ去られてみて潜入コースだな。
ちょっとトラウマだが、あたしはコウモリのかたまりに身を投じーー
バシュッ
あたしの横を何かがすり抜けて、コウモリが何匹か切り裂かれた。
背後で何やら揉める気配。
... ゆーうー。
打ち合わせと違うことしちゃダメだろーが、全く。
ちょっとあたしの腕かすったし!
ま、これで、初日のアレをチャラにしてもらおう。
不思議と恐怖感が掻き消えて、そしてあたしはコウモリたちと共に、マンホールの穴の中へ入った。
ぐわん、とどこかで聞いた音。
マンホールの蓋が閉まる音だったようだ。
下まで降りると、人影が見えた。
なんだよ、人間タイプもいたのかよ、と思ったがもう遅い。
しかも、あたしの姿を確認すると、ばさりという羽音をたててーーひときわでかいコウモリに変身した。
あー、はいはい。
本当にそういう感じなんですね、覚悟を決めましたよ。
コウモリの群れに身を任せ、あたしは暗闇の中を運ばれていった。




