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異世界間トラブル解決のバイト?始めました  作者: ぶんのしん
尚、被疑者は異世界人と見られています
18/97

四日目 状態異常感知

 彼女が家に入っていくのを見届けて、あたしと翔は息をついた。

「こっちは家把握できた。そっちはどうだ?」

 通信機越しに、翔は勇に尋ねる。

「いやー、特にないわぁ。一組プリクラ撮っていったけど、みんな平凡な顔やったし。」

「... もう少し、言葉は選んだ方がいいと思うぞ?」

「え、選んだ方なんやけど...」

 そんなやりとりを聞きながら、あたしはぐっと伸びをした。

 尾行ってなんだか肩凝ったなぁ。

 電車乗って三駅ほどだったけど、帰宅ラッシュ時なのかわりと混んでたし。

「さて、じゃあどうしようか?」

 肩のストレッチしながら訊く。

「うん... 葵の勘が当たってるとして、ここで動きがあるなら深夜のはずだけど、かといって油断してて目を離したすきに失踪したら困るからなぁ。」

「当たってるんかなぁ、その勘は... 」

 勇が困ったような表情で言った。

 まぁ... 確かに、我ながら確証ないからな。

「ああ、それなら。」

 翔が思い出したように言う。

「葵、能力のところ、最近見た?」

「え? あー、腕輪の? いや全然見てないけど。」

「今見てみろよ。」

 言われるがまま、能力値のアイコンに触れると。


 ・ [生体干渉] ー [生体治癒]

         ー [状態異常感知]


 ・ [物理干渉] ー [エネルギー発現]

         ー [運動能力助成]


 ・ [????]


「あ! 増えてる!」

 あたしは声を上げた。

 てゆーか、[????]って何だ? 表示の意味あんのか?

「やっぱり。ーーこれじゃないか? 状態異常感知。」

「何なん?」

 翔があたしの画面を指差すが、通信機越しの勇からは見えないわけで。

「じーさんが、能力はレベルアップしたり派生したりするって言ってただろ。葵の生体干渉、治癒だけじゃなくて状態異常感知ってのが増えてる。これで、プリクラ撮ったときに状態異常が起きたのを感知できたんじゃないかな。」

「つまり、勘やなくて、能力で感知したっちゅうんか。」

「たぶんな。」

「じゃあ...今夜何か起こる可能性は、けっこう高い? 」

 言って、あたしは今更ながらドキドキしてきた。

「そうだな。でも、閉店まではプリクラ機の方も放っておくわけにもいかないし... 」

「ほな、俺は引き続き十時までここで見張っとくわ。」

 通信機の向こうから勇。

 今の時刻は八時。

「うん、頼む。俺らは、今のうちに交代で飯食ってこようか。さっきの駅前、それなりに飯屋くらいあったよな。葵、歩いていける?」



 というわけで。

 あたしも翔も夕飯食べて、勇は今日もファストフード店で食べたそうで、十時に翔が勇を迎えに行って合流。

 二人で張り込む体制でローテ組んで、一人ずつ交代で仮眠を取ることにした。

 三時間交代で最初にあたしと勇、そのあと翔と勇で、最後にあたしと翔。翔は最初に抜けるときについでにバリアの張り直しもしてくるとのこと。

 勇と二人での最初の三時間は、何も起こらずに過ぎた。

 深夜一時過ぎ。

 終電もそろそろ終わって、いよいよ人気がなくなる。

 これからが一番怪しい時間だろう。

「今大丈夫そう?」

 通信機の向こうで翔が尋ねる。

「うん、異常なし。」

 彼女の家を確認し、あたしは答える。

「まわりも人おらんで。」

「了解。」

 言いながら、翔が空間転移してきた。

「じゃ、一回葵送ってくよ。」

「うん、ありがと。」

 一番怪しい時間帯なのはわかっていた。

 だけど、送ってもらって翔が戻るまで数秒だし、数秒くらい大丈夫だろうと思ってーー

 翔が転移して、目の前の景色がくらい路地から明るい家の中に変わったとたん。

 繋ぎっぱなしにしていた翔の通信機から勇の声が響いた。

「あかん、出てきた!」

「え!?」

 あたしが聞き返したときには、既に翔がまた転移していた。

 翔の服をつかんだままだったあたしも一緒だ。

 あたしたちが張り込んでいたのは、彼女の家の入り口が見える、はす向かいの小さな公園で、彼女はこちらを背にして家を離れていくところだった。

 勇は既に彼女を追いかけ始めていた。

 あまり思いっきり追いかけてしまっても、気づかれたらまずいのかーー?

 少し迷いを感じながら、あたしも、翔とともに勇を追う。

 歩き始めて最初の角を、彼女は曲がった。

 勇はその角まで行くと、一回止まってそっとその先を覗いた。

 ぐわん、という音が聞こえた。

「なーー!」

 勇が角を飛び出す。

「どうした!?」

 追い付いた翔が尋ねたとき。

「まじかよ...」

 ほぼ同時に追い付いていたあたしは呆然と言った。

 

 そこには、誰も居なかった。


 




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