三日目 張り込みをしよう
「撮った意味あったんやろか... 」
「男が撮っても何も起こらないってことはわかったんじゃん?」
ぼやく勇に、あたしはニヤニヤしながら言った。
「笑うな。ちゅーか、見てへんで返せ。」
勇はあたしからプリクラを奪い取って、無造作に二つ折りにする。
「しかし... これからどうするかなぁ... 」
翔は横目でプリクラ機を見てため息をついた。
ここは、プリクラ機のあるゲームコーナーに隣接する方のファストフード店。プリクラ機が一番見える席を陣取ってみた。
店長さんのおかしな態度もあり、あのプリクラ機は怪しい。
けど、証拠もないし、店長さんが何も教えてくれない以上調べられることも、もうない。
「誰か怪しい奴が現れないか、あと、誰か女の人が使ったときに変なことがないか、見張るくらいかなぁ... 」
同じくため息混じりに言うあたし。
「そんなとこだよなぁ... 」
「... 退屈やな。」
「だなぁ... 」
今度は三人でため息。
昨日までの二日間が怒涛だったこともあり、この動きのない時間、暇すぎる。
ときどき、子ども連れの女の人や、単独おじさんとかがゲームコーナーを訪れるが、プリクラに近づく人はいない。
「平日の昼間だもんねー... 」
「せやなー... 」
そのままファストフードで昼食。
それからまたドリンクでうだうだ。
空いてるとはいえ、邪魔くさい客だと思われてるだろうなー。
やっと小学生が道を歩いていく姿が見えるようになり、男の子の集団がゲームコーナーに入ってきたりもし。
途中飽きてちょっとゲームしてきてみたりもして、テーブルの上にクレーンゲームの戦利品がちょこん。
そして、ようやく高校生の姿が見え始めた。
しかし。
そもそもプリクラ撮る人があんまりいなかった。
新学期始まって一週間以上がたち、もう入学進級記念モードが終わっちゃったのかも知れない。
夕飯も同じファストフード店で食べて閉店まで居座って、夜十時までに百円プリクラを撮ったのは女の子二組。
けれど、特に異変は起こらなかった。
ゲームコーナーのシャッターが閉まるのを、あたしたちは苦い気持ちで見つめた。
今日は三日目。
リミットは一週間。
明日で折り返しだ。
口数少なく、今日は三人でゲートのある河川敷へ向かい、翔が作業する間辺りを警戒。
いっそここで何か動きがあれば、とも思ったのだが、今日もバリアの張り直しは問題なく終わった。
無力感いっぱいのまま、しかし意外と体はくたびれていて、あたしたちはそう遅くならずに眠った。