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異世界間トラブル解決のバイト?始めました  作者: ぶんのしん
尚、被疑者は異世界人と見られています
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三日目 百円プリクラやってみよう

 朝食を済ませるとソッコーであたしたちは駅ビル一階にやって来た。

 駅ビルのゲームコーナーなので、開店時刻は十時とのことだった。

 え? 今? ... 八時。

 同じく駅ビル一階のファストフード店は十時からだったので、仕方なく向かいの別のファストフード店に入る。二十四時間営業助かるわー。

 いや、別に一回帰ってもいいけど、それはなんかむなしくて。

 飲み物だけ注文して席に座り、

「で、お店開いたら開いたで、どうしよっか?」

 実は、ろくに決めないで来たんだったりする。

「とりあえず、店の人にプリクラ機のことを聞いてみようと思う。あとは、何か起こらないか見張る... くらいかな。」

 言って、翔は眉間にしわを寄せる。

 これと言った名案が思い付かなくて悔しいのだろう。

 うーん。

「とりあえず、プリクラ撮ってみちゃうってのは?」

 何か普通と違うことが起こるかも知れないし、と思って言ってみると。

「アホかっ!」

「自分が次の被害者になるつもりかよ?」

 勇と、そして翔まで血相を変えて声をあげた。

 びっくりして、それから店内を伺う。

 幸い、他に人がいなかったのと店員さんからは死角だったので、一応変な注目は浴びていない様子。

「ーーなんだよ二人とも、大袈裟な。狙われるのは綺麗な女の人だろー。大丈夫だって。」

 パタパタと手を動かしてあたしは言う。

「... 自覚ないのか。」

 呆れ顔の翔。

「え。まぁ、女の子な自覚は平均点以下って自覚ならあるけど。」

「あー、いや、えーとな... 」

「平均点以下でも女の自覚があるんやったらそんなアホなこと言うな! 万が一ってことがあるやろ!」

「あ、わかった、わかったから声を小さくっ。」

 勢い込んで立ち上がった勇に軽くびびってあたしは引いた。

 あんまり騒ぐとさすがに店員さんが見に来そう。 

「まったく... 」

 眉をつり上げたままの勇がどすんと座り、あたしはなんだか気まずくジュースをすする。

 めんどくせーなー、女の子扱い。

 と、ちょっと拗ねていると。

「... ま、撮ってみるなら男二人でだな。」

 翔がどうでも良さそうに言い、勇が「え?」と顔をひきつらせた。



 問題のプリクラは、他に並ぶ二機と比べて少し古いタイプのようだった。補正機能とかついてないやつ。

 そのぶん、お値段百円。

 確かに安い。

 それ以外は、特に変わったところはないように見える。

「すみません、入り口のところの百円のプリクラ機についてうかがいたいんですが。」

 開店早々、翔が店員さんに話しかける。

「はい?」

 怪訝そうな三十才くらいのお兄さん。

「あれ、いつ頃からここに置いてあるんですか?」

「前からですよ。」

 即答で、しかしだいぶ雑な返事をされて、あたしたちは顔を見合わせる。

 たった二週間前くらいを「前から」と言うだろうか。

 邑田さんの証言が間違いだったのかな?と考えていると。

 横で景品を運ぼうとしていた少し若いお兄さんが、

「え、てんちょー、あれ置いたの最近だったじゃないすか。先々週くらいに突然だったでしょ。」

と、口を挟んだ。

「... そうだったか? 知らないな。」

「知らないって... てんちょーが知らなかったら誰が置くんですか、嫌だなぁボケちゃって。」

 言いながら、若いお兄さんは景品の箱を持ってクレーンゲームの方へ行ってしまう。

「ーーじゃあ、置かれたのは二週間くらい前ということですか?」

「そうなのかな... 前からあったと思いますけどね。知りませんね... 」

 翔の問いかけに、なんだかぼんやりした目で答えるこちらのお兄さんのネームプレートには、確かに「店長」の文字。

 しらばっくれてるのか本当に忘れているのか知らないが、様子がおかしい気がする。

 これ以上聞いても無駄だと判断したようで、翔は礼を言って店長に背を向けた。

 そのまま若いお兄さんの方へ近づき、

「すみません、先々週にあのプリクラ機が設置されたとき、その場にいらしたんですか?」

「いやぁ、いなかったっす。前の日の昼間のシフトん時まではなかったのに、その日開店業務で来たらいつのまにか増えてて、あれー?って思ったの覚えてるから。」

 クレーンゲームの景品を並べ直しながらお兄さんは言う。

「店長さんは普段から物忘れがひどい方ですか?」

 声を潜めて更に尋ねるが、

「そんなことないっすけどね。今のはなんだか変でしたけど。二日酔いでもしてんのかなぁ。」

 お兄さんの方は作業を続けながら普通のトーンで答える。

「そうですか、お仕事中ありがとうございました。」

 ニコリと翔は会釈して、いよいよ百円プリクラへ近づいた。

 平日十時開店間際。

 まだ他に客はいない。

 さて...

「まぁ... 撮ってみる?」

「大勢でならともかくなぁ... 大の男が二人でプリクラっておかしない?」

 促す翔と渋る勇。

「別に誰かに配るわけでもねぇし... 嫌なら一人で撮るけど。」

「いや、なんかそれは申し訳ないわ。やります、やりますよー。あ、葵、お前は近づくなよ。」

 ごねたり釘刺したり忙しい男だな。

「はいはい...」

 ーー出来上がったプリクラは、男二人が無表情棒立ちというシュールさ以外、なんの変鉄もないものだった。

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