二日目 夕御飯と夜散歩
落ち合って、夕飯は再度かおりさんのファミレス。失踪前まで一緒だったバイト仲間さんを探すのである。
メニューを見ながら簡単にお互いの報告を済ませるが、やはり二人の方もこれと言って手がかりになりそうな情報はなかったようだった。
「直前の日にはなんもないんかなぁ…もっと前まで調べなあかんのやろか...」
「だとするときりがないな。一週間しか時間がないし、それに数日前くらいでも変なことがあったんだったら誰かのところで情報出てきてもいい気がするし... 」
翔が顔をしかめる。
「あとはほんとの直前、て言うか... 夜に家を出たところとか、出て行った後のことを見てた人がいないかとか... ?」
「ちゅーことは近所の聞き込みか。おるかなぁ目撃者...」
あたしの案に、勇は天井を仰ぐ。
「まぁ、とりあえず。注文決まった?」
と、翔がピンポン押してーー「かおりさんの元同級生三人組」バージョンの猿芝居をする。と。
「同級生って... なのに、知らないの?」
「え? 何が? あ、まさかもうやめちゃったとか?」
能天気に首をかしげるあたし。
「そうじゃなくて。行方不明なのよ... 」
声をひそめて言われて、まずは戸惑って見せる。
そこへ、
「ーー何かあったんですか?」
真剣な表情で身を乗り出す翔。
これでバトンタッチだな。
あたしは勇と一緒に空気となって、成り行きを見守った。
と、言うわけで。
部屋に戻ると、翔は駅で見かけてもらってきたという地図を広げた。
駅周辺の主なお店とかが書いてある、商業促進用のB4くらいの紙で、今まで聞けた四人の足取りを色分けされた線で書いていく。仕事ぶりが几帳面。
「翔、A型?」
「え? ああ、そうだけど。」
おお、血液型診断当てはまったよ。
「丁寧に書くねぇ。こうして見ると分かりやすいなー。全員寄ってるのは駅ビルか。」
「まぁ、通学で駅つかってりゃあ駅ビルはよう行くわなぁ。買い物するんも、暇潰しするんも... 」
「確かにねー、いろいろあるもんね。一番上がレストラン街?」
「そう。で、一階がファストフード店とゲームコーナー。」
「じゃあ安いプリクラってここかな?」
あたしが言うと。
「安い?」
翔が手を止めて聞き返した。
「うん? 誰だか言ってたじゃん? 安いプリクラ見つけて撮ったって。」
「勇、今日二人で聞いた人も、そんなこと言ってたよな?」
「せやな。ちゅーか、そういやみんなプリクラ撮ったって言うてへんかった?」
確かに、
「言ってたけど... 新学期とか暇潰しとかよく撮るし、あんまり気にしてなかった、けど... 」
ひょっとして、それ共通点?
「みんな同じ場所なら、そこに何かあるかもしれないな。じゃああとまだ聞き込み終わってないとこ、あーっと、まなみさんの女子会メンバー、幼稚園の近くに住むむらたえりさん、... 家にいるかなぁ...」
翔が手帳を見ながらため息。
大人になると帰宅時刻とか読めなくて困る。
中学生だったらだいたい夕飯時には家にいるのにね。
いや、習い事とか塾とかあるとそうでもないかー。
「女子会したら、プリクラくらい撮ってそうだねー。」
「ん、じゃ葵、幼稚園の近くでむらたさんって家探して、聞いてみてて。」
さらりと言う翔。
「え。なんで丸投げ?」
「俺そろそろバリア張り直しに行こうと思って。」
「いやいや、暗くなってから、幼稚園の近くって情報だけでむらたさんち探すのわりと大変じゃね? それあたし一人?」
「女の子一人じゃ物騒だから勇と一緒に。」
「お、おう... 」
女の子とか言われるのはなんかこそばゆいが、人員確保は助かる。
「お前は一人で大丈夫なん? なんやそっちの方が危ないときは危ないんとちゃう?」
「あ、確かに。」
「翔の方が完全に守ったらな指数も高いんやけど。」
「なんだその指数は... 」
いや、まぁ、確かにあたしは守ってあげなきゃ指数低いだろうけど。
「まだバリアきれてないし、そもそも何かあったら逃げるから大丈夫。はい、靴はいてつかまる。幼稚園まで送るから。」
「翔は本当に同じ年なんだろーか... 」
勇は右側、あたしは左側と、表札を見ながら歩きつつ呟く。
「はは。なんや老成しとるよなぁ。最初はやること自体しぶっとったのに。」
「あー... まぁ、やるって決めたの、あたしらだけじゃ危なっかしいからとか言ってたもんなー。」
「ときどき口うるさいけど、ええやつやんなー。あっち、何もないとええけど。」
「心配?」
と、尋ねながら、守ったらな指数がリフレインし。
「ーーてゆーか、まさか、ええと何て言うか、勇、あたしより翔の方行きたかった?」
「はぁ? どっちとも行きたいとか行きたくないとかないわ、アホか。単に、お前は何に襲われても返り討ちやろうけど、翔は戦闘能力がないやろ。」
なんだ、そういうのじゃないのか。
「なーんだ。」
「? なんやねん。」
「いや、別に。」
「どちらかっちゅーと、もし命知らずな痴漢が出よったら俺が守るのは痴漢の方の命やろな。」
「お前、ひとを何だと思ってるんだ...」
「パニくったらえげつない無差別攻撃する女。」
どきっぱり言われて、
「... その節は誠に申し訳ございません... 」
くそぅ...
ん?
話を変えがてら、あたしはある表札を指差した。
「これ、何て読んだろ?」
邑田
読めない。
「... ほほー。葵。」
「うん?」
「俺と来といてよかったなぁ。」
「え、なに?」
「これがむらたさんちやわ。」




