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最強チートがデスゲームに巻き込まれたら

作者: 相野仁
掲載日:2016/07/20

 草薙良は本物のマジシャンである。

 テレビのショーに出ている自称超能力者や霊能力者とは違い、あまりにも強すぎるため陽の光を浴びるができない宿命を背負っていた。


「あまりにも強すぎる力は不和をもたらす。無敵の強さを誇るお前は人知れず世界の平和を守れ」


 それが祖父であり師でもあった男から彼が教え聞かされてきたことである。

 彼の祖父母、父母は単身で世界を滅ぼしうる絶対強者として生まれてきた佑亮を育てるのに細心の注意を払った。

 その甲斐あってか、彼はまっとうにその日を精いっぱい生きようとする人々を愛しく思う青年へと成長したのだ。

 ある日、彼は本来の姿を知らない友人にある日、VRMMOゲームに誘われる。


「そんなものがあるのか」


 興味深げにグレーの瞳を光らせた彼に対して、友人は苦笑して肩をすくめた。


「やれやれ今時VRゲームも知らないとはな。お前普段何をしているんだ?」


 その問いに対して良は沈黙を守らなければならない。


「ちょっとある地域の過激武装集団を全滅させて、紛争を終わらせてきた」


「偶然復活しようとする大魔王と遭遇したから木端微塵にして地獄に追放しておいた」


 などと言えるはずがないのだから。

 彼は友達に言われるがままVR機を購入して自宅でセットする。

 アナウンスにしたがってキャラメイクをした後ゲームの世界にログインした。

 その世界では太陽が明るく大地を照らし、土の匂いや花の香りが彼の感覚をくすぐる。


(これはすごいな。本当に存在しているかのようだ)


 高度な仮想現実は魔法と同じだと聞いた覚えがあったが、たしかにこれは幻覚魔法のようだ。

 もっとも良に幻覚魔法を効かせられる存在などこの世にいないはずであるが。

 

「おーい」


 興味深げに街の入口でこの世界をきょろきょろ見回す銀髪壮年のおじさん戦士のところへ、赤い髪青目の若者が寄ってくる。


「俺だよ、俺」


 良が人物看破魔法を使えばすぐに友人だと気づく。


「ああ、こちらでの名前はナギリョーだ」


「いくら何でもそのまますぎないか?」


 友人は端正な顔をしかめる。

 本名を連想できそうな名前は避けた方がよいと注意しておいてこれなのだから、友人がこのような反応を示すのは理解できた。

 言いたいことは分かるのだがこと良に関して言えば本人の強さがそのまま対策になる。

 たとえば彼の個人情報を悪用しようとした者はそのことと己にとって重要な記憶を忘れてしまうカウンターマジックなどがあるのだ。

 一体誰が彼の事を害することができるというのか。

 ただ、それを知らない友人の心配は純粋な好意である。

 それを無下にするつもりはなかった為、もっともらしい言い訳を述べた。

 

「意外と難しいと思うぞ。なぎ、りょーという組み合わせがどれだけあると思う?」


「危機感のない奴だなあ」


 友人は呆れながらもそれ以上は食い下がろうとしなかった。

 あるいは良がこの手のことに疎いと知っているため、説明することに限界を感じたのかもしれない。


「まあいいや。とりあえず俺のここでの名前はウールへジンだ。そう呼んでくれ」


「ああ」


 二人は肩を並べて街の中央に向かって歩き出す。

 きれいに石が敷かれた大通りには様々な外見の人々が行き来し、店の前で人が客引きをしている。


(店員はノンプレイヤーキャラクターとやらがほとんどなのか……なるほどな)

 

 このゲームではアバターがプレイヤーか否か見ただけでは分からないはずなのだが、良はそのシステムをやすやすと突破してしまった。

 ゲームのシステムでは魔法という超常減少に対応できないらしい。 

 世間一般には秘匿されているのだから、何とかしろと言う方が無茶なのだろうが。

 ナギリョーはウールヘジンに色々説明されながらアイテムを購入し、冒険に出かける。

 魔法という一種の武器のみしか使ったことがなかった彼にとって、近接戦闘は未知の体験で面白かった。


(たまにはこういうのもいいなぁ)


 感覚がきわめて現実に近いせいなのか、体を適度に動かしたさわやかな気持ちになれるのもよい。

 そろそろプレイ終了時間となったため、一度町に戻ってみると騒ぎが起こっていた。


「ログアウトができないっ? 何でだよっ?」


「運営は一体何をしているんだっ?」


「さっきから緊急コールしてるけど、応答がないわっ」


 様々な外装の男女の悲鳴と怒声が飛び交っている。


「ま、まさかこれ……デスゲームなのかっ?」

 

 誰かが叫ぶと悲鳴がいっせいに増大していく。

 恐怖や絶望が急速に伝播していくさまを黙って見ていた良は、隣で真っ青になっている友人にたずねる。


「何だ、デスゲームって?」


「都市伝説の一つだ。仮想現実ゲームにダイブすると、二度と帰還できない。さらにゲームの中で死んでしまうと現実世界でも死んでしまう……そんな話があるんだよ。まさか本当に……でもログアウトができないし」

 

 ウールヘジンの表情は恐怖でこわばり、目は現実を拒否するかのようにうつろになっていた。

 そのような友人に対してナギジョーは小声で言う。


「なるほど……俺が一緒でよかったな」


 彼は友人をそっと気絶させると静かに魔法の呪文を唱えはじめた。

 ここで使うべきは閉ざされた世界を破壊し、人々の意識を解放するもの。

 なおかつ中に閉じ込められてしまっている人々を死なせないように破壊力が調整されたものだ。


「天界の帝王、冥府の君主、時の支配者よ。我が声に応えその武威を示せ。創世の日より理を保つ大いなる力をもって、秩序に背くすべての存在を無に帰せ。――崩界<ワールドブレイク>」


 その点「崩界<ワールドブレイク>」はうってつけである。

 十二神技という異名を持つ殲滅型対世界魔法ならば、このゲームを構成するもの全てを破壊することができるし、被害者のプレイヤーに被害が及ばないよう細かな調整も可能だ。

 彼のアバターから抑制されていた魔力がド級のエネルギーとなってほとばしると、けたたましい轟音とともに何かが壊れる音がする。

 このゲームは草薙良の十二神技に耐えられるだけの防御力を備えていなかったらしく、世界システムは崩壊してプレイヤーたちは無事現実世界へ帰還していく。

 それらを魔法で確認してから良は最後に現実世界に戻った。

 

「俺を狙ったものにしてはあまりにもお粗末だな……偶然かな?」


 第一声は疑問である。

 草薙良を何とか始末したいと思っている潜在的な敵は少なからずいるが、その手の輩は彼の強さを熟知していてそれを発揮できないように工夫してくるのがセオリーだ。

 今回のように本気を出すことも可能な状況はあまりにもぬるすぎる。

 

「調査してみるかな」


 彼はそうつぶやくと大きく背伸びをした。

 垂れ流しになっているテレビではある企業に関するニュースをセンセーショナルに放送していた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 圧倒的強さによる疾走感 [気になる点] ストーリー性の無さ [一言] ↓コメは流石に自分の世界観を押し付けすぎだと思います、が、マジシャンと聞いて魔法使いを思い浮かべる人は、なろうにはあん…
2016/08/09 10:28 退会済み
管理
[良い点] ファンタジーとしてはありかなーと思いました。何かしらの力を秘めた主人公、主人公の力を狙う謎の組織の存在。タイトルに照らし合わせても、王道だと思います。 [気になる点] マジシャンではなく超…
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