第三話 ネコーズ VS 口裂け女 開始編
ネコーズは一人、コーヒーに猫用ミルクを入れて温まっていた。
「ふー、暖かい。おコタに入り、ぬくぬくするのは何とも言えない贅沢だ。これで、可愛いメイド服のお姉ちゃんでもいれば、何も言うことはないのだが、現実はそう甘くはないな……」
ネコーズはそう言いながら、相棒のモコソンの事を考えていた。モコソンは、メイドさんを格安で雇うため、可愛くて働き者な女性を、ハローワークでピックアップしていた。
希望としては、二十五歳以下で、可愛くポニーテールが似合う事、胸のカップ数はCカップ以上、腰はキュッと引き締まり、尻はちょっと柔らかめの女性だ。
お金はあまりないので時給八百円から。住み込みOKで、モコソンと添い寝してくれるのが条件だ。ネコーズはそんな子いないと否定をするが、モコソンはあきらめずに探し続けていた。
かれこれ一週間になる。ネコーズは、モコソンの心配をし始めた。最近では、口裂け女が出没しているという。モコソンが襲われたら大変だ!
「ふう……。まあ、後二時間もすれば、ハローワークが閉まって、モコソンも帰って来るだろう。口裂け女でも、可愛ければ問題ないし、メイドになってくれるなら大歓迎だ。まあ、重要なのは見た目と働きっぷりだよ。
口が裂けていれば、外科手術で何とかなるし、モコソンの専門だろう。まあ、モコソンが食われる可能性もあるけどね……」
モコソンは女性に対して、とても親切だ。おそらく口裂け女といえど、モコソンの欲情範囲だろう。その安心感と信頼感で、ネコーズはモコソンの帰宅を待っていた。
「ハーイ! そこのお嬢さん、ちょっと良い働き口があるけど、話だけでも聞かない? 絶対損はしないからさ! こう見えても、豊橋じゃ有名な外科医なんだよ。
乳癌の検査とか、人工呼吸がメインの医者だけど、多くの女性を救っているのも事実なんだ。
メイド服やナース服、OLのスーツにアニメのコスプレ等、制服も可愛いんだ。どう、お試しで体験実習でも……」
モコソンはそう言って、お目当ての女性にビラを配る。努力のせいか、良い汗をかいていた。
働きっぷりは尊敬に値する。キャバクラとかでバイトすれば、かなりの収入になるだろう。そのくらいの働きっぷりだ!
「いや! この羊、毎日毎日同じ事言って来て。こんな安月給で働けるわけないでしょ!
求人募集する前に、常識を勉強しなさいよ!」
モコソンの努力とは裏腹に、女性は酷い暴言を吐き、逃げて行く。純情で幼い少年のような心のモコソンには、きつい一言だった。
モコソンはそれでもめげずに、頑張って女の子に声をかける。全く、とても惜しい羊材だよ。
すると、一人の女性がモコソンに声をかけて来た。
「あたし、綺麗?」
その女性はそう、今巷を騒がせている口裂け女でした。マスクをしていますが、一目で分かります。
この女性から逃げるには、ポマードと三回唱えて、口裂け女がひるんだ隙に逃げるしかありません。
口裂け女がノーハンデの場合は、100メートルを三秒で走る事ができるので、並みの人間では手も足も出ずに殺されてしまいます。モコソンはどうするのでしょうか?
このままではジンギスカンとなり、口裂け女の胃袋に入ってしまいます。
ネコーズは名探偵コナンを見終わり、ようやくモコソンを迎えにハローワークまで行こうと思いました。外は雨が降っていたので、二匹分の雨がっぱを用意し出かけます。
「ふう、コナンの曲とは違って、僕達は傘がさせないからね。この可愛い子猫用の雨がっぱをはおるように、会社から言われているんだ!
僕もいずれは、小五郎のような名探偵になって、ご飯の心配がないようにしたいぜ。僕なら麻酔なんてなくても、すぐに眠りに付けるからね」
こうして、ネコーズは夕暮れ時をモコソンを捜しながら歩き始めた。ハローワークまで行くと、その入り口付近にモコソンがいた。しかし、様子が変だ。
モコソンは可愛い女性を見かけると、走って付いて来る変態だが、そう言う意味の変ではなく、気絶しているようだ。周りにはモコソンの血が溢れていた。
「モコソン! 何があった?」
モコソンは意識がなく、返事はない。ネコーズは仕方なく、近くの女性に声をかけて見る。どうやら、彼女はモコソンに異変が生じた時に近くでその様子を見ていたようで、脅えていた。
ネコーズは、その女性を怖がらせないようにして近づいていく。すると、女性は脅えた顔でこう言う。
「ああ、口裂け女が……。口裂け女が……」
女性はそう口走っていた。しばらくすると、モコソンが意識を取り戻した。最後の力を振り絞り、ネコーズに何かを伝えようとする。
「ネコーズ……、口裂け女は……、F……、だった……。ぐっは!」
モコソンはそう言い残し、血を吐いてまた意識を失った。どうやら、その女性の証言とモコソンの反応から、モコソンは口裂け女と死闘を繰り広げ、わずかな差で負けたようだ。
口裂け女はモコソンを後にし、どこかへ消えて行った。モコソンは近くの動物病院に搬送され、治療を受けている。
命に別条はないが、出血が酷く、それがもとで発作のような症状になったという。
モコソンが動物病院に収容されたのを見たネコーズは覚悟を決める。必ず、口裂け女を捕まえ、ブタ箱に送ると!