ネコーズ VS 未来を見せる猫 依頼編
ネコーズとモコソンが依頼もなく、幸公園でダラダラしている。ここは水を飲むのと、日向ぼっこ、散歩するのに最適なのだ。
「あー、暇! お金もないし、依頼も来ない。どこかに、僕並みの知恵の可愛い子猫でもいないかな?」
「さあ、ここらの猫じゃあ、君の知恵に対抗できるネコはいないし、探すだけ無駄じゃないのかね?」
「ああ、僕の奥さんも見付からないか。可愛くて、特殊な力を持つ猫なんて、そうそういないからな」
ネコーズがそうやって、猫ジャーキーを銜えていると、いつぞやの小学生が現れた。
「ああ、杏奈ちゃんじゃないか! メイドにでもなりに来たのかな? 早速、僕のマッサージをよろしく!」
ネコーズがそう言うと、杏奈ちゃんは泣き始める。ネコーズはビックリして、ギョっとした顔をする。
「ごめん、ごめん。出会っていきなりマッサージは、マナー違反だったな。まずは、僕達を家まで運んでくれないか? だらけ過ぎて、動きたくないんだ……」
ネコーズがそう言うも、杏奈ちゃんは泣きやまない。これは尋常じゃないと、ネコーズは仕事モードになる。家まで、杏奈ちゃんに運んでもらい、事情を聞く。
「どうしたニャン! ババアにお小遣いをもらえなかったのか? それとも、いじめか?」
ネコーズがそう尋ねると、杏奈ちゃんはゆっくり答え始める。さっさと話せ! と、顔に猫パンチをしそうになるが、ネコーズは黙って話を聞いている。
「あのね、お友達のね、同級生の男の子が、昨日から行方不明らしいの。それで、ネコーズさんに相談しようと思って来たの……。ネコーズさん、助けてくれる?」
杏奈ちゃんは上目使いで、ネコーズに頼む。
恐ろしい子だ、男性の弱い部分を良く知っている。並みの男性なら、喜んで従うだろう。
ネコーズは並みの男性ではないので、杏奈ちゃんの上目使いなど効かない。
「あー、パス、パス。野朗の行方不明なんて知ったこっちゃないよ。最低でも、美女か可愛い女の子じゃないと、探す気にもならないね!」
ネコーズは冷たく言い放った。
「そんな……。その友達を連れてったのは、三毛猫が関係してるそうなんです。何か、知りませんか?」
それを聞き、ネコーズは本気になった。決して、可愛いメス猫のためではない。誘拐という許しがたい犯罪に憤りを抱いているからである。
「何! 三毛猫と言えば、メス猫しかいないといわれている! しかも、智脳は高く、身体能力も高く、美猫が多い!
許せないニャン! 美猫がそんな事をしているなんて……。僕の奥さんとして、永久就職させてやるニャン!」
こうして、ネコーズは謎の美猫誘拐事件に乗り出した。決して、可愛いメス猫に会いたいからではない!
子供の誘拐という凶悪犯罪犯を捕まえるために行くのだ。ネコーズは、真面目な顔になって事件発生を真剣に聞く。
「実は、その三毛猫は、未来を見せる猫ってことで有名でね、なんでも、その猫を暗い場所に連れて行き、大きくなった黒目を覗いて見ると、その中に当人の未来の姿が写ると言われているの。
その三毛猫を触ろうとして、近づいて行ったら、拓馬君が突然に消えたらしいんです。遠くで見てる人がいたので、本当にわずかな時間で消えたのは、確からしいんです。
それで、大人達が探しまわったんですけど、まだ見つかって無いそうなの。ネコーズさん、探すのを手伝ってもらえませんか?」
ネコーズは、杏奈ちゃんの訴えるような目に心を動かされた。
「よし、その猫を捜すついでに、拓馬君とやらも、探してやるか。一応、写真と消えた場所を教えてくれ!」
杏奈ちゃんは喜んで、写真を差し出す。写真には、カッコいい感じの男の子が写っていた。ネコーズはその写真を見て言う。
「ほーう、なかなかのイケメンだな。こういう奴は、将来若ハゲになる可能性が高い! 結婚相手としては、お勧めできないな……。
まあ、授業料をくれれば、僕の所で訓練させてやっても良い! 見付かったら、これを渡してやってくれ! 杏奈ちゃんも来るなら割引してあげるからね!」
そう言って、ネコーズは最近始めた猫語の訓練ビラをあげる。授業料は月に一万円、ネコーズの探偵としてのスキルも学べるお得コースだ!
まさに、最新のニーズを知り尽くしているネコーズのスペシャル授業だ。多くの受講生が期待できるだろう。こまめな宣伝によって、大きなビジネスにも成り得るのだ!
「うん、ありがとう。無料体験の時に、着て見るね。それで、拓馬君が行方不明になったのは、埼玉県なんだけど……。
大丈夫かな?」
杏奈ちゃんは心配しながらそう言う。
「あー、埼玉県か……。ちょっと遠いけど、また新幹線を利用するから大丈夫! 今度は資金もそれなりにあるから、おやつは五百円だし!」
ネコーズとモコソンはそう言い、埼玉県と事件のあった現場までの道のりを調べ始める。
スマホがあるので、場所を捜すなど朝飯前なのだ。五分ほどで、新幹線と電車の路線を調べ終わる。
「じゃあ、僕達は調査に行くね! 依頼料は拓馬君が保護された後から、拓馬君の両親に頼んで、成功報酬として五万円振り込んでおいて!」
そう言って、ネコーズ達は走り去っていった。
高いとお思いかな? しかし、この依頼料、名探偵としては、かなりの格安なのだ。
本来、探偵が調査をするとなると、二日ほどで三十万はくだらない。ネコーズ達は一日ほどで成果を上げており、しかもこの値段なのだ。どれだけネコーズ達が優秀かが分かるだろう!
ネコーズ達は、ドミーでおやつを千円分ほど買い、豊橋駅から埼玉県に行く新幹線に乗り、出発して行った。はたして、ネコーズ達を待つ未来を見る猫とは、どんな猫なのであろうか?