大帝ルイ
フランドル地方。
古くから毛織物工業が盛んなここは、これによって作られた製品を大陸西部一帯に送り出す一大産地である。フランドルの主要都市であるブルージュ、ヘントといった都市の人口は万を超し、人々の暮らしも豊かである。農業も発達しており、風車や水車を利用した灌漑もここで発展されたと言われていて、人ならばこういうところに住みたいと思う場所であろう。ところが、そうでもない。それは、豊かであるからこそ争いの火種となるからだ。
毛織物の原材料となる羊毛は、海の向こう、コーレイト島から輸入する。だからこの土地の人々は昔から、コーレイトとの結びつきが強かった。一方で、作った製品を運び売るのはアルメニア王国の商会で、だから彼等ともまた付き合う必要があったのである。
アルメニア王国歴三〇〇年現在。
フランドル地方は大国アルメニアの一地方であった。しかしここで、アルメニアに与するを良しとしない者達が、コーレイト王リチャードに助けを求める。が、当然ながらこれを狙ったのは助けを求められたリチャードのほうで、彼はフランドル地方でアルメニア支配に不満持つ者達を扇動したのだ。これはフランドル地方において、コーレイト人、アルメニア人、トラスベリア人、フランドル人が共生しているがゆえに発生するいがみ合いを利用し、大きな対立となっていく。もちろん、裏で火に油を注ぎ続けたのはコーレイト王国の手の者である。
狙いはフランドル地方の併合である。
大陸進出はテューダ朝となっているコーレイト王国の悲願である。今、吹けば飛びそうな領地を大陸に持っている彼等は、大国アルメニアの圧力に抗いながらこれを守っていたが、反転攻勢の時が来たと考えたのだ。
原因はアルメニア王国ルイ三世自らが行う南部都市国家連合との戦争が長期化しているから。
「大帝ルイも鳥にはなれぬ」
コーレイト王リチャードは言い放ち、腹心であるランチェスター伯爵スコールズに軍兵を集めよと命じる。そして他国で言う宰相職である王腕ウェールズ伯爵ベイルに艦船を用意せよと指示した。
コーレイト王国の軍勢一万は、海峡を渡り、大陸側の領地であるカレーに入る。スコッターランド諸侯はいまだ従属していなかったから、彼は本土に五〇〇〇の軍勢を集め北へと向けた。コーレイトとスコッターランド双方境界の都市カーライルにこれは入り、外へと向けられたコーレイトの刃は凶暴かつ残忍だった。
この時、カーライルは協定によって南北に割られていて、南をコーレイト王国、北をスコッターランドの有力貴族であるキャリック伯エドワードの統治下にあったが、南から北進したコーレイト軍によって、スコッターランド人達は筆舌に尽くしがたい屈辱と暴力にさらされた。軍がその意思をもてば、民間人をいかに扱えるかとという手法の限りをつくした殺戮は七日間に及び、死傷者は五〇〇〇人を超える。また重要なのは、非戦闘員でさえ容赦ないその凄まじさであった。
恐怖によって先制し北の戦況を有利たらしめんとしたリチャードは、ドーバー港を発ちカレーの地を踏む。北進をランチャスター伯爵スコールズに任せた彼は、王腕を伴いフランドル地方奪取へと集中したのだ。
彼の目論見通り、カレーからアルメニア領に侵入したコーレイト軍は、国境守備隊の規模を出ないアルメニア軍を蹴散らす。
王が王都に不在。
元帥たる王弟も王に従い南征。
リチャードは獰猛な獣の食欲にも似た旺盛な野心を隠すことなく、軍勢を北東、フランドル地方へと向けたのである。
これに対し、アルメニア王国も無策であったわけではない。
王都の留守を預かる宰相アラゴラ公爵ヒルスメンは、出征中の王にこれを急ぎ知らせると共に、アルメニア王国北西部の諸侯に戦えと命じ、また国軍の動員を決める。彼は決して無能ではなかったがゆえに、王の帰りをただ待つのは愚かとして、しかし自ら焦って出張るという事をせず、後方で粛々と情報を集め、指示を発し続けた。
伝令が走り、中継され、コーレイト王国来襲の報は、南で戦うアルメニア王ルイ三世に届いた。
南部都市国家連合との戦いは、彼等とアルメニア王国の間にあるフォルシア公国の扱いを巡っての対立が発端である。
ルイ三世はフォルシア公国公王の要請を受けて反公王派と、それを支援する南部都市国家連合と戦っていたが、南部都市国家連合が珍しく内輪もめせずまとまり戦い、また指揮官である都市国家マドリー執政官オクタヴィウスの手腕もあり、戦線は膠着状態であった。
本営が置かれたフォルシア公国公都トゥールーズで、ルイは絹服に腕を通して立ち上がる。それを助けたフォルシア公姫ベヨネッタが、王とは思えないほどに戦傷を刻んだ背中が衣服に隠されてもなお、視線を転じることができない。
扉の外で報告をした腹心アレクシに、王は言い放つ。
「手打ちだ! 撤退する!」
ベヨネッタは、これでこの人は去るのだと悟り、懇願するように声を出す。
「陛下……どうか私をお連れくださいませ」
「そなたはお父上の傍にあって良い娘として生きろ」
ルイは何も冷徹さから言ったわけではなく、この女も結局、他の女と同じであると断じたからだ。彼は自分に寄って来る女性が皆、彼を求めているのではなく、アルメニア王国の王に愛されたいが為にそうしているのだと理解している。だから彼もそれを相手しつつ、決して相手を受け入れない。
泣き崩れた娘を後に部屋を出た彼は、腹心で参謀の魔導士の一礼を受ける。
「陛下……実は既に先方へは使者を遣わしております。出過ぎた真似を致しました」
「お前は相変わらずだ」
咎めもせず歩き出した王は兵から手鏡を受け取り、髭を整えながら歩く。若い頃、王国中の娘達の心を奪った眉目秀麗なそれも今は曲がり角を過ぎた中年のそれで、しかしまだ十分に魅力がある。切れ長の目に整えられた眉と髭、鼻筋と唇は筋良く形良い。顎が細いのは固いものを食べない権力者ならではのもので、奥歯を抜くことで矯正している。金色の髪を揺らし歩く彼は、大国の王たる威厳を発散し、それで周囲を圧倒し支配し大広間へと出る。公王がそこで待っていたが、一瞥もせずすれ違った。
自国の安全も人の手を借りねば保持できぬ愚か者め。
苛烈な言葉を吐くには場が悪いと知るがゆえの行為であったが、されたほうは屈辱で震えた。
荘厳な公王の城は贅が尽くされた造りで、ただ富を吸い上げることが務めであるかの如く主張するその中をルイは不機嫌な顔で歩き、そうしながら続くアレクシと会話する。
「フォルシア公国から手を引くことを条件にすれば十分であろう」
「は……しかしこれでフォルシアは完全に南部都市国家連合に染まります。公王が命をはって抗う気概あれば別でしょうが、そうであるなら今はなく、ならばと考える次第」
「かまわぬ。フォルシアよりもフランドルだ」
「フォルシアの親アルメニアの者達は如何いたしましょうや?」
「お前に考えがあろう。申してみよ」
「さすれば……このまま放置し火種と致します。南部都市国家連合色濃くなる中で、彼等は迫害され、攻撃され、悲鳴をあげるのは必定なれば、次の大義となりまする」
「それで良い。モラン!」
王に名を呼ばれた長身の男が振り向く。彼は城の外、広く木々生い茂る庭に立っていた。そして彼の前方にはすでに準備を終えた近衛連隊が整列している。
「先に行く。お前は軍勢と共に来い!」
「兄上、少ない護衛で大丈夫ですか?」
「ははっ……大軍の中におらぬと安心できぬリチャードと同じにするでない」
待たせる馬車に甲冑もまとわず乗り込むルイは、一度だけ振り返った。
「北伐を行う。忙しいがついて来い」
王弟モランと腹心アレクシが同時に頭を垂れ、近衛連隊が一斉に剣を掲げた。
ルイ・ラング・アルメニア三世、四十四歳の夏であった。
Great Louis
-battle of Flandre-
コーレイト王国軍はフランドル地方に侵入を果たし、ここでようやくアルメニアの組織だった軍勢と出会う。フランドル地方は王家直轄領で、ここを預かるルグエン・ビダンという男は一代だけ名乗れる男爵の爵位を持つ。彼は国軍二〇〇〇と、周辺から駆けつけて来た諸侯の軍勢二〇〇〇を集めコーレイト王国軍の前に立ちはだかった。
劣勢であるのは分かり切っていた事で、彼は宰相の指示を守るべく、持久戦を狙っている。それは軍勢を晒し、敵にやるぞと見せながら戦わず、必ず転進してくる王の為に時間を稼ぐのが目的だった。
「コーレイトのリチャードが狙うは我々に一戦して勝利する事ではない。奴が狙うはこの土地を我々から奪い取る事だ。無茶苦茶に攻撃はかけてこれない事情があちらにあり、ただ無謀に戦いたくない事情が我々にはある。幾日かは稼げよう」
ルグエンの言葉は臆病者とも取られかねないものであったが、大軍を前に死を選ぶ行為を望む者達はおらず、軍勢を戦闘隊形に整えたままアルメニア王国軍は動かない。
一方、リチャードは敵の狙いを正確に読んでいて、黄金色の甲冑を揺らして笑った。金属音が混じる笑い声に続いたのは、彼が発した野太い声で、身の丈二デール(二メートル)と言われた巨躯にふさわしいものである。
「ウェールズ伯! 騎兵を預ける。予が正面から攻撃をかける! そちは横から突き崩せ」
壮年ながら勇猛で、さらに王腕を務めるだけの知性を兼ね備えたベイルは、リチャードが敵に付き合わないと判断したこれをまず認めた。彼にも現れたアルメニア軍の意図は分かっている事であり、王がもし慎重論ならば進言すべしと決めていたが、それは不要となり、またそうなった事に喜ぶ。
「一網打尽に致しましょう」
一礼し去るベイルを見送る事もなく進んだリチャードは、巨躯を兵達に晒す。魔導士、弓、歩兵、長槍兵、重装歩兵、皆が王の存在を視認し、彼が進む先を睨む。
「まずは矢をもって挨拶しろ!」
コーレイト王国軍が蠢く。
両軍が向かい合った場所はフランドル地方南の平野部で、遮蔽物のないここでは戦闘は地形に邪魔されるものではない。
前進するコーレイト王国軍は、頭上を飛越し敵に迫る矢の量に戦意を高めて声を荒げる。盾を並べ陽光を反射させたアルメニア軍は、ルグエンの指揮で後退を始めた。彼等はあくまでも戦闘を望まず、これがコーレイト人達の癪に障る。
「臆病者め! 死ね!」
「出てきて逃げるとはどういうつもりだ!?」
罵る言葉と矢を吐くコーレイト王国軍は、アルメニア王国軍側面を襲った騎兵に動きを合わせて一気に速度をあげた。
彼等の鉄がアルメニア人の肉を斬り、裂き、血を溢れださせる。
ルグエンは矢避けの盾で身を守りつつ、騎兵に蹂躙された諸侯の軍勢が崩れる様に怒声を飛ばす。
「退け! 陣形を整え後退すれば助かる!」
だが彼の声は戦場の中で広まらず、アルメニア軍は国軍と貴族の軍が混じり合っていたのも壊滅の要因となった。つまるところ、兵は多いにこしたことはないが、ただそれだけではダメという事であろう。
こうして軍規模同士の初戦はコーレイト人達に女神が微笑み、彼等は後方に控えていた攻城兵器を誰に邪魔されることなく運んだ。
目指すはフランドル地方西部の要ヘント。ここをまず押さえ敵の流通を絶ち、ブルージュ港まで取ればフランドル地方西部一帯はコーレイト王国の勢力下となるに等しい。そしてこれをする狙いは、本土との兵站をカレー経由でする必要がなくなるからで、恒久的にフランドル地方を取るにも、反撃に出てきたアルメニアと戦うにも重要であった。
もちろん、これはアルメニア側にも分かっている事である。そして、彼等にもコーレイト人達と同じように、ヘントを大事にする理由がある。
ここはアルメニア派なのだ。
フランドル地方にあって、このヘントを奪われるのはつまり、一都市を奪われる以上の意味があった。
情勢が一気に傾き、フランドル地方はアルメニア離反を叫ぶようになる恐れがある。
陸と港を繋ぐ中継都市として栄えたヘントを取りたいコーレイト軍は投石器、攻城櫓を運びここを目指し、一方で敗れたとはいえ健在だったルグエン・ビダンは、残存をかきあつめヘントに急いだ。
こうなれば城壁を頼るしかない。
都市機能が麻痺し、フランドル地方物流の中心であるこれがそうなると、経済的損失は計り知れないものがあったが、それさえ悠長に思えるほどの危機がそこにあった。
両軍ともに双方の事情でヘントへと急ぐ。
ここで王都でも動きがあった。
宰相が多忙のあまり高熱に倒れたのだ。
よりによってこんな時にと誰もが嘆き慌てたが、そうしたところで事態が改善するはずもなく、宰相の病状が回復することもないのである。
有力貴族の一人、モリペレント公爵アウベスが皆に推されて宰相代理となるも、王の裁可を仰ぐ前であった。通常、常人ならばそれを理由に消極的な方針しか出せないところだが彼は違った。
「王陛下、宰相閣下の為に今できることをする。越権であるというお叱りは平時となって陛下から受ける。海軍をもってコーレイト王国のカレーを襲え。あそこが元凶である。あれがあるから奴らは来る。破壊するのだ!」
国軍である海軍を動かすのは、王もしくは王の許可を得た宰相のみができることであったが、彼はこれを動かした。アルメニア王国北海艦隊が駐留していたブレスト港から出航したのはこれより七日後で、この時間差は距離によるもので仕方ないのであるが、その一言で終わらせるにはあまりにも惜しかった。
というのも、艦隊が出港した時には既に、コーレイト王国軍がヘントへと侵入してしまっていたからだ。
彼等はアルメニア軍残存部隊よりも早くヘントに辿り着いた。これは、アルメニア軍のルグエンが敗走した者達をかき集めるのに一日の時間を要したせいで、その差が決定的となったのだ。
兵はいたが少なく、大軍であるコーレイト軍は住民と自らの命を大事にしろと外から訴えた。守備兵達は味方がくるまで耐えると覚悟していたのだが、ヘントの住民一五〇〇〇人にとってそれはそう思えない。
いつ来るか分からない助けを待つより、命と財産は保証すると訴えるコーレイト軍に彼等は惑わされた。
ヘント守備隊を率いていたベリオ・ルイードという士官は、住民達の訴えに負けた。彼とて未来が読めるはずがなく、住民達が助かるならばと自ら使者となってコーレイト王国軍に降ったのだが、コーレイト王リチャードはこのヘントを、フランドル地方のコーレイト派達にコーレイト王国強しという宣伝に使おうと考えていた。
彼は降伏し城門を開き市街地を晒したヘントに、兵達を突入させたのである。
「コーレイト軍は恐ろしく強い。城壁を頼りに籠ったヘント守備隊四〇〇をたった一刻で破り、陥落させたそうだ」
これはフランドル地方に蔓延し、流行り病よりも早く人々を介して伝わっていく。
ヘント陥落。
アルメニアに激震が走った。
当然、アルメニア王ルイもこれを受ける。彼がこれを知ったのはヘント陥落から十日後で、北海艦隊出港から三日後のことである。そして彼はヘント陥落、北海艦隊出港、宰相病床で代理はモリペレント公爵という三つの重大事を同時に知った。
ルイはだが、この三つを同時に知ってもヘント陥落に心を乱した。彼は怒りのあまり乗る馬車の扉を蹴破り、近衛の者達に怒鳴る。
「遅い! もっと早い馬車を!」
「六頭立てのこれが最も早うございます!」
「ならば馬が遅いか!? 馬を代えよ!」
走る馬車から身を乗り出し怒鳴る王に、近衛達が慌てふためき「どうか中へ!」と叫び返す。ルイは彼等の叫び声で己の感情が冷めたと感じ、そして同時に頷いた。
「馬を代える。使えるものは何でも使ってナントと都に予の声を届けろ! ナントに船を用意させろ! モランやアレクシが後から来る! 軍勢を船で運ぶ!」
「そんな! どれだけの船が必要となるかわかりませんぞ!」
近衛連隊長の困惑に王は怒鳴った。
「やるのだ! 商会に協力させて船を出させろ! フランドルを守るのは楽だが、取り返すのは大変だ! やれと言え!」
近衛連隊長が部下達に叫び、急ぎ駆け離れていく人数は少なくなく、ルイの護衛はまた数を減らしたが、彼はお構いなしに指示を続けた。
「海軍にはナントで陸軍に合流せよと伝えろ! 個別に動いても意味がない」
「都にはモリペレント公を宰相とすると届けよ」
「ナントにて皆を待つと我が軍勢に伝えよ」
Great Louis
-battle of Flandre-
フランドル地方の人々はコーレイト人達を歓迎する者しない者に別れ、それぞれがそれぞれを口撃し攻撃もした。親コーレイトと親アルメニアが育んできた対立が再発し、ヘント陥落もあってコーレイト派が圧倒する。そしてそれにアルメニア派が反発し激しさを増したが、これを酷くさせるに、民族の違いも加味していた。
アルメニア人、コーレイト人、フランドル人、トラスベリア人と、四種類もの民族がフランドルで生活をしていて、戦争の度に仲違いをする。そしてこの時もやはりこれは発生し、さらにコーレイト王国軍が暗躍したのもあり、アルメニア人達は三対一に追いやられた。また彼等最大の拠点であったヘントがコーレイト王国軍に抑えられていては元気も出ず、トラスベリア語で罵られ、フランドル語と共に石を投げられ、コーレイト語で挑発されても耐えるしかなかったのだ。
そして遠く離れたナントにも耐える男がいた。
ルイである。
彼は北海艦隊をナントに呼び寄せ、モランとアレクシの到着を待つ。そして二人が率いる軍勢二万を待った。
すぐにでもフランドルに飛びたい彼であるが、効果的な反撃に今は耐えるしかないと信じていた。そうだからこそ、朝を迎えては南を望める窓へと飛びつき軍勢が到着していないかと思わず確かめてしまうのである。
その彼のもとに次々と報が届く。
ブルージュ港陥落。コーレイト王国軍が制圧。
アルメニア軍敗走。東部に撤退するも住民の蜂起で混乱。
コーレイト人による武装自警団がアルメニア人達を襲撃している。
トラスベリア王国選帝侯シェブール侯爵が事態の収拾がアルメニアに不可能であるならば、自らが行うつもりだと発したらしい。
コーレイト王リチャードはフランドル地方のコーレイト人達に冷静たれと発した。
宰相代理モリペレント公、フランドル地方から隣接州へと逃げ出す避難民を保護すべく諸侯に協力要請。
そして当然、ルイもアルメニア、周辺国家にナントから発言した。
「予は今、大きな悲しみに包まれている。フランドルはアルメニア統治によって繁栄してきた歴史があり、小さなすれ違い、いがみ合いがあったとしても、大きな流れの中では小さな波でしかなかった。まずはこれこそが尊重されるべきであるが、隣国の侵略者の勝手極まる暴力にさらされている。これによってフランドルはアルメニアから切り離されようとしている。予は自らの腕を失わんばかりの恐怖、怒り、痛みと共に今ある。戦は人の世の常なれど、此度のこれは戦ではない。強姦、強盗の類である。そしてそれを前に脅える皆と同じように予もまた今、一人のアルメニア人として悲しみ、嘆き、神に膝をつき祈っている。だが、祈るばかりで敵は払えるか? 否だ。予はこれをしたコーレイト王リチャードと、踊らされ暴力に酔うフランドル地方人民の一部を、決して許さぬ。アルメニア王国臣民、これはフランドル地方だけの悲劇ではない。我ら大アルメニアが小国の嫉妬と妬みで片腕を奪われようとしているのだ。フランドルの同胞を助ける為、またこの国の安全安定繁栄を願うが為に、予は今一人のアルメニア人として、王として、祈りを終え、立つ」
南部都市国家連合との戦場であったフォルシア公国から、国軍二万がナントに到着した翌日の朝にこれは発表され、あらゆる手段でアルメニア中に広められた。
フランドル地方にもこれは当然ながら届き、辛酸を舐めていたアルメニア人は歓喜し、コーレイト人は緊張する。
大帝ルイはこれまで決して優しい王ではなかったが、こうまではっきりと、民までを攻撃の対象とすることを明言することはなかったからだ。
そしてコーレイト王リチャードもこれを知るところとなる。
「ナントで発した? 艦隊を入れておったな。本国に伝令を出せ。奴は海から来るぞ。カレーを狙うつもりだ」
リチャードは素早くルイの狙いを読み、自軍兵站の要であるカレーを心配した。ブルージュ港を手中にしたといっても、ここを使って満足な物資を運ぶまでにはまだまだ時間がかかる。奪ったからといっていきなり出来るものではないのだ。
コーレイト王の危惧は、半分は当たった。
それは、海からフランドルへとアルメニア軍が向かうであろうというところである。
では違ったのは何か。
ルイはカレーを狙わなかった。
ヘント陥落から二〇日が経過し、フランドル地方を浸食するコーレイト王国軍であったが、カレー経由で届いたその報告に動きが止まる。
リチャードはこの時、ヘントの総領事館にいた。ここを本営として使っていて、また王は寝所もそこに置いていた。
ウェールズ伯ベイルが忌まわしい報告に表情を厳しくしつつ王の寝室を訪ねた時、リチャードは問答無用で捕えさせたアルメニア人女性を寝台に縛り付け凌辱している最中であった。
「陛下! 急ぎお耳に入れるべき報告がございます!」
「手が離せぬ! そこで申せ!」
女の泣き叫ぶ声が室の外まで届き、ウェールズ伯ベイルは王がなぜ手を離せないか理解しているが、ここは言われた通りそこで言葉を発した。
「ドーバー陥落! アルメニア海軍が港を制圧。アルメニア人ども! 本国を狙いました!」
返事はなく、ベイルは待つ。
荒々しく室の扉が内側から開かれ、全裸のリチャードが淫らに濡れた陰部を晒してそこにいた。
「我が海軍は何をしていた!?」
「は……カレー沿海にて敵に備えておりました……」
リチャードは怒りに巨躯を震わせ、意味不明な怒声をそこで発すると、扉を開け放ったまま室へと戻る。そこでまだ泣き叫んでいた女の顔面を殴打し八つ当たりすると、彼女の鼻が折れ血があふれたのも無視して衣服を掴み廊下へと出た。
「全軍を呼び戻せ!」
シャツを着ながら廊下を急ぐ王を、頭を垂れ見送った王腕は、室の中に進み娘を縛る縄を切りほどくと、医者を呼べと従者に命じた。
ルイの取った反撃は辛辣だった。
常人であればあのような事を公に発した後、フランドルに彼が来ると思うところであろう。しかし彼はその裏を取り、なおかつ、国内の反コーレイト感情を煽った。フランドル地方に隣接する各州のアルメニア人達は武器を取り、薬を持ち、州境に集まると逃げてくる同胞を助け、彼等を追って迫ったコーレイト人達と戦う。
そしてルイはこの時、コーレイト王国本土の港であるドーバー港を海軍で攻め、陸軍を上陸させ周辺を荒らしに荒らした。
「遠慮はいりませぬ。騎行戦術を用いましょう」
アレクシの進言に王は頷き、畑を焼き、牧場の家畜を奪い糧食とし、村々や町を焼いた。そしてコーレイト本土の防衛軍が現れるより早く、海軍とかき集めた船に乗り今度こそカレーへと向かったのだ。
海峡でコーレイト海軍とぶつかるのを嫌ったルイは、一度南へと進路を取り、ドーバー救援へと急ぐコーレイト海軍をやり過ごす。そして空となったカレーへと急行した。
海軍と陸軍を同時に操り、カレーを海と陸から挟撃したルイはこれを包囲する。この報告がリチャードに届いた時、彼はフランドル地方に展開していた軍勢をようやく集めたばかりの頃で、彼はルイの素早さに怒りよりも畏怖を覚える。
ルイはカレーをこのまま陥とすか否かで迷いアレクシに相談した。
「陛下。リチャードはカレーを取られたならばこれはいよいよとフランドルで頑張ります。ここはあえてカレーという逃げ道を残してやり、フランドル地方から彼が逃げ出すを助けてやるほうが素早く終息させることが可能でしょう」
王はしばらく考え、アレクシの言を採用すると決めた。
「それにしてもアレクシ。お前の魔法は大した事ないが頭は予の為によく働くな」
「恐れ入りまする」
十歳年下の魔導士をそう評価した王だが、誰よりも腹心が魔導士としても一流であることを理解していた。だからこそ近くに置いていて、頭のほうはどちらかというと、冗談のつもりで相談したら使えるのでそれからもそうしているというべきだろう。
この頭部が王の為に働いていると評された魔導士の言で、アルメニア軍は四〇〇〇の兵力をカレーに貼り付かせた。ただ、アレクシはアルメニア軍の多くはまだここにいると装うべく、陣地の規模や立てた旗の数はそのままとした。そして残りは全軍で北東へと進軍を開始する。ではどうしてわざわざこれをしたかであるが、フランドル地方からリチャードが慌てふためき救援に現れる図を狙ってのもので、アレクシはこれを継続すべく、虚言を流しまくった。
「アルメニア王はカレーを攻撃している」
「いやいや、包囲を解いて北上中らしい」
「いや、包囲に半分、北上に半分という話を聞いた」
「いや、海軍と合流し再びコーレイト本島を狙ったのだ」
「いやいや、海軍と合流したまでは本当だが、コーレイト本島ではなくブルージュを取り戻すべく海上を移動しているそうだ」
「どれが本当だ?」
コーレイト王国軍にあってリチャードも
「どれが本当だ!?」
と叫んだそうだ。この時、彼の斥候達はアルメニア軍を見失っている。これは大軍である奴らはすぐに見つかるだろうという油断が齎した失敗で、ルイはモランの策を容れて全軍を一〇〇〇規模の連隊に分けた。
王弟は、彼が得意とする戦術を成功させるべくアレクシの流言をも利用する。王国元帥である彼は王の下で全軍を統べる立場であり、王に何かがあった時、軍勢を率いる事ができるのは彼だけである。その彼は、海軍をわざと敵艦隊に接近させるという指示を出した。
「敵と接触したらすぐに北上し逃げよ。敵が追ってくるようならスコッターランド諸侯のキャリック伯のエディンバラに逃げ込め」
モランの命令によってアルメニア海軍はコーレイト海軍と接触した後に逃亡する。もちろん、コーレイト海軍はこれを追ったが、スコッターランド地方近海へと入ったアルメニア海軍を追えなくなる。これはコーレイトとスコッターランドが現在、厳しい対立関係にあるからだ。
コーレイト人達は王に報告する。
「アルメニア海軍が北海で活動しております。ブルージュを狙う動きの可能性も捨てられません」
「では陸軍はどこにいった?」
「おそらく、カレーとヘントの中間あたりかと」
「おそらくで軍は動かせんぞ!」
そう怒鳴ったが、カレーはいまだアルメニア軍に包囲されているし、このままではブルージュを使えるようにするまで補給が途絶える。それが為されるまで時間はまだかかるし、大軍である彼等は消費する物資の量も多い。そしてフランドル地方で彼等がコーレイト人から略奪するわけにはいかない。トラスベリア人から、フランドル人からもできない。それは彼等が反アルメニアでまとまってしまったからで、皮肉にもそれはコーレイト王国軍によってのものだった。
アレクシは、コーレイト王国軍の泣き所はどこかを見極め、それは海を渡って来た彼等は、再び海を渡り帰るしかないところだと見ていた。さらに彼等はフランドル地方を奪取する為に民族の違いを利用したが、だからそれで無茶もできない事だと分かっていた。
コーレイト王リチャードはアレクシの読み通り、物資に余裕があるうちにカレーへと動く。
ルイの腹心は最初からカレーを包囲すれば、コーレイト王は中途半端に賢いから自分の置かれた状態を悟ってカレー救援にと急ぐと分かっていた。そしてこれをこのままルイに進言していたのだが、王はそこに一手を加えた。コーレイト本島への攻撃がこれで、これは例えばただカレーを包囲し敵をおびき寄せるというものであれば、ルイではなくアルメニア人達がその地味な手法に不満を持つという理由と、今後数十年、フランドル地方のアルメニア色を復活させるまでの時間、コーレイト人に大陸進出は難しいと思わせる為だ。
この本島を攻撃されたという事実が、コーレイト人達を縛るとルイは知っている。彼等は以降、海を渡る時、これまで以上に防衛兵力と組織に気を配らないといけない。それはつまり動員規模の縮小を意味し、さらに北からはスコッターランド諸侯の牙が迫ることになる。
ルイがそう操るのだ。
今回のフランドル地方奪還戦においても、先を考え布石を撒いたルイは、目論見通りヘントを出て南西へと移動するコーレイト軍の存在を、斥候からの報告で知り笑みを浮かべる。
「アレクシ、フランドルの民衆をどう扱うべきか?」
「コーレイト人の手によりコーレイト人達を差し出させましょう。これで彼等は今後も割れまする。説得し納得する者達ではありませんなら、彼等によって監視させ合い統べるが上、トラスベリア人とフランドル人を厚遇し監視させるが中、アルメニア人による入植を強化するが下です。ここは堂々と上を選択なされるべきと申し上げます」
「ふむ……下は簡単で魅力的だが対立構造は変わらぬ。中は将来に火種を残す。お前の進言通り上でいく」
「しかし陛下……まだ勝ったわけではありません。リチャード王との一戦が残っております」
「いや、予がカレーを包囲しそれを奴が知った時点で、予の勝ちは確定している。アレクシ……戦闘はモランに任せる。コーレイト軍をモランが料理する間に、予はヘントに行く」
「……おそらくはお目汚しになるに間違いございませんが?」
「いや、見て置く。軍という狂気に害された民をこの目で見れば、罪深い予の今後の治世に少しは役立つであろう」
「畏まりました。手配いたしまする」
王とアレクシのやり取りの後、五日後にルイはヘントに立つ。ほぼもぬけの空をなっていたここには、コーレイト人達による自警団がいたが、アルメニア軍襲来の噂を流すとあっさりと逃亡した。
アルメニア軍は、王国元帥シャンパーニュ公爵モランの指揮で、彼の得意中の得意、十面埋伏の計をコーレイト軍に仕掛けた。
いつもなら苦労して配置展開する彼等も、カレーへと急ぐコーレイト軍のおかげで楽に襲撃場所を選ぶことができたのだ。彼等はヘントとカレーの経路にあるルークレー丘陵地帯を狩場とした。これはこの地帯が、開けた平野部のようで実は起伏に富んだ地形であったからだ。
戦いが始まった時に勝敗が決していることこそ最高の準備であるとはこのモランの言葉であるが、まさにこれである。
リチャードは最初の横撃に反撃を命じる。奇襲だ、伏兵だとコーレイト軍がその連隊へと集中した時、反対方向からも敵が現れる。行軍中であったコーレイト軍は戦闘準備もできぬまま戦闘に引きずり込まれ、リチャードは
「正々堂々と正面から戦わんか!」
とアルメニア軍を罵ったが、モランを始めとするアルメニア軍首脳部はこの時、誰一人としてそんなものは無意味だと知っている。だから彼等がリチャードの罵倒を聞いたなら
「これは戦争だぞ、馬鹿」
と返したのではないか。
歩兵連隊が敵にぶつかり、その援護を長弓連隊が行う。大量の矢の援護でアルメニア人達は突き進み、彼等が悪の親玉だと評するリチャードは罠に嵌ったと悟った。ここに至ってリチャードは、全軍で破滅するか部下達を破滅させて自分は助かるかを選ばなくてはならない。というのも、いたるところから湧いて出てきては襲いかかってくるアルメニア人達に、コーレイト王国軍兵は大変な混乱を強いられ、反撃したはずの矢が味方の部隊に降り注ぐという有様だったからだ。
王腕ベイルが進言する。
「騎兵のみで突き抜けカレーに向かってください」
「カレーにも敵の一軍がいると言うぞ」
「先行します。カレーの中の味方が王陛下をお助けしようと門を開き撃って出るでしょう。挟撃です」
彼等の会話の最中も、アルメニア軍から激しく矢が発射され続けている。盾を頭上に掲げた兵達の下に隠れた巨躯と、腹心は屈んだまま逃げるべく進む。
王は兵達を見捨て逃げる事を選んだ。
アルメニア軍はフランドルで苦しみ我慢した同胞の分までコーレイト人を殺した。
ルークレー丘陵地帯にはコーレイト人達の死体があふれ、それはそのままにされた。
コーレイト王リチャードはカレーまで逃げる。この時、カレーを包囲していたアルメニア軍の指揮官は王の腹心アレクシ・テュプレで、彼は二択を手にした。
リチャードをここで捕える。
リチャードを行かせる。
一瞬の迷いも彼がしないのは既に答えを持っているからで、アレクシはコーレイト王リチャードには猛省を求めねばならないとしていた。それは噂聞くヘントの惨状が理由で、王があえて見たいと言ったのも、伝え聞くだけでも恐ろしいそれが為である。
ヘントでは、アルメニア人というだけで暴力にさらされる。そしてそれは、終わりがない。ある者はコーレイト人によって囲まれ、交代で殴られ、彼等の拳が痛くなると、凶器を持って暴行は続けられた。それが終わったのはそのアルメニア人が死体となって半刻後のことで、暴行をしていた者達が飽きたというのが理由である。
アルメニア人の若い夫婦は、夫の目の前で妻が乱暴され、それを見て叫ぶ声がうるさいという理由で夫は舌を切られ歯を全て抜かれた。そして手足を斬られただその為に生かされた妻と共に荷馬車に乗せられ、軍用犬を入れた小屋へと運ぶ。この時、犬達はわざと餌を抜かれた状態であり、後はもう聞きたくもないといった結末だった。
老人、子供、彼等はアルメニア人というだけの理由で、コーレイト人達によって、暴力という単語では生ぬるい行為を働かれたのである。特に問題であったのは、コーレイト人による武装自警団が率先しこれをした事で、コーレイト人の一般市民達までがこの凶状に手を貸し、コーレイト王国軍はこれらを全く止めなかった。
兵達の目の前でアルメニア人の老婆がコーレイト人達に襲われ、金品目的の強盗ではなく、ただそこを歩いていた姿が気に入らないという理由でこれをされたが、兵達は薄ら笑いを浮かべていたと言われる。
ヘントのアルメニア人達はその数をまずか一か月にも満たない期間で半数近くまで減らした。彼等はお互いに身を寄せ合い隠れ住み、ネズミや虫を食べて生きたと言われる。
アレクシはこの狂乱の責は、コーレイト人の頂点に君臨する男が取るべきと考えていて、その権限の一切をルイから許されていた。
「お前の日頃の行いによって予はそれを許す。褒美と思えよ」
「ありがたき幸せに存じます」
こうしてアレクシは、カレーから敵が王を助けるべく出た呼吸に合わせ、逃げて来たコーレイト軍ではなく、カレーの守備隊に襲い掛かった。
アルメニア軍はこの時の為に牙を研いでいたのだ。
矢を一斉に射出し、それを敵の一か所に集中する事を命じたアレクシは、自軍後方へと迫るコーレイト軍騎兵連隊が草むらに隠して張った鎖で次々と倒れるのを視認する。
逃げてくる者は必ず馬である。
この常識を利用したルイの腹心によって、リチャードは落馬し、さらに脚の骨を折った。そして痛み呻いているところを捕らえられ、彼はカレーがアルメニア軍によって陥とされる一部始終を目撃させられたのである。
「コーレイト王よ……お前はアルメニアの土地を踏むに値しない男だ。ゆえに、スコッターランドのキャリック伯がお前を迎えに来てくれる。それまで脚の怪我を治されるがよかろう」
リチャードは悲鳴をあげ、さらに王腕ウェールズ伯ベイルの生首が隣に置かれたことで白目を向き倒れた。
コーレイト王国軍がアルメニアの地で壊滅した頃、それを成した臣下達の主君は、五〇〇の近衛連隊と共にヘントに入っていた。
ルイはまず道に捨てられたままの腐乱死体の多さに眉をしかめた。兵達が王の周囲を固め、彼等はゆっくりと徒歩で進む。
民家の壁に槍で串刺しにされた男の死体は、ひどく腐敗していても生前の暴行がどれだけのものかうかがえる。
「おい、近う」
王が声を発し、近衛連隊所属の書記官が一礼し近づく。
「お前、全てを記録せよ」
この時、彼が何を見たかを彼は誰にも語っていない。そして、何を思ったかも話していない。しかし、近衛連隊の書記官によって記録されたヘントの惨劇は、アルメニア人ならば知りたくなくても教わるものとなった。
後日、ルイはアレクシにこうこぼしている。
「アレクシ……予は間違いを犯した。お前からフランドル地方でのコーレイト人の不穏な動きを耳にした時、すぐにでも動くべきだった。これを利用できるかと静観し、奴らが動きやすいようにと隙を見せた結果……予は多くのアルメニア人を殺した」
「いえ陛下……これでフランドル地方支配は確固たるものとなりました。数十年はアルメニアのフランドルとして栄えましょう」
一礼したアレクシに、ルイは苦笑し下がれと命じた。
ルイ三世はこの後、徹底してコーレイト王国を敵視している。
そしてフランドル地方はルイ三世治世の後も、コーレイト人同士の憎しみ合いが続き、アルメニア人支配が続いた。




