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異変

 

 僕の名前は、栗山優希という。

 「ゆうき」という響き自体はいいんだけど、漢字にすると、どうも女の子みたいな感じであまり名前が好きじゃなかった。男の子なんだから、「勇気」とか「雄樹」とかだったら良かったのに、と思ったことも何度もある。

 ところが中学生になってから、それが気にならなくなってしまった。

 ――発想の転換みたいな理由で。

 もちろん、両親もそこまで考えて名付けたわけじゃないと思うけどね。


  ☆☆☆


「あれ?」

 最初に異変を感じたのは、小学六年生の秋頃だった。詳しい日にちは覚えていないけど、入浴中のとき。

 スポンジで体を洗っていると、胸のところで痛みを感じたのだ。

 泡をシャワーで流して、痛みを感じた部分をよく見ると、胸の真ん中、乳頭のあたりがぷっくら膨らんでいるような気がした。

「……虫に刺されかのかな……?」

 夏ももう終わりだけれど、虫はまだ飛んでいるし。

 だからそのときは、まだそんな程度に考えていた。


 ところがしばらく経っても、腫れは一向に収まる様子はなかった。

 それどころか――

「……何か腫れが大きくなっているような」

 気のせいかもしれないけど、胸の中心だけでなく全体が腫れ始めているような感じ。別にお腹周りが太ったわけでもない。

 もしかしたら胸の先から変な毒でも入ってしまったのか。それともなんかの病気なのだろうか。

 けれど僕は友達や両親にも相談せず黙っていた。たまに胸の先端が痛いくらいで、病気らしい症状はなかったから。

 腫れが目立ってくると周りの目が気になって、僕はシャツを重ね着して厚着をし、胸の腫れを隠すようになっていた。体育の日は、下に体操着を着て学校へ行った。幸い、プールの季節も修学旅行も身体検査も終わった後なので、家族にもクラスメイトにも、裸を見られる機会はなかった。

 きっとそのうち治るはず。けどもしあと一週間たって腫れが引かなかったらお母さんに相談して病院にいこう。

 そう思いつつも、あと一週間、もう一週間、冬までに……と先延ばししつつ、冬休みを迎えた。


「……最悪」

 せっかくの冬休みなのに、僕は体調を崩して寝込んでいた。小学校最後の冬休み。宿題もあるのに。

 おもな症状は、頭痛と腹痛、関節痛。それに吐き気も。なんだか体全体がだるかった。

「……咳やくしゃみも熱もないから、風邪ではなさそうだけど……。正月が明けても治らないようなら、病院に行きなさい」

 僕の様子に、いつもは厳しいお母さんもさすがに心配そうに言ってくれた。

「……うん」

 結局、症状は良くなることなく、毎年お年賀に行っているいとこの家にも、僕だけ家でお留守番となった。

 

 正月が明けるのを待って、僕は近くの病院に訪れた。




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