表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
探偵の白猫は推理を語らない  作者: aoi
最後の演繹
44/45

白猫の推理手帳


 10


 わたしが好きで猫になったと思っているのなら、あの女──網代万菜花はとんだ大馬鹿者よ。誰よりも元に戻りたいのに、いつになったらだなんて、本当にムカつく。


 それに揃いもそろって情けない顔して。緋音はまぁ、良い質問をしてくれたわ。さすがは相棒といったところね。網代くん方は……難解なパズルを目の前に立ちすくむ子供みたい。


 言い返したくてもできないこのもどかしさ、いい加減何とかしたい。何で網代くんとしか話せないの?彼とわたしは、どんな関係があるというの?


 上座にいる刑事の顔を一瞥する──なるほど、もしかすると。


「ねぇ、網代くん」わたしは彼の足元まで歩み寄った。


「ん?どうした?」


「永田警部補にあの人……母の戸籍から、他に分かったことがないか訊いてくれる?」


 まずは、こっちの方をはっきりさせておかないと。


「……わかった」網代くんはわたしから、警部補の方へ顔を向けた。「あの永田さん、絵本千沙都さんの戸籍を調べたときに、他に分かったことはありますか?」


 すると、警部補の表情が一瞬曇った。予想通りの反応ね。


「うん……。千沙都さんには妹さんがいた」永田警部補は少し間を置いた。「名前は網代一美さん、一輝のお母さんだ。早く話すべきだったな……遅れてすまない」


「いえ、謝らないでください。ずっと、絵本さんのこと話してたんですから」


 なぜ、わたしと話すことができるのが網代くんだけなのか。それは、わたしたちに何かしらの深い繋がりがあるから。


「そう、一輝と千蔭ちゃんはいとこなの」網代万菜花が口を挟んできた。「血縁関係があるから会話することができるの。千蔭ちゃん、名推理ね」


 その口ぶり。この女、他にも何か知ってるわね──。


 どこから仕掛けるべきか。底知れない深淵に手を出すような感覚。聞き方を間違えればこちらが呑まれてしまう。


 網代家の墓前でわたしに見せたあの表情、それにあの人に対して千沙都と呼び捨てにした親密さ。


 あの人と網代万菜花は友人だった。そしてわたしと以前会ったことがあるという口ぶり。1対1で会った記憶はないから、会うとすればあの人とわたしが一緒にいたとき。


 2人そろってどこかに出かけることはなかったから、考えられるとすれば冠婚葬祭──1番可能性が高いのは、網代くんのご両親が亡くなったときのお葬式。それならわたしが覚えていないのも説明がつく。約10年前の出来事なんだから。


 わたしが猫になっていることは、あの人から知ったのだろう。おそらく元に戻る方法も知っているはず。だがなぜ、いつになったらと試すようなことを言ったの?


 それは、わたし自身に原因があるからに他ならない。


「千蔭ちゃん、渡したいものがあるの」網代万菜花はおもむろに立ち上がると、近くの箪笥から一通の白い封筒を出してきた。


「少し苦戦しているようだから、ヒント」


 座卓に置かれた封筒を見ると、宛名は網代一輝──そして差出人は、絵本千沙都となっていた。


 あの人が何故、網代くんに手紙を?謎は深まるばかりね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ