表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
探偵の白猫は推理を語らない  作者: aoi
最後の演繹
37/40

プロローグ 〜かつての相棒〜



 彼女との出会いは、6年前──中学1年生の秋だった。


 父の急な異動で転校してきたわたしは、クラスにまったく馴染めずにいた。


 何ヶ月か経てば、また転勤で別の県や市に行くことになる──仲良くなったところで別れるのがつらくなるだけ。


 そんな態度を察してか、クラスメイトたちは日が経つにつれ、話しかけてこなくなった。


 数日が経ったある日のこと、教科書にノート、ペンケース。忘れ物がないことを確認し、「よし」と指で机を差してから、席を立ったときだった。


 正面から芯の強さを感じさせる、女子生徒の声が飛んできた。


「どうしていつもそんなに不機嫌なの?」


「え?」


 わたしは眉をひそめた。女子生徒が身につけている制服の胸元に付けられた名札には、『絵本』と印字されていた。


「絵本さんには関係ないでしょ」


 そう言って、わたしは教室を足早に出た。教室の時計は10時30分を指している。次の授業の理科室まで5分前には着いておかないと。


 すると、彼女はすぐ追いついて来てこう言うのだった。


「わたしの名前を知ってくれているなんて光栄ね」


「……胸元のほうに書いてあったから」


「なるほど……」彼女は落ち着いた声で言った。「それで、和田さん。お父さんとお母さん、どちらが自衛官なの?」


 わたしは立ち止まると、目を丸くした。隣にいる彼女は得意げな顔でこちらを見ている。


「えっ?何で……」


 父の職業は誰にも言っていないはずなのに。なぜ、彼女は分かった──?


「簡単よ。それより」彼女は歩き出した。「さっさと歩きましょ?5分前に間に合わなくなっちゃうから」


「いや、何で分かったのかを教えてよ。わたしは学校で父のことなんて話したことない」


 わたしは彼女に追い付き、隣を歩いた。


「お父さんの方か、合点がいった。所作もすべて、憧れからきているものなのでしょうね」


「別に憧れてなんか……」わたしは声に怒りを込めた。「いいから教えてよ。何で分かったの?」


「椅子から立ち上がったときの指差し確認」彼女は言った。「目で見て、指で確認し、口に出す。安全確認において徹底されてる職業だと分かる」


「それだけ?駅にいる車掌さんも同じようなことすると思うけど?」


「もちろんそれだけじゃないわ」彼女はわたしの胸元に付けられた名札を指差した。「和田さんは、胸元のほう、と言った」


「それが何なの?」


「自衛官がよく使う言葉遣いなの。確かに、一つひとつ弱すぎて決定打にはならない。でも、複雑な要素が組み合わさることによって、真実が導き出されることがよくあるのよ、和田さん。早足で歩くのも、もちろん含まれている」


 あと、転勤が多いというのも加味している、と彼女は付け加えた。


 わたしは大きく息を吐いた。もちろん、観念したという意味で。


「どう、当たった?わたしの推理。ねぇ、教えて?」


 彼女は無邪気な笑みを浮かべ、わたしの顔を覗き込んできた。人のプライベートに土足で踏み込むような図々しさを兼ね備えた、彼女──絵本千蔭との出会いだった。

 

 これから2人で数々の事件を解決していくことになるのだが、それはまた別の機会に。


 それよりも、今は、行方不明になった彼女の捜索をしなければ──。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ