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山里菜乃葉「君と過ごした夏祭り」

菜乃葉の前世行った夏祭りの話です!

廊下からドタドタ走る音が聞こえてくる。

誰もいない静まり返った教室に足音が響く。


「菜乃葉!おまたせ!帰ろうぜ!」


いっくんが教室に少し汗を流しながら入ってきた。


「遅かったね。また先生からの呼び出し?」

「そう。友達の揉め事に巻き込まれてさ」

「ちょっとは面倒事に首突っ込むのやめたら?トラブルメーカーさん?」

「んだとこら」

「わ〜!いっくんが怒った〜!逃げろ〜!」


私は教室から走って出た。

いっくんは卓球部。

私は陸上部。

なら、私のほうが足速いし、追いつかれない。

私は全力疾走した。

言っくんの様子を見ようと振り返ると、いっくんの姿はなくなってた。


「あっれれ〜?降参ですかぁ〜?」

「そんなわけあるか。クソバカ」


いっくんが私の鞄を私の頭に軽く当てて言った。

あ、鞄持ってきてくれたんだ。

いっくんは私に鞄を渡した。


「ありがとう。……なんでいるの?」

「言い方」

「なんでいるんですか?」

「そういうことじゃない」


じゃあどういうことなんだろう。

いっくんはため息をついた。

私はなんとなくいっくんの顔の目の前で両手を叩いた。


「うわっ!びっくりした」

「え?いや、幸せが逃げたから」

「逃げるか!……何でお前に追いついたかだっけ?先回りしたからだよ」

「先回り?」

「お前ならこっちに来ると思ってたから近道した」


流石私に並ぶ成績を持つ人間だ。

まぁ、未だに私の順位は越されてないけどね。

私達は学校から出ようと、昇降口に来た。


「菜乃葉」

「何?」

「これ」


いっくんが指さしたのは花火大会のポスターだった。

そういえば、行ったことないな。

花火大会とかお祭り事に。

ずっと勉強してたからな。


「去年も一昨年も雨だったんだよな〜」

「そうなの?行ったことないからわからないや」

「え?今どき珍しいな。……ちょうど明日だし、行くか?」

「いいよ」

「え゙?」


ちょっと行ってみたかったんだよね。

初めてだし楽しみたいなぁ。

出店とか出るのかな?

そんな事を考えていると、いっくんが私をジロジロ見ていることに気がついた。


「……何?」

「いや、即答されるとは……」


コイツは私を何だと思っているのか。

確かに私は今までいっくんからの誘いは断っていた。

家庭教師が来るし、何より予定が合わなかったからだ。

でも、夜なら話は別だ。


「まぁ、家庭教師もこの日は来ないし。夜なら家を抜け出せると思ったんだよね」

「なるほどな。じゃあ学校に集合な」

「分かった」


私は上靴を下駄箱に入れながら言った。

楽しみではある。

けど、その反面両親が許すかどうか分からない。

そう思いながら昇降口を出ると。


「あっ!」

「びっくりした。何だ?」

「楓!」


そこには楓がいた。

楓は私を見て駆け寄ってきた。

そして、足に擦り寄り始めた。


「うわぁ〜!可愛い〜!」

「楓、チュールあるぞ?チュール」

「校舎裏に行こうか。ここじゃまずいし」


なんだかんだいっくんも楓が好きなんだな。

私は楓を抱っこして、いっくんと校舎裏に行った。

チュールを舐める楓は可愛い。

世界一可愛い。


「弟と妹を思い出すなぁ……」


私は思わず呟いてしまった。


「弟と妹がいたのか?」

「昔の話だよ」


死んでしまったあの子達とこの子を重ねてるわけじゃない。

ただ、美味しそうに食べる姿が似てるんだ。

楓は食べ終わってすぐにどこかへ行った。


「さてと……。帰ろうか」

「そうだな」


私達は他愛ない会話を続けながら帰り道を歩いた。


◇◆◇


「お父さん、お母さん。明日の夜、出かけてもいいですか?」

「駄目よ」


即答だった。

だと思ったよ。

私は両親のいる部屋から出た。

私は諦めない。

昔、遠くから見えた花火。

綺麗だった。


「真子、いる?」

「ここに」


真子は私の専属の使用人だ。

彼女の背格好は私とほぼ同じだ。

だから身代わりを頼むことがよくある。


「明日、私の代わりに部屋にいてくれない?」

「……ご飯は?」

「もちろん部屋にもってこさせるわ」

「や、やります!」


真子は笑顔で言った。

そう、真子はとにかくご飯を食べるのが好きなのだ。

しかも部屋にいるだけで美味しいご飯が食べられる。

真子からしたらいい仕事すぎるだろう。


「それじゃあ、明日はよろしくね」

「はい!」


◇◆◇


私は学校から帰ってから、真子に着物を着付けてもらった。

真子は私の服を着て、ウィッグを付けて準備万端だ。

私の浴衣は水色で、花の絵があるものだ。

私は見つからないように玄関に向かって、無事に家を出ることができた。

そして、私は急いで学校に行った。

閉まっている校門の前で、ラフな格好をしながらスマホを触って待っているのはいっくんだ。

私はいっくんに駆け寄った。


「おまたせ〜!」

「さっき来たばっかだ。安心しろ。……浴衣なのか」

「お祭りって浴衣で行くものじゃないの?」

「私服でもいいけどな」


そうだったんだ。

真子には手間のかかること頼んじゃったな。


「行こうか」


いっくんは歩き出した。

私はその後を急いで追いかけた。

ついたのは大きな公園。


「人が多いなぁ」

「祭りだからな」


思っていたより人が多かった。

そのうちはぐれそう。

あれ?

射的……?

私は、射的という屋台が目に入った。


「いっくんいっくん、あれ何?」


私は屋台を指さしていっくんに聞いた。

いっくんは指を指した方向を見た。


「あれは射的だな。コルクを専用の鉄砲に詰めて打つんだ。景品が落ちたらその景品をもらえる。やってみるか?」

「うん!」


私達は屋台に近づいた。

屋台のおじさんは笑顔で挨拶してくれた。


「いくらですか?」

「五百円や」


私は財布から五百円を出しておじさんに渡した。

コルクは五つ。

チャンスは五回。

弓道と似たようにやれば多分当たる。

私はコルクを鉄砲にはめ込んでレバーを引いた。


「お兄さんら、他県から来たん?」

「県民ですよ」

「ほんまかいな?」


隣でいっくんとおじさんが話している会話を聞きながら、私はお菓子を狙った。

トリガーを引くと、コルクが飛び出した。

それはお菓子に命中。

周りからは「お〜」という歓声が上がった。


「お前、いつそんなことができるようになったんだ?お母さん感激」

「誰がお母さんなのかな?いっくん」


私はいっくんの頬を引っ張った。

いっくんは暴れて逃げようとしてるけど、更に痛くなることに気がついていないのだろうか。


「痛いだろ!何するんだ!」

「知らないよ!いっくんが自称お母さんになるからでしょ!いっくんみたいなお母さん、お断りだから」

「なんてこと言うんだお前!てか、何で射的であんな命中できるんだよ!キッショー!」

「昔弓道をやってたからだよ!矢をいっくんの脳天に刺すよ?」

「え?どうやって?」

「手でこう……。グサッて」

「撃てよ!」

「いっくん、撃つんじゃないの。射るの」

「どっちでもいいわ!」


私達が言い争いをしているのを、不思議そうな目で見てたおじさんはどこからか来たおばさんに何か言われたらしい。

そして、納得したような顔をした。


「何やあんたら、付きおうてるの?」

「「付き合ってません!」」


何でそうなるのか。

私がいっくんと付き合うわけないでしょう。

私はもう一度鉄砲を持った。


「なんかむしゃくしゃしてきた」

「……俺を撃つなよ?」

「撃たないよ!!」


本当に私を何だと思ってるんだか。

私は小さな的を撃つことにした。

この的を撃ったら、横にある大きなぬいぐるみがもらえるらしい。

やってみよう。

私はもう一度レバーを引いた。

そして、狙いを定めてトリガーを引いた。

コルクは命中して的は倒れた。


「あと三発か」

「待ちぃ、流石に大物は一個までにしたってな?破産やってまうから」

「え〜」


仕方ない。

小物のキーホルダーとかにするか。

私は再び鉄砲のレバーを引いて構えた。


◇◆◇


「お前マジキモい。何で全部命中するわけ?」

「いっくんはどんだけ食べの物を食べるわけ?」


私達は一通り屋台を回った。

いっくんは食べ物をたくさん買って、私はひたすら遊んだ。

花火が上がる時間まで。

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