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オーリス・クレイト「ミスコン(後編)」

「それでは〜!エントリーナンバースリー!琴葉〜!!」


舞台袖から出てきた琴葉は黒と赤を基調としたゴリゴリのゴスロリを着ていた。

ふわりと揺れる膝下丈のスカートと、レースとリボンが盛られすぎて逆に清々しい装飾。

黒のヘッドドレスが頭に着いている。

白いタイツとロリィタブーツまで完全装備。

決まってんな。

顔は決まってないけど。

死人の目をしてるけど。


「うーん、微妙だな」

「てかちょっと目が怖いんだけど」

「琴葉の感情が死んでる……」


全員が黙って見守る中、琴葉はきっちりとお辞儀をしてから、手に持っていた日傘をゆっくり開いた。

そしてポーズを取った。

清楚系にゴスロリはあまり似合わない。


「琴葉、恥ずかしいとかないの?」


菜乃葉が恐る恐るといった形で訊いた。

流石に羞恥心はあるだろ。


「この体はセシリア・フィーリアのもの。野々原琴葉の意思はない」


なかった〜。

羞恥心はなかった〜。

琴葉は舞台袖に姿勢を崩さずに歩いて行った。


「イーベル達ほどダメージを受けてないな」

「まぁ、琴葉の理屈には納得できるしね」

「じゃ、じゃあ次!エントリーナンバーフォー!伊里也〜〜!!」


場の空気を一気に変えようと、菜乃葉が強引に次を呼び込んだ。

おっ、ついにイアンの番か。

イアンは舞台袖から出てきた。

その場にいた全員が息を呑んだ。

完璧だった。

さっきはよく見てなかったけど、濃紺のセーラー服に白い襟とリボンがイアンによく似合っている。

スカートの裾がふわりと揺れた。

紺色の髪と緑色の瞳に全てがマッチし過ぎてる。


「やべぇ……イケるかも……」

「……いや、可愛い」

「普通にクラスでモテてそう……」


俺もリリアもアエテルナも口々に言った。

それほど似合っているんだ。

もっとよく見とけばよかったな。


「言ったでしょ?似合ってたって」


イアンは恥ずかしそうに顔を赤らめつつも、その場で一回転した。

そして右手を右頬に当ててウインクした。

誰も何も言わなかった。

似合いすぎてて。


「ちなみに……。この姿をポスターにして王立学園の広報に使う予定です!」

「はぁぁぁぁぁぁあああああ!?聞いてない!」

「言ってないからね」


イアンは全力で嫌がってるけど、全員がそう思っただろう。

むしろ欲しいんだが。

このミスコンの優勝者は言うまでもなくイアンだった。


「……お前ら、全員許さないからな」


そんなつぶやきを俺達は全員無視した。


◇◆◇


ミスコンの舞台を撤収し終えて、俺達は菜乃葉の部屋でお茶会をしていた。

そしてふと俺は思った。


「菜乃葉の一発芸ってどんなの?」


俺の問いかけに全員がきょとんとした。


「見たい?」


菜乃葉がニヤニヤしながら訊いてきた。

そんなに自信があるのか。

上等だ。


「見たい」

「そっかぁ。伊里也」

「どうぞ」


イアンは菜乃葉にさっき着てたセーラー服を渡した。

ん?

菜乃葉はそれに袖を通して、背中の襟を上にめくった。

椅子に座って渋い顔でこちらを見た菜乃葉。


「現代の襟ザベス」

「…………ブッ…ブハッ」


なんだろうこのジワジワ来る感じ。

襟ザベスって人が何なのか分からないけどジワる。


「はい、オーリス笑った〜!罰ゲームでギディオンの国王の正装を着てもらいま〜す!」

「は?はぁぁぁぁああああ!?」


◇◆◇


「ブッ……。似合って…ブフッ……」


菜乃葉は爆笑しながら俺の正装を褒めようとした。


「オーリス……。クソ似合ってない……」

「ちょっとキモいかも……」

「ギャグとしては会ってるんじゃない?」

「え?ちょっと無理くね?」


イアンもイーベルもセシリアもギディオンも全員笑いながら言った。

こいつら絶対いつか殴る。

でもまぁ、こういうのもたまにはいいかもな。

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