佐藤柚木「探し人」
今回は柚木視点の話です!
「……」
俺は山積みの書類の机を見て、眉をひそめている。
どうも佐藤柚木改め、ギディオン・アスクレインです。
琴葉と結婚して即位したのはいいものの、琴葉が仕事をしない。
菜乃葉達が過去に行っている時はちゃんとしてたんだけどな。
俺は言葉の部屋を出た。
そして菜乃葉の部屋に向かった。
「菜乃葉?いるか?」
返事がない。
庭園か?
――ガタッ。
立ち去ろうとした時、中から音が聞こえた。
俺はゆっくりとドアを開けた。
そこにいたのは、
「伊里也!」
何とうつ伏せで倒れている伊里也だった。
部屋には他に誰もいない。
俺は伊里也を仰向けの状態にした。
「何があった!?まさか刺客か!?」
「……いや、似たようなもん」
「……え?」
「お前の妃に背負い投げされたんだよ。んで、菜乃葉が拉致られた」
「……スウゥウウウ」
俺は深呼吸をした。
また菜乃葉に迷惑かけたのか。
あの馬鹿はどこまで馬鹿なんだ。
「行くぞ被害者」
「ついていくぜ、加害者の夫」
俺達は廊下に出た。
廊下には紬がいた。
彼女は千年前と変わらず、菜乃葉に仕えている。
「紬、菜乃葉を知らないか?」
「えっと、菜乃葉なら庭園の方に拉致られて行きましたよ」
「よし分かった。行くぞ」
◇◆◇
庭園に来た俺達は辺りを見回した。
でも、どこにもいない。
あのクソ馬鹿、逃げ足だけは早いな。
引き返そうと思った先に、琴葉と菜乃葉がいた。
菜乃葉は息が絶え絶えだ。
「琴葉ぁぁああ!」
「菜乃葉!平気か!?」
「菜乃葉!逃げるよ!」
「えぇ……。ちょっと待って……」
「ほーら、早く!」
琴葉は菜乃葉を無理矢理走らせて逃げた。
あいつ……!
「追うぞ!」
俺達は勢いよく走った。
角を曲がった琴葉達に続いて俺達も曲がろうとした。
「うおっ」
誰かにぶつかりそうになった。
あっぶな……。
顔を上げると、ディーアがいた。
「王族が廊下爆走してる……」
「ディーア!琴葉を止めるのに協力しろ!」
「え〜。嫌ですよ。僕も忙しいですし。王宮魔導士も暇じゃないんですよ?」
「よし分かった。国王命令だ。来い」
ディーアはすごく嫌そうな顔をした。
仕方ないだろ。
国が最悪終わるぞ。
「はぁ、分かりましたよ。この荷物置いたらでいいですか?」
「ああ」
ディーアは俺達に背を向けて歩き出した。
「横暴な国王な国なんて滅びちゃえっ」
「不敬罪でぶっ殺すぞ?」
◇◆◇
「いないな」
「陛下、もう諦めましょう。今は もう夜ですよ?」
ディーアが俺に言った。
確かにあれからずっと探しているけど、菜乃葉どころか琴葉もいない。
「はぁ、諦めるか。ディーアは戻っていいぞ」
「はい。失礼します」
ディーアは背伸びをして帰って行った。
俺と伊里也は諦めて飯を食いに行くことにした。
「そういえば、今日は伊吹も見てないな。何かあったのか?」
「え?由梨奈とイチャついてんじゃねぇの」
「んなことできたらやっとるわ」
後ろから声が聞こえて振り向くと、由梨奈と一緒に歩いてくる伊吹の姿があった。
二人の顔は若干疲れ気味だ。
「どうした?そんなゾンビみたいな顔して」
「柚木には言われたくない」
お互いゾンビみたいな顔してるんだよなぁ。
多分こいつらも琴葉に振り回されたんだろう。
「ついて来い」
伊吹は俺達の前を歩き始めた。
俺と伊里也は顔を見合わせた。
「大丈夫よ。今日一日あなた達が探し回ってた菜乃葉達のところに行くだけよ」
由梨奈がそう言った。
菜乃葉達の居場所を知ってるのか?
俺達は伊吹について行った。
ついたのは食堂。
もう飯を食べてんのかよ。
「「「開けてみて」」」
由梨奈と伊吹がそう言った。
俺はゆっくりとドアを開けた。
中は真っ暗闇だ。
「何なんだよ……」
俺は中に入ってみた。
――パンパンパン!
大きな音と共に電気がついた。
そこにはクラッカーを持った菜乃葉と琴葉がいた。
伊吹達も中に走って入ってきた。
何だよ。
「「「「「柚木!お誕生日おめでとう!」」」」」
「え?」
全員がニコニコして俺にそう言った。
「たん……じょうび……?」
「もう!伊吹ってば昨日になってそんなこと思い出すんだから!準備大変だった〜!」
「いや、琴葉は知ってないとやばいから」
「え〜」
琴葉と菜乃葉の会話を聞きながら、呆気にとられている俺に伊吹が近づいてきた。
「ほら、今日は佐藤柚木と佐藤伊吹の誕生日だろ?」
そうか。
そうだった……。
今日は前世の俺達の誕生日だ。
忘れてた。
俺は伊里也を見た。
伊里也は不敵に笑った。
あいつもグルか。
「どうだ?みんなが用意した誕生日会は」
「……」
前世では両親と伊吹しかいなかった誕生日会。
友達がいるのも悪くない……。
「盛り上がりそうだな」
「だろ?」
「すごく……。楽しそう」
俺がそう言うと、伊吹は満面の笑みを浮かべた。




