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episode7 女好きな男


ランデの襲撃より2日前、ツトラのセカンドランドにあるバー、グランシャリオに1人の男が入店しくる。


その男は金のメッシュが入った七三分けをしており、灰色のコートをきていた。


その男はバーのカウンター席に座っている長髪の女性の横に座るとマスターにマティーニを注文した。


「お1人で飲んでいるんですか?」


横に座っている美しい女性は少し驚いた後、口を開く。


「えぇ、1人よ。」


「良ければ、一緒に飲みませんか?」


その男がそう言った後、マスターからマティーニを受け取る。


「1人で飲むより2人で飲む方が楽しいですよ。」


その男には不思議な魅力があった。


「もしかして、ナンパ?」


女性の美しい瞳がその男を睨みつける。


「ナンパなんてしませんよ。」


「なら、どうして私に話しかけてきたの?」


「それは、あなたが悲しそうな表情でお酒を飲んでいたからですよ。オレも最近つらいことがありまして、それで、つい言葉をかけてしまいました。」


マティーニを飲みながら、その男は言葉を綴る。


「すみません。いやでしたか?」


「いえ、そんなことは無いです。一緒に飲みましょう。」


その女性は見るからに酔っていた。


「嬉しいです。あなたと出会えた夜に乾杯。」


その男がグラスを少し上にあげると、女性もそれに習い、グラスを少し上にあげる。


「まだ、自己紹介してませんでしたね。リッチ・マイルドって言います。」


「リッチ、いい名前ね。私はアルビーナ。」


2人のお酒が段々と減っていく。


「それで、つらい出来事って何があったの。」


アルビーナの瞳はまだリッチを疑っていた。


「そんな、たいした事ではありませんよ?」


「それでもいいわ。聞かせてほしいの。」


「わかりました。」


そう言うとリッチは語り始める。


「オレは、リートのとある会社で働いているんです。あぁ、そこがブラックだから辛いってことでは無いんです。むしろどちらかといえばホワイトなんです。残業はあるにはありますが、そんな長い時間では無いですし、残業代もしっかりでます。」


そこで、一瞬言葉が詰まる。


「ただ、 ある日気づいてしまったんです。」


「何を気づいたんですか?」


アルビーナが興味深そうに聞いてくる。その瞳から少しリッチに心を許したことがわかった。


「自分は何をやっているんだってね。オレの家は裕福ではありませんでしたが、貧しくもありませんでした。どこにでもある普通の家。そこで生れた普通の子供でした。子供の頃のオレは普通が嫌いでした。皆1回は自身が特別だったらなと考えたことがあるとおもいます。オレは普通がイヤで特別な存在になりたいという思いから、勉学に勤しむようになっていきました。」


テーブルに置いてあるマティーニを1口飲むと再び話し始める。


「そのかいあっていい大学に入れ、良い会社に入れました。ただ、その中で根本にあった特別な存在になりたいというおもいを忘れてしまっていたんです。決まった時間に起き、決まった時間に会社に行って、決められた仕事をして、家に帰り、決まった時間に寝る。そんな機械的な毎日。とくべつでもなんでもないただの歯車。その事に気づいてしまった。自身が歯車であること。自身があれ程なりたかった特別な存在ではないということ。普通の存在であるということを。」


再びマティーニを口に運ぶ。


「気づいてしまってからは、仕事に身が入らなくなってしまい、やる気が段々となくなっていきました。それに気づいてしまったことが辛いんです。他の人達は普通なことを辛いとは思っていない。それどころか、この会社に入れて良かったと喜んでいます。この気持ちを誰も理解してくれない。そう思うとより一層つらくなってしまいました。そんな普通がイヤで来たこともないセカンドランドまで来てしまったという訳です。」


話終わる頃にはマティーニのグラスは空になっていた。


「ほら、たいした事ではなかったでしょ?」


そう言うと、リッチはマスターに再びマティーニを頼んだ。


「いえ、そんなことはありませんよ。」


そう言うアルビーナは既にリッチに心をひらいていた。そして、今度はアルビーナが語り始める。


「私は結婚してるの。それで、先日、初めて夫と喧嘩をしたんです。最初は些細な事だったの。でもいつの間にか夫との溝が大きくなっていって。お互いイライラすることが多くなって。それで、今日、口論が過激になっていって、それで、夫に酷いことを言ってしまったの。」


アルビーナは落ち着くためか、お酒を1口飲む。


「それで、私怖くなってしまって、夫の顔も見れずに逃げ出して来てしまって。このまま別れてしまうんじゃないかって不安なの。怖いの。そして、何より、夫の心を傷つけてしまったことが悲しいの。」


一通り話し終えたアルビーナは1呼吸し、心を落ち着かせる。


「ごめんなさい。すこし、御手洗にいってきます。」


「えぇ。」


アルビーナは椅子から離れるとバーに設置してあるトイレに向けて歩き出した。


1人になったリッチ・マイルドは頭を抱えた。なぜなら、狙っていた女性が既婚者であったからである。


リッチは無類の女好きである。だが、どんな女性でも良いという訳ではない。彼にもルールがある。その1つに既婚者であり、心が夫にある女性は狙わないというものがある。


このルールは彼にとって絶対なのだ。


「はぁ、アルビーナは諦めるかぁ。タイプだったのになぁ。もう少しでいけそうだったのになぁ。はぁ。」


そんなことをボヤいているとアルビーナが帰ってきた。


そこから2人は夫とどうやったら仲直り出来るかを話し合ったり、それとは全く別のことを話したりして、盛り上がっていった。




読んでいただきありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価お願いします。あと、よろしければ感想やレビューも書いていただけると嬉しいです。

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