研究者の悩み
第十五話研究者の悩み
私は山吹春久最近殺意増幅障害というものについて研究を始めており、政府より実験の検体を渡された。
その検体は……私の妻の正美だった。
『研究者たるものどんな実験にも冷静な心を持て』というのが父の口癖だった。
まさかここで父の口癖の意味を痛いほど理解することになるなんて思いもしなかった。
正美が私に殺意のこもった言葉を浴びせてきた。
私は……耐えられず正美の口を縄で塞いだ。
殺意増幅障害になった人は腕力だけで人体をバラバラに出来るほど力が増す。
まあ私には関係ないけど……なぜかと言われれば私は正美と永遠を生きたくて不老不死の研究のために自分を実験体にして試し成功した。
今では身体をミンチにされても自動でくっついて修復するそして病にもかからない。
正美にも不老不死になってもらおうと提案したが『私は限りある時間の中で春久さんとの思い出を作って死んだ後はその思い出の中で行きたいの。だから私は春久さんが元の身体に戻って欲しいの』と断られてしまった。
今となっては無理にでも正美の身体を変えなかったことを後悔している
「正美ごめんな、こんなことをしてしまって」
私はまずなぜ症状が出た人がそれほど力が増すのか、その増す理由や原因は何かを確かめることにした。
もし負の感情の有無で症状が決まるとすれば、正美に楽しい思い出してもらえば殺意は減るはず……そうすれば治るかもしれない
たとえどんなことをしても正美を絶対に治す!!
私は正美に写真を見せたり、私との暮らしの話を聞いてもらったり……正美との思い出を伝えること三時間正美は暴れながらも時折り表情を変えていた。
表情を変えた瞬間は正美の力が弱くなるのが分かった。
どれだけ弱くなったかというと握られただけで私の身体をちぎるほどの力が骨を折る程度に弱くなった。
そしてさらに力が大幅に下がったのが私が正美にプロポーズをした話をした時……もしかすれば症状の出た人の『正の感情の記憶を思い出す』ことが力が弱くなるのなら……もう症状が出た人を殺さなくてもよくなるはず……それに思い出で治る可能性があるなら
「私は正美に思い出も私の想いも全てを伝える!! それに君が願った通り元の身体に戻れるようにする……だから、どうかまた君の……正美の笑顔を見せてくれ。私は正美と一緒にいられることが一番幸せで……私は正美のいない人生は私から色も感覚も何もかもを奪うんだよ、今じゃ死にたくても死ねないし……ごめんな正美にこんな身体になってくれなんて頼んでしまって……提案を断ってくれてありがとう。正美には幸せになってほしいから」
私が正美に話しかけていると
パチン!!
「私だって春久さんのいない人生なんて嫌なんです!! だから……死にたくても死ねないなんて言わないで……どうせ春久さんのことですから『この身体だったらどうやったら死ねるんだろうか』って考えながら試したんでしょ!!
もう二度春久さんが死にたいなんて思えないほど私がずっと一緒ですから……これからたくさん思い出を作りましょう。私を治してくれて……ありがとう春久さん」
私は夢を見ているのだろうか……正美の笑顔が再び見られる日がくるなんて
治ってほしいと願っておいて本当に治って驚くなんて
「あぁ……あぁ!! たくさん思い出を作ろう正美!!」
私は涙を流し正美を抱きしめた。
抱きしめた後……私の視界は真っ赤になった。
理由はすぐに分かった
「……ごめん……な……さい……春…………ん」
私の視界を真っ赤にしたのは正美の血だと理解した。
「東島総理こっちは処理完了です。これでこの男を覚醒させられます。それでは戻ります」
処理だと……それに今こいつ東島総理って言わなかったか?
まさか…………いやそんなことはどうでもいい正美が殺されたのだ
……殺された? そんなはずない……正美はただ寝ているだけだ、だから起こす
「教授こいつを起こそうとか考えてるんだろが……本当は無理なことぐらい、こいつは死んだんだよ。見りゃ分かるだろ……なぁぁあ!! あっははははは幸せそうな奴が絶望に堕ちるその顔を見たくて俺はこの仕事してんだからな!! もっと見せてくれよなぁ!!」
「うるさい……うるさいうるさいうるさい」
俺の意識はそこから途切れた。
「そんじゃ覚醒させれたしずらかりますかね!! これでお前も俺と同じ"覚醒者"だけどよ一体どんな気分だおい!!(まあ覚醒したばかりだし意識はないが身体は動く。絶望が見られんのは惜しいが今は我慢せんとな)」
一時間後
「東島総理今回も上手くやりましたよ。これで俺が知る限りでも覚醒者は十七人ですけど、そんなに覚醒者を増やしてどうするつもりなんだ?」
「貴様は知る必要はない……が何も知らないよりは貴様の場合は知っておいた方が上手くいくだろうから伝えておく。ワシの目的は覚醒者を集め日本を守ること」
「それぐらいなら伝えりゃいいだろ。理想としては立派なことじゃねえかよ、なんで言うの渋ったんだよ?」
「守る方法が人道的ではないからだ。まあこんな世の中で人道的にするほうが難しいがな。貴様以外残ってないのがその証拠だ」
「あぁ〜理由を知って俺が辞めるんじゃって怖かったのか? 寂しがり屋かこのこの」
「本当生意気なガキだな貴様は……だが貴様のそういうノリが案外ワシは気に入ってる」
「あっありがとう……なんだよ突然、別れみたいに」
「たまには感謝を伝えないといけないと思っただけだ気にするな」
「はいはい気にしない気にしな〜い。そのうち次の仕事を頼むわ」
「早めに頼むから待っとれ」
次回狙われた天夜お楽しみに
読んでいただきありがとうございます!!
更新は出来るときにしますね