8.カズは一路日本海側を目指した-ああ、破壊すべき施設だ-
全42話予定です
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横田基地を奪還し、横須賀と共に同盟連合の海兵隊が上陸、駐屯したあとにカズはゼロゼロから降りて海兵隊の軽車両で一路日本海側を目指した。
ある目的の場所に向かうためである。
ゼロゼロとゼロワンには[ホログラムを一応かけておいて]と言い、ゼロゼロには[身体は任せるから何かあったら指示よろしく]と伝えて現在に至る。
「しかし、我が軍の人型は本当に凄いですな、既存の軍隊がいるとはいえたった五体で国一つを制圧とは」
同乗している兵隊にそう聞かれる。
「その為の人型、だからね。貢献できてうれしいよ。そんな事を言えば、上で頑張ってくれた戦闘機も、こうして駐屯しているみんなもすごいもんさ」
お世辞とも本音ともつかないような返し方をする。
「で、今回向かうのが」
「ああ、破壊すべき施設だ」
この時の為に研究所から二人同伴させていた。それはカズが万一手間を取られた時にでも作業が出来るように、である。その作業、それは研究データの確認と吸い出し、それに破壊である。
なので総人数としては十名足らずだが、その中に爆破のスペシャリストが二名含まれてもいるのだ。
途中高速を使い一路山岳地帯を目指す。そこを抜けると目的地まで直ぐだ。
「そのインターを降りてくれ」
ここからはカズが道案内する他ない。
何といっても生体応用工学研究所はカズの古巣だ、そこへのアクセスはここにいる人間には分からないし、当然カーナビにも載っていない。
あちらに、こちらにと道案内をして森の中に車を走らせるとそれは見えてきた。
――久しぶりだな。
ここを離れてもう何年になるか。だが、その施設は確かに存在していた。外見を見るに手入れはされているし手入れがされているという事は[人の手が入っている]となる。
詰め所に数名の兵士が経っていたが、こちらの武装は普通の車とは違う。軽車両、というカテゴリーに入る、というだけで戦闘能力が無い訳ではない。直ぐに備え付けの機関銃でそれらを黙らせる。
「裏手にも回って。ここは六角形をしている。その頂点すべてに監視塔があるはずだ」
そう言うと、マシンガンで次々に管理棟を潰していく。それは直ぐに達成できたようで、
「制圧は完了しました」
隊員の一人がカズに言う。
「四人ほどこの入り口に残って。出入口はここだけだから、何かあったら一応素性は聞くけども、抵抗されたら射殺な方向で」
誰一人しとて生きてここから出す訳にはいかない。それはここに来る前から分かっていた事だ。必然と隊員たちの表情がこわばる。
「よし、中に入ろう」
そう言ってはみたものの、セキュリティーパスがない。カズが爆破処理しようとした時、
――もしかして……。
セキュリティータッチセンサーに自分の手をかざす。
すると、
「開いた?」
確かにカチャリという音と共にそれは外れたのだ。
――オレがいた頃のデータが残って、いる? それとも何かの罠なのか。
「開きましたが」
隊員が聞いてくる。
「オレはもうここの人間ではない。すんなり解錠出来たのはちょっと考えずらいから用心していこう」
隊員たちがまず銃を持って中に入る。先頭に二人サブマシンガンを持った兵士が陣取り、ちょうど中央にカズと研究員がいて、後詰をまた隊員が務める、そういう陣形だ。
「まず、所長室に行こう。所長がいるならまずは話を聞きたい」
カズは所長室を指示する。入り口を入って左手に進む。
この建物は六角形の形に廊下が繋がっていて、それぞれの両側に部屋がある。まるでベンゼン環のようなその形の外側はレベルの低い、例えば保管室や倉庫だったりがある。そしてベンゼン環の内側の部屋、それがまさに非人道的な実験がなされていた部屋、カズにとっての[日常]だった部屋である。
そして所長室は入り口とちょうど対角線上の、一番進んだ奥に位置している。
それぞれ一定間隔にセキュリティー用の扉が設けられているのだが、どうした事かすべて解放されている。
――まだ研究は続いているはず、こんなのはあり得ない。もしかして罠?
そうカズは考えながら隊列を組みながらすすむ。
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