3.今回の作戦は乗り気じゃあなかったりする?-私はちょっと気になってるかなぁ-
全42話予定です
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「カズ君、もしかして今回の作戦は乗り気じゃあなかったりする?」
ゼロゼロだ。
「うーん、痛いところをついてくるねぇ。今は横田基地の奪還が、って、まぁ移動中だし、索敵はきみに任せるとして、そうだねぇ……」
とまで出て言葉が詰まる。
それを、
「ゴメンね、変な事聞いちゃって。でも私はちょっと気になってるかなぁ。おやじさんとか、その……お父さん、お母さんとか、ね」
ゼロゼロはとても話しにくそうにしている。それはカズだって同じだ。
カズは、いやカズ[たち]は渡航する際[友人や両親の事は諦めてくれ]と言われていた。それは日本政府が[保護]の名のもとに隔離してきたからに他ならない。
渡航組は、ある意味[すべてを捨てて]こちらに渡ったのだ。その日本を今、自国の領土とすべくこうして作戦行動をとっている。
――その辺りの話も、作戦が終わってから話さないといけないよなぁ。
カズがそんな事を考えていると、
「私は、出来る事なら会ってみたいっていうのが本音かな。まあ、この姿だから会う事は絶対に出来ないだろうけど。せめてあと一週間早く事前に渡航の事を教えてくれてれば、って今でも悔んじゃうよ」
カズ[たち]日本にいた研究者は、生体応用工学研究所にいた研究者たちは、二年を過ぎると離職が出来なくなる仕組みだった。それは応用研究職、つまり人体実験の段階に進むためである。
秘密を知られては後戻りはさせない、そういう事なのだ。
当然二十四時間の監視が付くようになるし、外部との交流もある程度制限される。通話や通信の類も制限が掛けられていた。スマートフォンは自分の物から支給品に変更しなければならなく、パソコンも、自宅にある物と支給品であるノートパソコンと交換しなければならなかった、と言えば想像がつくであろう。
全て監視下に置かれていたのだ。
当然、行動制限の中には[親、友人と会う]というのも含まれる。会う事一つとっても許可が必要になったのである。そんな生活をしていれば、更には研究所での生活も皆を変えていった。
それははた目から見れば[研究に没頭している]ともとれるそれは、言い換えればカズをはじめとする研究者たちの負い目なのかもしれない。親、友人とも疎遠になっていき、気が付けば[明日、荷物をまとめて飛行機で発ってもらう]という状況に至っていたのだ。
――――――――
その当時、カズはほとんど家には帰らず、研究所での生活をしていた。もちろん千歳も、恵美も、である。研究所には幸か不幸か宿泊施設が整っている。その気になれはずっと研究所に住む事だって出来るのだ。実際にそういう生活をしている研究者もいた、とカズは記憶している。
カズたちがあまり家に帰らなくなった理由、それは家に帰ると、何か自分のスペースを研究という汚れた躰で汚してしまう、他の二人にどうだったかは聞いてはいなかったが、少なくともカズはそう思っていた。それに帰ったところで自由がある訳でもない。ならばどこにいても同じ、とも思っていた。
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