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23.もう少し話していても良かったんだけど-次はどうするの?-

全42話予定です


曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップ予定です(例外あり)

※特に告知していなければ毎日投稿です

「良かったのかい? もう少し話していても良かったんだけど」


 カズがそう尋ねると、


「う、うん。いいんだ、これ以上話をしてしまうと情が戻っちゃう。それはとてもマズい事だって理解してるし」


 そう言う恵美、いやもうゼロゼロと呼ぶべきだろう、の声は何処か震えている。他人の機微にそんなに敏感でもないカズをしてもゼロゼロが[泣いている]事くらいは分かる。


「そうか、ならいんだけど」


 とだけ言って流す。相手の傷に触れないように、それくらいは出来るようになっていた。


「それより次の連絡先は?」


 しばらくするとそう返って来たので、


「千歳の両親かな」


 カズはダイアルをゼロゼロに頼んで千歳の両親に繋げた。


 そこでカズは千歳が渡航先で実験中の事故により亡くなったと伝えた。


 はじめは二人とも[そんなはずはない]と疑問視していたが、当時一緒の施設で働いていた事を話すと、


「そう、ですか……」


 うなだれた様子でそう答えた。


「ええ、私が駆け付けた時にはこと切れる寸前で。お二人に、もし会話する事があったら伝えてほしい事がある、と言付かっています[今までありがとう]と」


 もちろん嘘だ。だが、


「最後は、最後はどんなだったのですか?」


 と聞いてくる。


「爆発による負傷と引火による熱傷、と」


 これは事実だ。


「そんな……」


 両親とも言葉が続かない。それを、


「繋いでいたいのは山々なのですが、私は軍に所属しているものなのです。そして、この回線は秘匿して繋げている、ですのでこれにて失礼します」


 カズはそう言って電話回線を切った。


「ちょっと早すぎない?」


 ゼロゼロが口を挟んでくる。


 そのゼロゼロに、


「あれ以上はお互いの為にならないよ。向こうは娘を失ったという事実を突きつけられて、しかも一緒にいた話までしたんだ、次は[どうして助けてくれなかったんだ]と来るに決まっている。そうなれば泥試合なのは目に見えているさ」


 実際そうなのだろう。


 肉親を事故とはいえ失って、そこにいた人間が電話をかければ、少し冷静になれば[どうして助けてくれなかったんだ]という気持ちにもなる。


 実際、カズは何回か千歳の両親に会ってはいるが、いい印象を持っていなかった、というのも事実だ。


 それは千歳の過去とも関係してくるのだが、千歳は元々が勝気な性格の千歳だ、小、中学の頃はやはり周りの人との軋轢があった。つまり、いじめにあっていたのだ。


 子供は時に残酷だ、人に対する配慮や言動の重さといったような大人なら普通にできるものが未発達な為に出来ない。それ故、自分と違うものを、自分と違う考え方を持っているものを自分が所属しているコミュニティーから排除しようとする。


 まぁ、それは大人でも同じようなものだし、大人の場合は分かってやっている分タチが悪いのだが。


 そんな千歳だが、家族との関係も決して良いものではなかった。両親の愛情は主に妹に向けられていた。妹もそれは分かっていたようで、いわゆる[見せつけ]ていたのだ。何か物を買ってもらう時も妹の方が良いものを与えられた。


 幸いだったのは、両親と妹の関係も、千歳と友人との関係も彼女が高校生になって勝気な態度が少し影を潜めたあたりから徐々に良好になっていった事だ。


 そう、千歳は学んだのである。


 だが、その性格はやはり勝気、と言えるだろう。わがままとは違う、曲がったことが嫌いな間違いは間違いとはっきり言う、そんな性格だ。


 しかしそれはとても生きずらい性格だ。


 たから表面だけでも周りに合わせるように自分からも変えていったのだ。それでも、子供の頃に刻まれた[傷]というのは簡単には埋まらないものだ。昔負ったケガが直っても、大人になってからも傷跡になるように。


「そんな両親なら、オレならランクを下げてしまうよ」


「ランク?」


 そう尋ねるゼロゼロに、ざっとカズの考え方の説明をした。


「まぁ、こんな変なやり方をしてるからあの実験にも耐えられるんだけど、って前に話さなかったっけ?」


 カズがそう尋ねると、


「そう言えば、日本にいる時に千歳ちゃんから聞いた気がする。あの時は[楽になれるなら]って実践した記憶があるよ。カズ君の考え方だったんだね。そっかぁ、そういう……」


 ゼロゼロは妙に何かに納得したあと、


「次はどうするの?」


 と問うた。


全42話予定です



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