2.残弾は約七割弱か、これなら-なるほど、あらかじめ想定済みだったって事か-
全42話予定です
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「二人とも残弾は?」
とカズがゼロゼロ、レイリア両方に聞くと
「ガトリング砲は残八〇〇、マシンガンは残一二〇、グレネードが三〇、だよ」
「こっちもほぼ一緒で八五〇、一〇〇、三五になってる」
それぞれゼロゼロ、レイリアが報告する。
――残弾は約七割弱か、これなら。
「友軍機は上空にいるね? アルファーワン?」
と尋ねれば、
「ゼロゼロ、確認しました、サンドであります。どうされましたか?」
と返って来る。
それを、
「そちらの武装は?」
と聞くと、
「全体で言うと約六割ほど残っていますが」
「直掩に回れそう?」
「お任せください」
いい返事が返って来た。
「こちらも残弾が七割弱ある。この勢いのまま横田基地を落としてしまおう。ゼロワン、聞いてた?」
「もちろん! あたしたちなら大丈夫、でしょ?」
――そうだな、あたしたち、か……。
やはりレイリアは千歳を強く想起させるのだ。
だが、今はそんな感傷に浸っている場合ではない。
「じゃあこのまま移動する」
そう言ってカズたちは横田基地の方へと向かう。途中、案の定戦闘機が飛来したが、そこは直掩に最新鋭機である三五FDIが入っているだけある。こちらの被害は一機、失ったものの敵機全ての迎撃に成功した。
――横田基地は航空自衛軍の基地は接収、という事は羽田や成田は帝国の管理下にあるというが、そちらも奪還したほうがいいのか?
「ゼロゼロ、日本の船舶にはまだ繋いでるよね?」
「もちろん繋いでるけど?」
ディスプレイにはオンラインである事が表示される。
「日本自衛海軍の指揮官はいらっしゃいますか?」
カズは日本人だ、もちろん日本語で話すと、
「藤堂というものだ。今回は本当に感謝してもしきれないくらいだ、ありがとう」
――これを聞くと[あぁ、日本人だな]って気がするよ。他の国ではまず先に礼が帰ってくる事なんてないもん。
とは思ったが、
「人型の指揮官、カズであります。お尋ねします、帝国軍施設は横須賀と横田、この二か所だけという事でしょうか? 都内にある施設は機械化部隊の類ではないと聞いておりますが。それと、民間機の施設である成田や羽田はどうなっているのでしょう? 更には他の航空施設、港湾施設はどうでしょうか? なにぶん主要基地の制圧は聞いていたのですが、他の詳しい状況が知りたく思いまして」
と質問する。
そこで藤堂の話によると、帝国軍部隊は空港施設や港湾施設には確かに駐屯しているそうなのだが、そこは陸上自衛軍が抑えた、との事だった。あくまで日本の脅威は、旧在日米軍跡地の帝国軍基地との事だ。
「都内についても自衛軍が対処している。こちらに入って来ている情報としては制圧出来ている、との事だ。あなた方は横田を解放してほしい」
――なるほど、あらかじめ想定済みだったって事か。
「了解であります」
と返してコックピット内からの無線をミュートにした。カズはゼロゼロと話すときは日本語を使用している。それは、万一他の人間に聞かれても、現帝国領である日本の言語はパイロットやサブプロセッサーたちの教育課程には入っていない。つまり出身者でなければ理解できないのだ。
それは言い換えると、多少の秘密が無線で漏れても案ずる必要がない、という事を意味している。例えば誰かを囮にして挟み込もう、という作戦を立てようとして、それをゼロゼロと話し合っていてもコードネームやその人物の名前さえ出さなければ、例え直接の相手に聞かれたとしても理解される心配がほとんどないのだ。
だが、今は日本領内だ、無線を中継しながらの作戦なので、必然的にゼロゼロとの会話を聞かれるとマズい事もある。なので、このコックピット内は常にミュートにしている。
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