15.では最終確認です-すべて条件は承諾します-
全42話予定です
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クレイグは以前、まだ日本という国が存在し、同盟連合という言葉さえなかった頃、日本に派遣されていた事があった。今でこそ准将という地位だが、その頃はまだ大尉をしていた。航空部隊の、ある隊長を任されていたのだ。
そこで彼は日本の依存体質を肌で感じていた。
悪く言えば[金は出すが人は出さない]という事である。脅威に対しては核の傘の中に、安保の傘の中に入り、自分たちは平和憲法の名の元に軍事力を持っていながらその軍を実際の行動に使用した事は無かった。
時が過ぎて、連合構想が現実味を帯びていた頃[大陸の国々]がちょっかいをかけて来て、やっとその軍事力を表に向けたのだ。
だが、そればかりを批判する事は到底できない。何故なら当時のサムおじさんとて自国第一主義は変わらなかったのだから。だからこそカズたち研究者をその研究データごと引き上げたのだ。
そして今、同盟連合に併合するとは言っているものの、地理的に[弾よけ]になるであろう事は誰の目にも明らかなのだ。
だがクレイグの言葉通り、同盟連合の内心はどうであれ、彼らは属国を必要としている訳ではない。きたる大陸への足掛かりとして、その地理的位置に、日本という国にもう一度価値を見出したのだ。
だからこそ資源の乏しいこの国に、いざ海上封鎖をされても燃料だけは届けるつもりで海底ケーブルを敷設しているし、縮小された航空戦力の増強として二八Fを運んでいるのである。そして最低でも[独り立ち]出来るまでは空母が駐屯する、と言っているのだ。
「貴国がもともと掲げていた平和憲法ももちろん良いものだと思っていますよ。ですが、同盟連合に入るのであれば相応の覚悟を持ってください、という事です」
クレイグはそう続けた。
――まぁ、それはやってもらわないとね。昔の日本じゃあないんだから。
カズも心の中ではクレイグと同意見なのだろう。実際、軍事力の強化は必須なのだから。それも一刻を争うほどには。
「さしあたって佐世保、沖縄にはそれぞれイージス艦隊をそのまま配備します。それで帝国と互角に渡り合えるとは思いませんが、ないよりはましかと。イージス艦、ミサイル艦、空母の建造も視野に入っています。ただ、それには時間が必要なのです」
一柳がそう訴えると、
「その為の駐屯部隊ですし、その為の航空戦力の供与なのです」
とクレイグが続ける。
そうして話し合いをしている間にも二国間の調印が着々と行われていた。元々が同盟連合に入りたい、と言った時点で後戻りはできないのは誰が見ても明らかだ。
聞けば現在、日本には有事法制が敷かれていて、憲法も一時停止されているそうだ。まぁ、帝国領になった時点で憲法は破棄されていたのだが。
現在は、人員は徴兵制度が、物資の方は徴用制度が導入されている。帝国領になる前からそれは行われていたのだが、それでも帝国領になってしまったのは、それよりも時代の波の方が早かった、という事なのだろう。
「では最終確認です。日本は同盟連合に加盟する、国力が復活したら軍事展開もする、そして同盟連合の法律には無条件で従う、と」
クレイグの最後の質問。
その質問に、
「すべて条件は承諾します。その上で、同盟連合への加盟を申請します」
一柳はゆっくり、しかしはっきりとそう言ったのだ。
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