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投稿を再開しました。
またのんびり投稿にお付き合いいただけると嬉しいです(^▽^)
男の子達はまだ外で遊ぶと言うから、私は一度室内へ戻ることにしたの。女の子達のことも気になったけど、修道女の皆が何をどう進めているのかも気になったから。
戻ってみると、時間的には昼食の準備をしているという頃だったようで、私は厨房に急いで行って、手伝いを始めた。だって、皆慌ただしく動いていたし、年長の少女達も手伝いとして動いていたから。手伝わない選択なんてなかったの。
後で気付いたんだけど、これがもし洗濯している場面を見かけていたら、そちらを手伝っていたでしょう。というわけだから、目に付いたところから手伝うくらいしかまだ私にはできないってこと。
まぁ、それで充分よね。だって今日から孤児院の奉仕を始めるという、何も分からない状況なのだもの。
というわけで、食事の準備。
作られているのは、野菜がたっぷり入ったスープ。固めのパンを切り分け、修道院で作られているチーズも食べやすい大きさに切り分けられている。
この修道院、牛も山羊も飼育してたのよ、驚くわよね。思わず『野菜だけやないんかーい!』ってツッコミ入れそうになったわ。…羊もいたら、羊毛が取れて編み物が捗りそうだわ、なんて思ったのは内緒ね。
人数分のお皿にスープを取り分け、パンとチーズの切り分けたものを一つのお皿に入れて、一人分。
食堂にそれらを並べていくんだけど、子供達の人数が今は十五人。年長の女の子が三人いて、孤児院も随分手伝ってもらえていて助かってるみたい。
…でも、彼女達だって家事を学ぶ以外の学びは必要よね。午後からは女の子達が何をしているのか、見守りましょう。
食事の準備の途中で外にいた男の子達を手の空いた子供に呼びに行ってもらって、小さな子供達の相手をしてもらっていた。だから、すぐに皆が食堂に集まって席に着くことができた。
「皆揃いましたね。それでは、昼食にいたしましょう。では、食事の前に祈りを捧げましょう。誰か祈りたい人はいますか?」
「はい! ぼく、いのりたい…です」
「トビーですね。お願いしますね」
「はい」
孤児院での食事の時の祈りは、祈りたい人が祈るということなのか、と興味深く見ていた。皆が両手を胸の前で組み目を閉じた。小さなトビーが拙い言葉使いなりに、一生懸命に祈り始める。
「てんに、ちに、おおくのめぐみ、を…あたえたもう、かみ…よ。われらが、ひびしゅくふくさ…れ、いかされて、いることに…かんしゃし、ます。あたえられた、このしょくじに、かんしゃします」
——天に地に多くの恵みを与えたもう神よ。我らが日々祝福され、生かされていることに感謝します。与えられたこの食事に感謝します。
トビーの祈りの言葉が終わると、皆揃って組んでいた両手を自身の額に軽くつけてから、手を解き、食事を始める。
きっといつもと変わりのない食事内容で、美味しいとか美味しくないとか、そういうことは関係ないような気がした。でも、子供達が笑って食事を楽しめる環境にあるというのは、目の前で楽しそうにしている皆を見れば分かることだから、私はこの場にいる子供達が安心してこの場所にいるということが理解出来て、安堵していた。
彼らがリリェストレーム王国の子供達ばかりじゃないという事実と、他国の戦火から逃れてきた子供達がいるということが、前世でニュースの中でしかそれを知らない私にとっては、現実味がまるでないことではあったけど、それでも親を失う痛みが幼い子供達をどれだけ傷付けるか容易に想像出来たし、それが戦争のためだと思うと、やっぱり胸が痛んだ。
だから、彼らが小さな体で必死に生きる為に努力してきたことも含めて、この場所で笑っていられることが嬉しいと思う。…やっぱり私、子供に関わる仕事してきたのよ、間違いないわ。
美味しく食事をいただいたら、皆がそれぞれお皿を片付けるのかと思ったら、お皿をそれぞれが一纏めにして食堂のテーブル端へと持っていくだけみたい。厨房と食堂は隣合っているけど、扉を開けて運び入れるのも小さな子供には大変だし、狭い厨房に子供達が出入りするのも大変だから、運び入れるのはその日の食事担当の修道女と年長の子供達ということらしい。子供達も当番制で順番に。でないと毎回同じ子供ばかりが引き受けてしまうというのも良くない。そういうことも先輩修道女に教えてもらいながら、午後を過ごすことになった。
午後は子供達の勉強の時間だった。小さな子供達は午睡に充てられている時間だけど、午睡が必要ない子供や午睡出来なかった子供は、文字の読み書きを中心とした勉強をしていた。
年長の子供達はもう文字の読み書きは完璧で、算術を学んでいるところだった。それすらも終えている子供達は、男の子は聖騎士になるために剣術の鍛錬をしていたし、女の子は針仕事が出来るようにと裁縫を学んでいた。
考えてみれば私は辺境伯家出身の人間。剣術を簡単なものであれば教えることが出来る。そして、刺繍大好きなマージェリーに、前世では趣味がハンドメイド全般で特に刺繍が好きだった私なら、男女両方の学びを手伝えることに気付いた。
「院長様にお話があるので、少し席を外します」
同席していた先輩修道女にそう声を掛け、孤児院の院長のいる院長室へと足を向けた。
子供達が学んでいるのは食堂。皆が揃って座ることが出来るから、なんだけど。そこから院長室は少し離れていて、孤児院の玄関に近い場所に院長室があるから、少し早歩きで向かった。
無事院長室に辿り着き、扉を叩く。中から院長様の誰何する声があり、私は答える。
「マージェリーでございます。ご相談があり伺いました」
「入りなさい」
「失礼いたします」
扉を開き、中へと入る。院長様は執務机から立ち上がり、ソファセットのほうへと移動されていた。
「突然すみません。子供達の勉強のことでご相談があります。お聞きいただけますか?」
「いいですよ。とりあえず、座りましょう。どうぞ」
「ありがとうございます」
私は院長様に促され、ソファへと座った。反対側には院長様が座られた。
「子供達の勉強のこととは、どういうことでしょう?」
「はい。年長の子供達は勉強の進み具合で男女で別れて学んでいますよね」
「そうですね」
「私は辺境伯家で幼い頃から剣術も体術も学んできています。ですから、男の子達の指導の手伝いなら出来ると思ったのです。それから、女の子達の針仕事についても刺繍以外でも針を持つことが好きだったので、手伝いなら出来ます。
もし、主に教えてらっしゃる聖騎士様や修道女様に何かあった時の予備という立ち位置で私のことも考えていただけたら、と思ったのです」
「なるほど、そういうことですか。確かに孤児院側でも剣術の授業に立ち会える者がいればいいかもしれませんね。でも、やはり男性の受け持つ仕事という側面もありますから、修道女であるあなたがその場にいるのは、相応しいこととは思えません」
「…やはりそうですか。それは残念ですけど、でも規律は大切ですから。分かりました。その件はもう申しませんわ」
「納得してくれて、ありがとう。代わりと言ってはなんですが、女の子達の針仕事のほうは助手という形で明日からでも一緒に教えてもらえると助かりますよ」
「はい! がんばります!」
こんな具合に私は明日からの自分の奉仕を、好きなことに少しでも関わる時間が増える、という具合にゲットしに行ってみたわけだけど、行って正解だった。院長様、あっさりと許可してくださって、ありがとうございます。やっほーい! んん、ちょっとタガが外れそうになったわ。趣味に関わることが出来るなんて、つい嬉しくて。でも、子供達にはちゃんと教えるわよ。針仕事は身近な、案外必須項目が多いものだから。特に前世と違って今世なら尚更。
そのついでに、物を作る楽しさを教えたい、というのが本音よね。作った物で誰かが笑顔になってくれたら、もっと嬉しいし楽しくなるということもね。そういう機会が…あればいいな。案外そういうことだけで、物を作ることは楽しくなるもの。
そうして、私の女の子達攻略は、翌日サクッと終わることになる。今日の針仕事の学びを見学させてもらっていて感じたことだけど、ちょうど手縫いしか出来ないんだけど、ミシンが欲しいなんていうことは、ちょっと忘れて、自分の持ち物…ハンカチなんかの小物を入れるための袋を年長の少女三人が作ってたんだけど、慣れないから針の扱いとかやっぱり全然だった。でも、器用な子は上手に作っていたし、不器用な子は何度も何度も縫い直しながらも頑張ってた。
小さな袋に紐を取り付けれ巾着袋になりそうだったから、私も同じように作ることにしたの。もちろん、居室に戻ってからね。
私の場合は家から持ってきた端切れを利用してパッチワークを前世ぶりに思い出しながら縫って、生地を大きく作って、そこから袋の中袋もつけたかったけど、それはさすがに生地が足りなくて無理だったから、パッチワークした生地を中袋の生地代わりに使って、なんてことをして作ったら…リバーシブルになってて、それに気付いて笑ってしまったけど、まぁそこは…。
普通縫ってる間に気付くのに、私気付かずにずっと袋を作ってたの。自分で呆れたわ。でも、これは子供達に笑ってもらえるかしら? なんて思いもしたけど。
彼女達が一生懸命に縫って作った袋と同じ形のものを私が応用編的に、中袋を付けた状態で、尚且つパッチワークした生地で作っただけでも、見目が変わって面白くなると思ったの。
「これなら、まだ針に慣れてない子供達にも作れるし、可愛くなると思うのよね」
同室のジュディにも見てもらったら、とても褒めてくれて、どうやらジュディが気に入ってしまったようだったから、作ったばかりのそれをあげたの。驚いていたけど、宝物が出来た、と喜んでくれたから、私も嬉しかった。
貰ってくれてありがとう。そんな気持ちがくすぐったかった。
お読みいただきありがとうございます(*^^)
投稿をお休みしている間に最後まで書き切れれば良かったんですけど、無理でした…。
孤児院でのマージェリーさんは、趣味が生かせる環境になっていくので、非常に生き生きと…やりたい放題…にならないようこちらが気を付けつつの、楽しい日々を過ごしていく感じです。
他の先輩修道女達との関係も書けるといいけれど、端折ってます。
その辺りまで書くと話数が増え過ぎて、きっと本編の悪役令嬢とモブ男子より長くなりそうなので。
適当な感じに端折りながら、子供まみれなマージェリーさんを書いていきたいな、と思ってます。
本文中にある『中袋』ですが、鞄や巾着袋などの内側にも袋を取り付ける場合の呼称になります。内袋でも意味が通じそう。
服でいう裏地のような感じでしょうか。糸のほつれや生地の端から出る糸くずが鞄等の中に入れたものにふれない仕様になります。
ありやの作ったサブバッグとかリュックサックなどの写真を挿絵にして説明をと思ったものの、適当感漂うものしかなかったことに気付いたのでやめました。
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