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本日は二話投稿していて、その二話目です。
まだ49を読んでいない方は、そちらからどうぞ。
ステラ修道院内にある礼拝堂で、修道司祭である修道院の院長様を前に、デリックと私は新郎新婦として二人並んで立っている。礼拝堂に並ぶ背凭れのある樫の木で作られたベンチには、修道士、修道女、聖騎士、そして孤児院の子供達、それぞれの家族が座って見守ってくれている。
「カクラート神様の御前で、聖騎士デリックは修道女マージェリーを妻とし、生涯に渡り二人で共に歩き、支え合い、愛することを誓いますか?」
「誓います」
「カクラート神様の御前で、修道女マージェリーは聖騎士デリックを夫とし、生涯に渡り二人で共に歩き、支え合い、愛することを誓いますか?」
「誓います」
「これで、二人はカクラート神様により夫婦と認められました。おめでとう!」
院長様が私達の結婚を神の御前で認められたと宣言し、私達は夫婦となった。
この後は、結婚式に参列してくれた人達と一緒に、修道院の中庭で披露宴に代わる簡易的なガーデンパーティを行った。
修道士も修道女も奉仕の時間の合間を縫うように参列してくれているため、結婚式は無理だけどパーティは参加、という人や逆の人もいるため、修道院内でのものではあったけどなかなか賑やかなものとなった。
どうして修道士が参列しているのかと言えば、私の刺繍作品を見て私の作品を楽しみにしているという人がなんだか予想以上にいるらしく、彼らも私達の結婚を祝福してくれた…ということらしい。直接知り合う機会なんてないんだけど。
賑やかで、楽しい時間を過ごした後、デリックと私は新居となる聖騎士棟の近くにある家族として修道院に暮らす人達が集まっている建物のある一角へと向かうこととなった。パーティ会場の中庭を皆に見送られてのことだった。
⁑ ⁑ ⁑ ⁑ ⁑
真っ新なページを開くように、新居の扉を開ける。
部屋の中は真新しい生地で作られたカーテンや、ずっと使い続けられているだろうアンティークの家具が置かれていた。
「この家の家具は、以前使っていた御家族が使っていたのよね?」
「そうだよ。もうご高齢の方達だったから、修道院から出て街でお孫さん達と一緒に生活を始めたんだって聞いてる」
「そんな長くここで過ごされてたのね…。この食器棚もテーブルも大切に使われてたのが分かるわ。とても綺麗だもの」
「そうだね。ただカーテンだけは新しくしないとダメだったから、新調したけどね」
「ふふ、そこは仕方ないわよ。日の光で生地も痛んじゃうもの」
寒い地域だから、扉は二枚ある。一枚目は風を除けるための扉。僅かな空間でコートを脱いだり、雪で濡れた靴を脱いだりもするくらいの広さがある。二枚目が室内へと入るための扉。室内は外気に晒されにくくなっているから、冬も温かさが保たれるだろう。
カーテンを開けて、窓から入る光で部屋が明るく満たされる。窓の木枠と馴染むようなクリーム色と落ち着いた色合いの緑のストライプが目に優しい。窓の外に広がるのは木々ばかり。けれどその木々の向こう側から声が聞こえてくる。聖騎士棟が近くにあるから、きっと彼らの声なのだろう。
新しい場所でありながらも、変わりない修道院内の土地で過ごすことを思うと、正直なんだか心が浮き立つような、ほわほわと温まるようなそんな気分になる。少しだけ、くすぐったくもある。
「マージェリー、ひとまず着替えてこよう。それから、ちょっと休もう。ずっと人前でいたし、疲れたでしょ?」
「うん、ちょっと…疲れたかな。着替え…あー。そう言えばクローゼットのある部屋って…」
「…あ。先に着替えてくる?」
「うん。ごめんね。寝室にクローゼット置いてあるんだもんね。さすがに…二人一緒にっていうのは、恥ずかしいから」
「大丈夫。マージェリーのウェディングドレス姿も今日だけだけど。疲れてるマージェリー休ませてあげたいから」
「ありがと」
互いに新居までは結婚式そのままの服装で来てる。さっさと二人きりの時間を過ごしなさいって、孤児院の院長様に言われてたんだけど、それはパーティに参加してくれた皆の総意だったみたいで、真っ直ぐ新居へ行くように! っていう圧があった。うん。着替え…させて、とは言えなかった。
ちなみに、ウェディングドレスは母が結婚式で着たものを貰った。この国の一部の貴族の間では、ウェディングドレスを母親から娘へ譲り渡す習慣がある。修道女である私にとって華美だな、と思ったのは事実だ。でも、母は修道女が着ても問題がないように、取り外しが出来そうな装飾部分を丁寧に取り外して、スカート部分も広がり過ぎないように、デザインを少し変えていてくれていた。貴族令嬢であれば、質素な印象を与えるものになってはいたけど、修道女としてならスッキリとした落ち着いた印象を与える素敵なドレスになっていた。さすがお母様! と思ったの。
代わりに、と言っていたけれど…私が子供を生んだ時のために、ウェディングドレスを仕立て直す時に取り外した装飾品のレースやフリル、真珠などを使ってベビードレスを用意している、と言われた時にはちょっと眩暈がしましたよ。多分私子供は生みませんから。そのベビードレスやベビー用のものは、全部お兄様達のお子様にお願いします! って言えたら良かったんだけど。未来は分からない。ので、言わずに笑っておいた。
「ありがとう」
と、返しながら。多分、お兄様達の御子のためにも作ってると思うの。私だけのために準備するはずないもの。そんなことを予想しながら、ウェディングドレスを受け取ったことも思い出す。
そして一人でも脱着出来…るわけもなく、早速デリックに背中にあるボタンを外してもらっている。本当申し訳ない…。
「ありがとう、デリック。もう大丈夫だから後は一人で着替えられ…、何してるの?」
私の背後に立って、背中のボタンを外してくれていたデリックが結いあげられたままの私の髪に多分キスをしていた。見えないけど、多分そう。それと、私の着ているドレスは肩も胸元も見えないデザインになってるんだけど、今は背中が無防備に晒されてる状況で、当然デリックは見放題。なんだか肩とかドレスから隠れていない部分に触れるものがあって…指先かな。
「うん? マージェリーの背中とか、うなじとか、普段は見られないから今堪能してる」
なんだか非常に、におわせるような事を言ってる気がしたので、気付かない振りをして、着替えることにした。でないと、多分何かが始まってしまいそうなので、逃げたい。というか、逃げる…よ?
私のそんな気持ちが伝わったのか、デリックは苦笑しながら部屋を出ていった。
「大丈夫。今すぐに襲うなんてことしないから」
「!!!」
部屋の外へ出たタイミングで、そんなことを言う。正直私の顔が真っ赤になってるのも理解出来るくらいに、顔が熱くなった。扉が閉じた後、向こう側で笑い声が聞こえてきた。
「もう! デリックのばかー!!」
思わず叫んでしまったけど、そんな私の声に応えるようにデリックの笑い声がまた聞こえてきた。
お読みいただきありがとうございます(*´꒳`*)
ここで質問です。デリックはマージェリーさんのお着替えの手伝い中に、一体何をしたでしょうか?
特に答えは用意してません。答えは読んだ方の御想像におまかせします。
普通はあの流れで、なんか艶っぽい展開するんでしょうけど、特にありません。これがありやクオリティ(笑)
残りあと1話で終わりです。
引き続きがんばります( ´ ▽ ` )ノ




