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本日二話投稿で、その二話目です。

まだ45を読んでいない方はそちらからどうぞ。

 デリックとデリックの家族の対面はなんとなく大丈夫な空気の中で無事に終えることが出来た。

きっとデリック兄の言葉も大きかったと思う。でも、本当にデリック父は後悔してるんだな、と思った。まぁ…大丈夫でしょ。時間はかなりかかるだろうし、途中色々嫌になることもあるだろうけど。


「お父様と初めてお会いしての感想はどう?」


デリックに私がそう問う。デリックは、少し考えて、眉間に皺を寄せて、ボソッと答えた。


「自分の将来があんな感じなのかと、少し嫌になった」


どうやら、公爵様とデリックの顔がそっくりなのが嫌だったよう。正直言えば、かなりの美中年だったから、将来有望って感じだったのだけども。


「自分に自信持っていいのに」


私がそう言えば、突然私の体をデリックの方へと無理矢理向き直らせて、顔を間近にさせて小声で尋ねてきた。


「そ、それは…俺がいい男って…こと?」


真顔でかなり深刻な感じに問われたから、何も言わずただコクコクと何度も頷いておいた。すると、私の肩に乗せられていたデリックの手が下ろされ、気付けば床にしゃがみ込むデリックが出来上がっていた。


「どうしたの?」

「いや……マージェリーにいい意味で肯定されて、気が抜けただけ。嬉しいんだけど……拍子抜けっていうか…」

「そうなんだ。それは…まぁ、そうかも。私ってあまりデリックのこと褒めてなかったね」

「そうですよ! 他の子供達にはべた褒めするくせに…」

「だって、デリックは完璧だったけど、褒める前にいつもいなくなってたじゃない? 他の子供達に手を引かれてどこかに行っちゃうんだもの」

「あぁそうだったぁー! でも後からだって褒めてもらったことないし…」

「そうだったわね。それはごめんなさい。デリックはいつだって頑張ってて、みんなの自慢のお兄ちゃんだし、お父さんのこともあったわね。それに孤児院で奉仕してる修道女の皆さんもデリックには感謝してるのよ。

今でも子供達にいい影響を与え続けてるんだもの。ありがとうね、助かってるわ」


 しゃがみ込んだままのデリックが私を見上げてから、少し躊躇いがちに両腕をこちらへと伸ばした。なんだろう? と思いながら、その両手を握るとデリックが手を繋いだまま立ち上がった。


「マージェリーのズルい所は、そうやってすぐにこちらをいい気分にさせることですね。おかげで、いつだって貴女の為ならなんだってしたいって思ってしまう」

「あら、それはごめんなさい。でも、勝手にあなたがそう思ってしまうことまで、計算できるわけないのよ? 私そこまで悪い女じゃないつもりだし」

「そこまでじゃない程度には、悪い人ってことですか?」

「…うーん、実は微塵もそんなつもりないけど?」

「そうですね、貴女はどう考えても善い類の人ですよ」


どうでもいいような会話を重ねて、互いにくすりと笑い合う。それから、デリックが繋いでいた手を掬い上げた。


「マージェリー修道女様、私はずっと貴女をお慕いしております。どうか、そのことを忘れないでほしいと願っています」


唐突にデリックから紡がれた言葉に、一瞬私が動けなくなる。デリックが私の手の指先へと口付けると、彼の空いていた左手が私の腰に回され、軽くハグされる。


「私の婚約者になったこと、絶対に後悔させません。それと…結婚も必ずしますから、逃げられないことも自覚してくださいね」


 耳元で囁かれるようにデリックの声が響く。そう、その声がどうしてなのかお腹の奥に酷く響いて、気持ちがざわついてしまう。それと同時に、低く落ち着いた声が私の肌を軽くなぶるように響くのも、どうしてなのか分からなくて、余計に落ち着かなくなった。

言われたことを頭では理解しているし、気持ちもデリックの言葉を肯定したくない! と思うのに、どうしてなのかその時の私はただ頷くしか出来なかった。

 顔が熱く感じるくらいには頬を赤く染めた自覚があった。でも、デリックはそのことに触れることはなくて、婚約者として、聖騎士として、エスコートをしてくれるだけだった。


(面会室に残ってたのが私達だけで本当良かった。院長様に見られてたら、何言われるか……。絶対揶揄われるもの!)


 私達は、面会室から出て孤児院へと向かったのだった。

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