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「マージェリー修道女様、私が以前に伝えたこと覚えていますか?」


突然の問いに私は少しだけ首を傾げた。


「…以前に?」

「そうです。私はちゃんと言いましたよ。振り向かせてみせると」

「……ええ、覚えてるけど」


そして、その問いの答えを聞き、間を置いたけど頷いてみせた。


「で、今の状況分かってますか?」

「今…の?」

「はい。私達は形の上だけですが、婚約者になります」

「……えっと、そうね」

「私はこのまま結婚してもいいと思っているわけです」

「……そ、そう…なのね」

「外堀は…埋まってますね。私にとって予想外な形ではありましたが」

「!!!」

「後はもうマージェリー修道女様が私にこのまま落ちて来てくだされば、それで問題は解決ですね」

「な、なっ!」

「早く落ちてきてくださいね。ずっと待ってますから」

「デ、デリックのばかー!」


 私は畳みかけられるようにデリックに今の状況を説明されて、実はとってもよろしくない状況に陥ったのでは? と悟った。それと同時にまたデリックに翻弄される未来も見えた気がして、眩暈すら覚える。だけど、だけど言うしかないじゃない! デリックのばかー!

私の手を取っているデリックは、一瞬ニヤリと笑っていた。

顔が熱を持ってしまっていて、間違いなく顔が真っ赤に染まってる自覚がある。だから余計に…逃げるしかなくて。でも、談話室にいて、扉の向こう側へ行くためには椅子から立ち上がって、そのまま左方向へと体を向けて一歩足を向ければすぐなのに、私の手を取ったままのデリックが放してくれない。

顔を上げられないでいる私に、いつの間にか手を繋いだ形でデリックが私へ気持ちを伝えてきている気がした。だって、握られた手がぎゅっと包まれたから。


「え?」


思わず顔を上げれば、こちらを真剣な瞳で見つめるデリックと視線が絡む。


「私は本気です。いつまでだって待ちます。貴女に無理強いしたくありません。だから、貴女が私を認めてくれるまで、ずっと貴女の盾にも剣にもなります。存分に利用してください」


デリックが切々と私に訴えるように言った言葉に、胸が詰まる。どれだけ私のことが好きなのか、と。本気で私を望んでくれてるんだと感じた場面だった。


「…あり、がとう。……本当は、孤児院の子供達に違う形で頼るのは…嫌じゃないんだけど、こんな…のは」

「言いたいことはなんとなく分かります。でも、貴女がこの場所からいなくなってしまったら、残された子供達はどうなります? ジーンは随分落ち着いてきているけど、まだ貴女が必要でしょう。なのに、貴女がいなくなったらどうなりますか?」

「……そ、そうね」

「だから、私を利用してください。そこは迷わないでください。貴女が私に落ちてきてくれるのを待っているだけですから、()()()()()()()()()()()()()

「……ん?」


 デリックに包まれていた手がいつの間にか指と指を絡めるように繋がれていた。デリックが親指で私の手の甲を撫でている。妙な感覚に襲われて嫌だな、と思った瞬間だった。

デリックが手を放したかと思えば、私の座っている椅子の横へと移動してくる。そして改めて私の手を取り、手の甲へとキスを落とす。


「心配するようなことは何もないんですよ。ただ、私は貴女も守りたいだけです。貴女を守ることは、この孤児院も守ることになるんです。貴女は子供達に、孤児院にとって欠かすことができない人になっているんですよ。

ですから、貴女を守らせてください。その為に私を利用することを気に病む必要はありません」

「……分かったわ。それじゃ、私だけでなく修道院に対しての脅威が完全に払拭出来るまでは、利用させてもらうわね。それが、孤児院や子供達のためになるというのなら」

「そうしてください。誰も傷付くようなことはないのですから、貴女が気に病むこともないですよ」

「…ありがとう。デリックはやっぱりこの孤児院のお兄ちゃんなのね」

「まぁ、この孤児院で育ちましたからね。この場所は私にとって大切なんです。家であり家族であり、何にも代えられないんです」

「そうだったわね。ええ、本当ありがとう」

「とんでもない」


 改めてデリックとの婚約はあくまでも形だけのもの、結婚をすることはないだろうと私はデリックには伝えたけど、そこはデリックはただ黙って笑っているだけだった。

 デリックとの婚約という体裁を整えておかなくては今後も同じようなことがあった時に、対処することが難しくなることも分かってしまったから、私もデリックに頼ることしか手がないのだと理解してしまったしね。だから、もう迷うことはやめた。

 この決定が二人の関係を決定付けるものになったことを後で気付くわけだけど、この時には選択肢がなかったから、仕方ないものだったと思う。

お読みいただきありがとうございます(*´꒳`*)


7月中は慌ただしくなる予定です。

それに合わせて投稿も早目に予約してます。

が、直しは常にしてる状態ですけど|ω・`)

8月に入ってからの投稿は、一番厄介な事が無事終わってからになるので、今は分かりません。

分かり次第、後書きでお知らせできればと思ってます。

暑さが厳しくなってきてるので、熱中症や夏バテと色々体調を崩しやすいこともありますし、ご自愛くださいね。

お天気も不安定な日が続いてますし、そちらも御注意ください。


ブックマーク登録、評価、いいね、ありがとうございます(*˙˘˙*)ஐ


次回もがんばります( ´ ▽ ` )ノ

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