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「…やっぱり身売りかしら」


ため息を吐きながら、ポツンと一人孤児院の庭に座り込み、考え込む私がいる。


 私の刺繍がマクマホン侯爵家で話題に上ったのは、私が孤児院のバザーに関わってから二年目のことだったそうだ。子供達の刺繍に関しては特に話題になってなかったらしいが(めちゃくちゃ文句言いたいけど!)孤児院と庭をクロスステッチで刺した作品が目に留まったらしい。それは侯爵夫人の目に、だけど。

 御嫡男が刺繍を刺したのが私だというのを知って、そこから私の姿絵を以前見かけたことを思い出したらしい。御嫡男は私の容姿に惹かれたのがそこからうかがえた。

そして、私のお母様のことを婚約者に迎えたかったのが、実は御当主様だったとか。だから、現状非常にまずいことが発生してることが分かったの。

つまり…御嫡男というよりも、御当主様のほうが私の還俗に関してノリノリで、いやもっと言うと執着みたいな感じになってるらしい、とお父様からの手紙で分かったの。

 お母様とお父様は相思相愛で婚約したっていうのは子供の頃から嫌というほど聞いていた話だけど、その裏側でお父様とお母様に振り向いてもらえなかった御令息御令嬢がかなりいたらしい。

その振り向いてもらえなかった御令息のお一人がマクマホン侯爵。

 当時、お母様に届いた婚約の申し込みはたくさんあったらしいけど、マクマホン侯爵は最後まで何度もお母様に申し込み続けていたらしい。でも、既にお母様のお気持ちはお父様にあったから、話すことすらないままだったらしい。話したことと言えば挨拶程度でしかないって…。どれだけマクマホン侯爵がショックを受けたのかはなんだか分かった気がした。

 で、当時はまだ公爵令嬢だったわけだから、お祖父様が侯爵家に対応したらしいんだけど、かなり揉めたらしい。だから、お祖父様がかなり強引な手で話を終わらせてしまったと今回のことで教えてもらった。

それもあって、お母様もお祖父様もマクマホン侯爵に対してあまり強く出られない部分があるらしい。…一体何をやらかしたの? 聞かないほうがいいって思うから聞かないけど。

 お父様だけでもちょっと対処が難しいという連絡が来て、どうしましょう? やっぱり身売りかしら? な感じになってしまったの。だから…一人ぽつーんと孤児院の庭で座り込んでた時に、つい独り言が漏れ出ちゃったのかしら。

だって、デリックが畑と庭の境界の低木の垣根をひょいっと飛び越えてこちらへやってきたのだもの。私も驚くわよ。


「マ、マージェリー修道女様! さっき言ってたことは本当ですか!」

「わ! え? デリック? 何? 私さっき何か言ってたかしら?」

「驚かせてしまってすみません。その…『やっぱり身売りかしら』って、一体何のことですか?」

「あぁ、声が出ちゃったのね。…なんでもない、とは言えないけど…大丈夫よ。色々考えないといけないことがあって、お金が必要になっちゃって。自分の刺繍作品を売ればいいかな、って考えて。だから身売りって言っただけなのよ」

「そう…なんですね。私が助けられることなら、遠慮なく頼って欲しいです」

「ありがとう。その気持ちだけで嬉しいわ」

「言葉だけじゃなく、本当に頼ってくださいね。私だって聖騎士として稼ぎがあります。少しくらいなら…」

「本当にありがとう。でも、それはデリックの将来の為にちゃんと残すべきものだから、他人のために投げ出そうとしないでね」

「でも!」

「本当に大丈夫なの。だから、気にしないでね」

「……分かりました」

「そろそろ中に入るわね。またね」

「はい」


 デリックに追及されても困るから無理矢理話を終わらせて、建物の中へ入った。その時デリックがどんな顔を私を見ていたかなんて知るはずもなくて。

その日は自分の中で気持ちの整理をつけるために孤児院の奉仕は少し早めに終わらせてもらって、一人の時間を作ることにした。

どう考えても、知らない人に愛人みたいな恰好で囲われるとかすごーく嫌なんだけど、と思う自分と、それでも修道院の運営が困るのも嫌だなって思う自分と、投げだしたい気分の自分もいて、色々混乱していた。結局答えなんて出せるわけなくて、その日はもう早々に自分に白旗を上げて、ベッドの中に潜り込んだ。

 まだ侯爵家からの申し出から五日も経ってない。一ヶ月の猶予があるだけ、気持ちの整理もつけられるだろうか、と考えながら眠りについた。


 ⁑ ⁑ ⁑ ⁑ ⁑


「それでは、マージェリー修道女様は刺繍の腕を買われたと言いながら、実際にはその侯爵家に囲われてしまうということですか!?」

「ええ、そういうことになるでしょうね。ステラ修道院もチーズやアロマを作って買い取ってもらっているけど、それだけで全てが賄えるわけでもないから、修道院の院長様も苦慮されてるの」

「それじゃ、ステラ修道院に寄付をする貴族家があれば…問題は解消されますよね」

「…そうだけど、難しいでしょう。辺境伯家は以前よりも寄付を多くしてくださってる。それはひとえにマージェリー修道女のおかげですね。でも、この国の貴族家はそれぞれの領地の孤児院や教会に寄付をしているもの。だから、この修道院にというのは難しいでしょうから」

「…分かりました。ちょっと私のほうでも考えてみます。すぐに解決出来るかは分からないので、今すぐにというのは私も難しいですが…」

「貴方だって自分の生活があるのよ。無理はしてはダメですよ」

「大丈夫です。ただ…少しだけ当てがあるだけですから」

「そう? 無理だけは本当にダメだから。きっとマージェリー修道女もそんなことは望まないでしょうからね」

「ええ、分かっています」


 孤児院の院長室に院長と話をする人物がいた。どうしてマージェリーのことを気に掛けているのかは、問題なのではなく、むしろ別方向が問題。

一体どういう当てがあるのか非常に気に掛かるところではある。

 院長室から出たその人物が独り言をもらす。


「これは…あの人達に相談してもいい話だと思う。何か対策を練らないと」


マージェリーを助けるべく動く人間がいる。その結果として、ステラ修道院が守られることになる。

ただ、それが予想外の人達のおかげであることを、マージェリーが知るのは随分後の事。

そしてきっと、別の側面もあって…それを知ってしまえば、頭を抱えることにもなるかもしれないが、仕方ないか、と諦めることになるかもしれない。

とにかく、現状マージェリー一人が犠牲になるようなことを誰も望んでいないという事実に、救いがあるように思えるのは楽観的過ぎるだろうか。

お読みいただきありがとうございます(*^^)


マージェリーさん、家族に丸投げして後は大丈夫って思ってたら、そうもいかなくなりました。

はてさて。

そして、孤児院院長と話をしてた人物とか、何を誰に相談するのか?とか、その辺りの答え合わせ的な回が準備できてない事に気付いて、今書いてるところです。

いつ、それを投稿するのか、そもそも出来るのか悩み中( ŏΔŏ ;)


関係ないですが、家族は問題なく帰宅できました。

代わりに台風接近してる間、毎日頭痛で悩まされてたので、私がグッタリしてました_ノ乙(、ン、)_


ブックマーク登録、評価、いいね、ありがとうございます(*˙˘˙*)ஐ


次回もがんばります( ´ ▽ ` )ノ

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