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 孤児院に到着すると、庭に出ていた子供達が見える。そしてジーンが私に気付いて真っ先に走ってくる。可愛い…。でも、ジーンだけを特別扱いするのも良くないから、後から来ている子供達と同じように頭を撫でるだけに留める。


「ちょっと用事があって孤児院の外にいたけど、ちゃんと戻って来たでしょ?」

「うん」


ジーンにそう声を掛けると、嬉しそうに笑って頷いていた。孤児院にもうずっと寝泊まりしているから、ジーンにとっては私が孤児院からいなくなることがとても大きな問題になってしまっている。

だから、どうしても孤児院から離れて修道院に行かなくちゃいけない用事がある場合はジーンが納得するまで孤児院から離れることを説明した。

側には年長の子供達が「お姉ちゃんとお兄ちゃんがずっとジーンと一緒にいるよ」と言って、絶対に一人にしないと伝えてくれてもいた。


「それで、私がいない間みんなと何をしてたの? 教えてくれる?」

「うん! あのね、あのね! ……」


 ジーンと話をしながら、他の子供達も並んで一緒に孤児院へと入る。中に入ると、デリックもいた。


「あら、デリックもいたの? もしかして私がいない間、手伝ってくれてたの?」

「マージェリー修道女様、お帰りなさい。見回りでこちらへ来た時に、外で遊んでるちび達を見かけたものだから少し話をしてたんだけど…ジーンと一緒にいないちび達の相手をしてただけで、手伝ってるわけじゃ…」

「え、それ手伝いって言うでしょ。もう…本当、デリックは孤児院を卒業したのに、この孤児院のお兄ちゃんよね。ふふ、ありがとう」

「いや…別に。お礼を言われるようなことじゃないし…」

「いいじゃないの、みんなが助かったんだもの。受け取っておいて。言葉だけだけど」

「はは! 相変わらずですね、マージェリー修道女様は」

「でしょ? ふふ」


 久しぶりに会話した気がする。以前はジーンがデリックを嫌っていたから、仕方ないのかもしれない。話を少しだけジーンから聞いたけど、お姉さんの結婚相手がデリックのような暗い色の髪だったことや、身長も同じくらいだったらしくて、どうしても警戒してしまっていたらしい。

ジーンのことを気遣う年長の女の子や男の子達に打ち解けるようになっていくと、彼らが慕うデリックへの警戒心も薄れていったみたい。だから、今はデリックが近付いてきても嫌な顔をしなくなった。でも、微妙な空気はあるんだけどね。どうしてなのかは分からないけど。


 デリックは暫くするとまた見回りに戻っていった。

ジーンが落ち着いてくると、徐々に子供達の間にあった緊張のようなものがなくなっていくのも感じられるようになった。

ジーンが一人で午睡出来るようになると、なんとか他の子供達と話をすることが出来るようになって、色々助かったなぁって思う。


「そう言えば、今日はみんなありがとう。それとジーンのことで色々大変でしょ? まだ落ち着かないけど、もう少し我慢してね。

それとね、みんながジーンのことを考えてくれてて助かってるよ。私もね、今のままじゃ絶対ダメって思ってたから、みんながジーンのためにいっぱい考えてくれて嬉しいし、助かってるの。

本当ありがとう。私ね、みんなのことすごーくすごーく自慢なの。もうね誇らしくて仕方ないのよ。

この孤児院の子供達みんな最高でしょ! って言って回りたくて仕方ないくらいにね」


 食堂に集まっていた子供達に感謝を伝えた。ただありがとうだけじゃ足りなくて、本音ダダ洩れ一歩手前の言葉でなんとか抑えたけど。本当ならもっとめちゃくちゃ褒めたかったけど、難しいお年頃に差し掛かってる子もいるから、そこまでは…。

 でもみんな本当にいい子達ばかりなのは事実だから。確かに所謂反抗期のような子もいる。だけど、ただ素直に気持ちを言えないだけで、優しい気持ちは失ってないのが分かるから、こちらの気持ちを押し付けないように気を付けながら、感謝をいつも伝えている。それと、どんな時も子供達一人一人が大事なんだということも伝えている。それだけで、自分に価値があるんだってことを信じられると思うから。

まぁ…面倒になると私の場合は「みんな大好き!」って叫んでるけどね。

だからなのか、ツンデレ属性の子もちょっといるんだけど、照れ臭そうにしながらお礼を言ってくれたりするのよ。本当可愛いわよね。私やっぱり子供に関わる仕事してたと思うんだけどなぁ。本当思い出せない。

前世の私は一体何をしていたのかしらね。ふぅ。


 ⁑ ⁑ ⁑ ⁑ ⁑


 孤児院での時間はいつも通り。そして、孤児院の院長様に相談という名の報告をする。

え? もちろん、修道院の院長様達から連絡のあった件ですよ、ええ。ついでに両親に相談という(てい)で丸投げしたことも付け加えたけど。


「マージェリー修道女、あなた本当に大丈夫なの? マクマホン侯爵家のことは私も一応知っているけれど…御嫡男のことは知らなかったわ。良くない噂が立つような方だなんて…」

「私も正直驚きました。マクマホン侯爵御嫡男の方については、私よりも年上の方なので、あまり知らなかったのですが、両親に手紙で今回のことを伝えたので、多分両親が対処してくれると思うのです。

母が…公爵家の出身ですから、そちらの伝手も使うでしょうし」

「まぁ! 随分心強いお話ね。それなら、安心だわ。あなたが孤児院からいなくなってしまったら、子供達もショックだけど、私達も困るのよ。

奉仕のことという意味ではなくて、私達もあなたが笑ってくれているから、子供達と同様に元気をもらっているのよ」

「院長様…嬉しいです」

「私達にすれば、あなたも子供達同様に娘のような存在なのよ」

「私にとっては皆様お姉様ですけどね!」


 なんてことを話ながら、きっと今回のことは大きく問題になることはないだろうと考えていた。

でもそうも簡単にはいかないものなのね、と呟きながら胃がキリキリする日が遠くないことをまだ私は知らない。

お読みいただきありがとうございます(*´꒳`*)


今回もまた投稿を予定した日に不在となるため、少し早めの投稿になりました。

雨の影響で、多くの地域の方々に影響が出てますが、皆さん大丈夫でしょうか… |ω・`)

来週の前半、台風の接近する関東に行く予定の家族が露骨に影響受けそうなんで、帰宅が遅れるかもしれないから一日分着替えを増やして準備してました。

何事もなく無事に帰宅するのを祈るだけですけども。


次回の投稿もがんばります( ´ ▽ ` )ノ

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