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30/55

+ 30 + *side:デリック*

本日は二話投稿しています。

二話目になるので、まだ+29+を読んでいない場合はそちらから先にどうぞ。

 彼女に会いたくて孤児院を訪ねていったのはいいけれど、目の前で俺に手を振って去って行くマージェリー修道女様がいた。その左手は小さな手を繋いでいる。

叶うなら彼女の右手を取って歩くのは自分でありたい、とつい思ってしまう。でも、彼女の右手は空いたまま。左手にはいつだって子供の手がある。


「…マージェリー修道女様」

「デリック残念だったね。ジーンが来てから、ずーっとマージェリー修道女様が付きっきりなんだ」

「アレン。…あの子の話を聞いたら、仕方ないとは思ったよ」


 少し黄昏てしまっていた俺に話しかけてきたのは、アレンだった。

ここにいた頃は年齢が近いこともあって、よくバカをした仲だ。あの頃は幼かったな、と思う。そんなアレンももう直ぐ孤児院を出ていく予定だと聞いている。


「そう? だったら、ジーンが落ち着くまで待つしかないかもね」

「そうだな。それにしても…ここまで話すことが出来ないと思わなかった」

「まぁ…デリックのこと知ってる皆はマージェリー修道女様のこと、異性として見ないからな。というか、あの人ってどちらかというと姉みたいな人という感覚でしかないしさ。女達は違って…憧れみたいな感じかな。

でもさ、ジーンの死んだっていう姉ちゃんがマージェリー修道女様にそっくりだったらしいんだよな。だから、離れようとしなくて大変なんだって。手伝うことすら難しくてさ」

「そんな酷いのか?」

「うん。一日目はマージェリー修道女様を見た瞬間、駆け寄ってそのまま抱き着いたな。で、もうずっと離れない」

「……そう」

「今、マージェリー修道女様は孤児院で寝泊まりしてるよ。ジーンが少しでも離れてしまうと食事も食べなくなってしまうからさ」

「そんな酷いのか……」


 ジーンという幼い子供の、ここへ来るまでの事情を聞いてしまえば同情しないほうがおかしいか、と思う。ここにいる子供達は多かれ少なかれ何かしら抱えているけど。それでも聖騎士として訓練を受けていた時に、他の孤児院出身の奴らと話をしていたら、もっと酷い状況の子供達もいたと聞いた。だから、マシだとは思う。思うけど…ジーンを同情しないでいるほうが難しかった。


「ジーンよりも年下の奴らも呆れるくらい。でも、ジーンの状況を考えたら仕方ないって思うよ。だけどなぁ…小さい奴らにしたら、自分達だってマージェリー修道女様を独り占めしたいの我慢してるところがあるみたいで、ジーンに不満が溜まってる」

「相変わらず子供達に人気だよな、あの人は」

「仕方ないよ。他の修道女様達はみんな若くないから。優しい人達ばかりだけど、マージェリー修道女様みたいに一緒に走り回ってくれるわけじゃないからさ」


 アレンの言葉に笑いながら、頷いておいた。初めて会った日のおいかけっこは、ターゲットにされるようにわざとあの人の前で目に付くように動いてから逃げ出した。どういう人なのかを確かめるために。

 ここにいる子供達にどういう接し方をするのかが気になった。たまにいるんだ。子供の扱い方が分からなくて、孤児院に来たけどすぐに別の場所へ移っていく修道女様。

だから、ちび達が嫌な思いをしないようにって、あの人がどういう人が確かめるために動いたんだけど。あの人はちび達のことをすごく考えて、楽しく遊べるように動いてくれてた。そして、あの時一番小さかったトビーが走って逃げている途中で躓いて倒れそうというタイミングで、迷うことなく手を伸ばして助けていた。自分がトビーの下敷きになるようにして。

 正直驚いてしまった。貴族令嬢だろうと見てすぐに分かるくらいには、綺麗な人だった。当然手もきれいだし、指先も全く荒れていなかった。いくら容姿が良くて綺麗だとしても、平民なら必ず水仕事は避けられない。だから、手荒れはある程度あるものだし、髪や肌も艶やかで汚れた事すらないだろうと思えるほどに、綺麗だった。…まぁ、今でもそうなんだけど。修道院入りしたなら、貴族として生活していた時のようには人に傅かれて生活なんて出来るわけないから、多少なり水仕事はすることになるのに、あの人の手はずっと綺麗なままだ。今はそれはいいか。

 とにかくトビーを助けるように修道服が汚れることも気にしないでトビーを助けたことにとても驚いた。話をしてみれば全く貴族らしくないし、自分達と同じ目線で話をしてくれる。それは小さな子供達に対して顕著だった。もうそんなのを目の当たりにしてしまったら、認めるしかなくなる。

後はもう子供達があの人を慕わない理由がなくて、皆が揃ってマージェリー修道女様の周りに集まるようになる。しかも、あの人は嬉しそうに笑って受け入れて、気付けば誰もが好きになっていた。正直言えば、女達が刺繍を教えてもらうことで一緒に過ごす時間が長いのが、悔しいって思ったかな。だって、その時間だけは俺は剣術の訓練の時間だから、絶対に一緒にいられないから。

…だから、隣に立てるように努力を始めたわけだど。全く靡いてくれないから、余計に振り向かせたくなって、色々したけど…結局告白することにしたんだったか。まぁ、あの頃も期待しないままだったけど。絶対自分に落ちてこい! っていう宣言が出来ればいいやっていう、そんな気持ちだけだったから。

少しだけ動揺したあの人が見られたから、満足したけど。


「ジーンのことだけど、アレンも助けてやってくれないか? 多分マージェリー修道女様に丸投げ状態だと、ずっとジーンが離れないと思う。ジーンはもっと男にも頼れるようにならないとダメだと思う」

「そうか。あああ、そうだな。あいつの姉ちゃんの結婚相手が最悪だったんだもんな。そうだよな。今のままだと大人の男が側に来るのも怖がりそうだな…」

「多分、マージェリー修道女様以外の修道女様も受け付けなくなりそうだなって思ってさ」


 遠くでジーンと二人で彼女が笑いながら花を摘んでいるのが見える。間違いないな。ジーンは俺を警戒してる。多分無意識なんだろうけど、彼女をあいつから奪っていく男として見てるんだろう。へぇ、あいつが小さくて助かった。もし、もっと年齢が彼女と近かったらそれほど時間もかからずライバルになるところだったろうな。

今は未だ姉の代わりに彼女を慕っているだけだろうけど。


「ジーンのことは女達にも助けてもらったほうがいいよな。ちょっとマージェリー修道女様にも相談するよ」

「そうしてやってくれ。でないとジーンが孤立するのが目に見える。絶対揉めるだろ。というか揉めないでいるほうがおかしい。アレンも大変だろうけどがんばれ」

「うん、まぁ…がんばるよ。ずっとデリックに頼ってばかりだったしさ、少しは俺もがんばらないとさ」

「充分がんばってたけど。まぁ、ほどほどにな。修道女様達ともちゃんと相談しろよ」

「分かってるって」

「じゃあ行くよ」

「え? マージェリー修道女様と話さなくていいのか?」

「ジーンがこっち見てるからきっと無理だな」

「そ…うだな。確かにこっち見てるな」


 アレンと話すこちらを警戒するみたいに時々視線を投げてくるジーンを見ないようにしているけど、それでも何か分かってるというようなジーンに苦笑が漏れる。

アレンも同じらしくて、苦笑していた。


「じゃ、アレンがんばれ。またな」

「うん、またな」


 孤児院から離れる間際、一度だけ振り返ればマージェリー修道女様がこちらを向いていた。会釈したら、小さく手を振ってくれた。それがただ嬉しくて、今日の残りの時間がんばれそうだ、と思った。

ただ以前のようには、近くにいられないことが寂しい。触れられないことが切ない。でも、聖騎士という彼女を守れる力を得られたことが嬉しい。だから、がんばろう。

お読みいただきありがとうございます(*^^)


デリックに小さなライバルみたいなお邪魔する存在が登場して、しっかり邪魔しております。

デリックがんばれー(棒読)

ジーンはもっとやれー(ニヤニヤ)

冗談は置いといて。

孤児院の子供達なかなか登場させることもなくきたので、今回はいつもより出てもらいました。

本来なら子供達一人一人と仲良くなるエピソード入れて、マージェリーさんが子供まみれになる感じを書くのがいいんだろうなーって思いながらスルーしてきてるので(話数増やしたくないだけ)子供達との関係性とか分かり辛いかも、と思いつつ。

少しくらいはアレンとデリックの会話から見えるといいな、という願望が込められた話になった気がします。

それはさておき。

デリックがマージェリーさんをどうやって落とすんだろう? と非常に頭を悩ませてるわけですが、マージェリーさんがチョロい人だといいなぁ…と思う今日この頃です。


ブックマーク登録、評価、いいね、ありがとうございます!( ´͈ ᗨ `͈ )◞♡⃛:.*


次回もがんばります( ・`ω・´)

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