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 デリックが旅立ち、もうすぐ三年になる。

バザーの準備は以前よりも早くに始まっている。なぜなら、年々バザーに来てくださる方が増える一方だから。

当然毎年、前年よりも売る物の数を増やして準備しているけど、微妙に足りないという状況が生まれてきている。

 一番人気があるのは、サシェ。とくに御令嬢や意中の相手がいる女子にとても人気。どうも以前から噂の「サシェの香りを移したハンカチを渡して、相手に気持ちを伝えると思いが通じる」というのが広がっているせいらしい。しかも、それで想いが叶ったと伝えてくださる御令嬢も現れてる。何が何だか…。

 ともかくサシェの人気は衰える様子がない。でも、数が圧倒的に足りないから、代わりのものを準備する必要が出てきたの。

そこで! デリックが孤児院から出ていく日に渡したミサンガを商品の一つに加えてみました!

 貴族令嬢が身に着けるには、ちょっと…な感じではあるんだけど、色を色々と取り揃えれば、男子もいけるよね! って感じにもなることに気付いたから。

クッキー以外でも活躍の場を作るべく、小さな子供達にも作り方を教えて、簡単に編めるミサンガも並べることにした。年齢が上がると器用さも増すから、少し複雑な編み方のミサンガも並べられるし、色々と目に楽しくなると思っただけなんだけどね。勿論、ミサンガの売りでもある『ミサンガが自然と切れるまでずっと身に着け続けると、願いが叶う』と言う謳い文句は前面に押し出さないけど、それでもにおわせる程度にはそれを伝えながら販売するといいかも、なんて考えている。

 でもね、サシェのことはポプリを準備する段階でどうしても増やせなくて仕方ないから、完全に数量限定にしてしまったけど、その代わりに刺繍された布小物を色々と増やすことにした。

なぜなら、孤児院を出て街で働き始めた孤児達が未だにバザーのために刺繍したものを持ってきてくれるから。

 もっと言えば、私が修道院に来る前に孤児院を巣立ったお母さんになっている人達までバザーのことを聞いて、助けてくれるようになっている。

本当にどれだけありがたいことか…。院長様も先輩修道女達もとても感謝している。


 ⁑ ⁑ ⁑ ⁑ ⁑


 家族宛に手紙を出し、刺繍のためのものを大量に届けてもらったの。両親からは相変わらず『家族のためのものを送ってちょうだい』と言われるけど、たくさんは送ることが出来ないから、ほどほどに…それこそ一人三枚くらいの刺繍したハンカチを送ってる。まぁそれで満足する人達じゃないんだけど。

 そうそう、長男のお兄様が結婚したのよ! だから、家族に送るハンカチは枚数が増えてます。お義姉様は一見嫋やかな方だけど、実はとってもお転婆だった御令嬢だとかで、お兄様と意気投合したらしい。お兄様より二歳年上なのだけど、婚約も解消されるようなことがあったりと色々と苦労もされたことがあったとか。修道院に入ることも考えてらしたということだったのだけど、お兄様がベタ惚れしたものだから、猛アタックの末お義姉様が折れた格好になった…のかしら? ともかく仲の良い二人だから、ハンカチの刺繍も二人のモチーフは同じものにしていて、色違いだったり、二人の瞳の色を必ず入れてみたり、というような工夫をさせてもらって送ってるの。

 下の二人のお兄様達は、そんなお兄様とお義姉様の様子に色々困ってるらしいけど、お兄様達だって結婚すれば大丈夫なのよ! って言っておいたから…大丈夫よね?

 それで刺繍用の生地だけど、あれから随分色んなものをお父様の伝手の商会で開発してもらったの。クロスステッチ用の生地はもちろんだけど、刺繍枠もかなり小さなサイズを色々作ってもらって、小作品をそのまま刺繍枠にはめたまま飾れるようにしたりとか、本当たくさんのありがたい状況があって、私も修道院での奉仕の一つ「刺繍」を日々楽しんでる。そして、孤児院での奉仕もなんとか無理せず出来るようになってきたこともあって、刺繍の奉仕も以前よりも進め易くなっている。

おかげで、今年のバザーには間に合わせることが出来たの。かなり大作になったけど、修道院の中庭から望める礼拝堂の建物とその手前に咲き誇る薔薇。それをスケッチしていて、思わずこのまま写真に残せたらいいのにって思ってしまったの。そう思ってしまったら刺繍にするべく、クロスステッチ用のデザインを紙に描き起こしていた。

まだ写真がこの世界にはないから、絵で残すしか手段がないし、私は画家じゃないから結局刺繍かしらってなるじゃない? だから必然ではあったのだけれど。

 私が絵として再現することは出来るけど、きっと私の再現したものはただの絵でしかないの。ただそっくりに描けるだけ。そこにそれ以上に何か感じられるものは何一つない。

絵を描くこと、マージェリーは好きだったんだと思う。でも、好きではあっても、その才能を伸ばしたいと思う程の感情はなかったのが分かる。そしてそれは私も同じ。

だって、刺繍の方が楽しいって思ってるもの。だから、絵ではなく刺繍という形で表現したくなるんだと思う。そして、その作品を仕上げたわけ。

 作品を修道院の院長様に作品を見ていただくことになったのよ。最初は副院長様に御声掛けさせてもらったんだけど…。


「ミアー副院長様、今お時間ございますか?」

「あら、マージェリー修道女。大丈夫ですよ」

「ありがとうございます。刺繍の奉仕の件なんですけど、一つ出来上がったので見ていただく時間をいただけたら、と思いまして」

「そうなんですか! 礼拝堂をモチーフにした物でしたよね。楽しみにしていました。そうですね…今はあまり時間が取れませんから、後で時間を知らせますね」

「分かりました。それでは、それまでの間に奉仕の部屋を片付けておきます。実は完成してすぐにこちらへ伺ったものですから…」

「ほほ、相変わらずですね。ええ、では部屋を整えておいてくださいね」

「はい。失礼いたします」


 なんて会話をして、本当にすぐのことだった。だって、まだ一時間も経ってないもの。…リグリー院長様までご一緒だなんて思わないじゃないですかー! ミアー副院長様、もうワンクッションくださいよー! なんて内心の叫びは顔に出すことはなかったけど、ちょっとドキドキしたのは本当だった。

お読みいただきありがとうございます(*´꒳`*)


本当なら明日に投稿を考えていたんですが、明日は一日慌ただしく過ごすことになりそうなので、今日投稿することにしました。

なので、いつもとまるで違う時間の投稿になりました…。

まぁ、今日も午前中ずっと出かけてたので、午後もバタバタでしたけど(^^;)


ブックマーク登録、いいね、ありがとうございます(*˙˘˙*)ஐ


次回もがんばります( ´ ▽ ` )ノ

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